第三十六話……対話!
「どうぞ、こちらです」
私達は確信犯ランクの化物に案内され、奥へと進んだ。
この人がサルディアさんなのだろうか。疑問に思っても、それをここで聞いたら、辻褄が合わないこともあるから、迂闊に聞けない。
まぁ、すぐに分かることだけど。
しばらく歩くと、化物が部屋の前で立ち止まり、扉をノックした。
「次官、お連れしました」
「入れ」
どうやら、確信犯の化物はサルディアさんじゃなかったらしい。
一方、扉の隙間から見えたサルディアさんの化物ランクは、『対話』ランクだった。私から見れば、こっちの方がイケメンだ。
とりあえずは安心した。
「サルディアさんは、『対話』ね! 『対話』!」
「分かった。良かったよ」
私とたすくが小声で確認し合うと、正面にある机の椅子に座ったサルディアさんは、そのことも気にせず、口を開いた。
「さて、早速で悪いが、話を聞かせてもらおうかな。このあと、会議があるのでね。寒くはないと思うが、そこの震えているラプスは少し我慢してほしい。さあ、誰が話してくれるのかな?」
「その前にちょっといいか? 案内してくれたところ悪いが、彼を退出させてくれないか? 大事な話だから」
「……。断る。彼は私の右腕で非常に優秀だ。この場にいてくれた方が、今後の話が早く進む」
「じゃあ、俺も何も話さない。サルディアさんも優秀なんだろ? そのぐらいのことは、やってくれよ」
「貴様、次官に向かって失礼だぞ! 勇者を騙った貴様に、優しく手を差し伸べた次官に向かって!」
「……。思ってもいないことを、よく怒って言えるなぁ。演技が上手いヤツが優秀だと評価されるのか? ここの評価システムはどうなってるんだ?」
「なっ……! 次官、やはりこの者達は即刻処刑すべきです!」
「お前の反対を押し切って、ここに呼んだサルディアさんの意志と時間を無駄にするつもりかよ。
なぁ、サルディアさん、本当にコイツは優秀なのか? そう見せているだけで、アンタは騙されてるんじゃないのか?
どこかで綻びが見えているかもしれないよな。城内、首都内の総点検を提案するよ」
「き、貴様ぁぁ!」
「そこまでだ! 分かった……。お前達と話すことは何もない。
とりあえず、今日は城内に宿泊し、その後は私の指示を待て。勝手に城外に出ることは禁止。破ればその場で処刑だ。
『ロマリ』、コイツらを例の部屋に入れたいが、人数も戦力も考慮する必要がある。適当な兵士を見繕ってきてくれ」
「……」
「はっ!」
化物ロマリは、返事の後、部屋を出て行った。
その直後、サルディアさんが急に立ち上がり、足早に私達の方に向かってきた。
「殿下、今の内に手短に状況をご説明ください!」
「ロマリは、サルディアさんを陥れるために、他派閥から送り込まれたスパイだよ。ビルさんを始め、サルディアさんの派閥がどんどん削られていったのも、アイツが主犯だ。
今、迷いもせずここを出て行っただろ? サルディアさんがどうなろうとかまわない、むしろ死んでくれた方が良いと思ってるってことだ。加えて、アイツは優秀なんかじゃないって証左でもあるな。
俺達はセントラルを変えに行く。でも、その前にサウズも変えたい。サルディアさんなら、それができるとビルさんが言っていた。
それはそうだ。アンタは、身分を隠したサウズ地方サウズ国の第三王子で、王位継承権に最も近いと評判だったんだからな」
「なっ……!」
「え⁉️ そうだったの⁉️」
「言っておくが、ビルさんに聞いたわけじゃないぞ。俺のスキルだ。それ以外にも色々できる。
俺の力を貸すから、一緒にサウズを変えようぜ! サルディアさん!」
「う……し……しかし……ま、まだ……それは……」
「決断、行動するまでは、まだ時間がある。その例の部屋っていうのは、俺達だけなのか? なら、連絡手段を確立しておくか。このプラチナ鉱石のことも話したいし……」
「なっ……! な、な、なぜそのことを早くおっしゃらないのですか!」
「いや、だってアイツがいたし……」
「はぁぁぁ……。そのプラチナ鉱石があれば、継承権争いなどゴミみたいなもの。どうにでもなりますよ……」
「セレナもビルさんも言ってたけど、そんなにすごいのか……」
「あ、アイツが戻ってきたみたいだよ!」
ラピスの喚起に、慌てて机の前に戻り、姿勢を正すサルディアさん。微妙に化物だから、尚更コミカルで面白い。
間もなく、バンッと扉が開き、化物ロマリと、思っていたよりも多くの化物兵士が、部屋の中に雪崩れ込んできた。
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