第三十四話……理想と現実!
「何もしていないなんて、とんでもなかったね。布石はすでに打ってあったんだ。すごく柔軟な布石が」
「なんだか楽しみになってきたな。その人に会うのが」
「わしは、たすくやビル殿を知らなかったら、いとも簡単に人間に失望して、暴れていたかもしれんのぅ」
「私もー。さっきの人達も絶対殺しちゃってるよ」
「そうですよね。同じ人間でさえ、殺したくなる連中ですからね……。これが、理想と現実のギャップの洗礼と思うしかありません。
しかし、たすく様という希望の星は存在するので、そこに向き合っていくことはできます。
また、自分が地に落ちたわけでもないので、同じく絶望することもありません」
「でも結局は、ああいうヤツらは死刑という形で社会から排除されるんだよね。だから、社会全体の将来を考える時は、あまり気にしなくていいと思う。
ここで重要なのは、そういう人達を確実に処刑台に送ることであって、それができないと歪んだ社会を考慮しなくちゃいけなくなる。
もちろん、それが現実なんだけど、それを受け入れるしかないと言って何もしないのと、受け入れた上で、できることをやっていくことは、似ているようで実は別。
例えるなら、まさに勇者管理組合と、サルディアさんビルさんの政策。当然後者であるべき。これを批判される謂れはどこにもないんだけど、大抵は思考停止して、そんなこと無理だって強く言われるんだよね。あるいは、ポジショントークとかで。
地味に絶望するのは、そういう人達に対してなんじゃないかなって、今になって思う。
『絶望』が大袈裟なら、『しんどい』かな。そこまで『レベル』を落とさないとコミュニケーションできないからね。セレナの話が改めて沁みるよ」
「……。みかって過激派だよな」
「そうだよ。悪意を持った犯罪者は、その年齢、精神状態に依らず全員死刑にすべきだし、悪意がなくとも、他人の人生を台無しにした人も死刑。複数犯でも全員同じ罪。隠蔽に関わっても死刑。
重罪を犯したことを本当に反省してるなら、その場で自殺を促して証明させる。自殺しなかったら、自殺するまでその場で拷問。
私がたすくの力を持っていたら、そういう社会を実現させたいぐらい。
いくら説得されても、この考えを変える気はない。だから、最初にたすくの考えを確認した。
正直、たすくのやってることは手緩いよ。でも、ホッとしている面もある。邪悪な人達に対して、抑えられないほどの怒りを露わにして、痛みを伴う制圧をしてるからね。
あれで、淡々と『酷い奴らだなぁ。やれやれ』とか言いながら、アイツらや支部のヤツらに何の苦痛も与えず捕まえてたら、私はここにいない。そんなの人間じゃないよ。
一方で、たすくが目指す社会を見てみたいとも思ってる。私がたすくの暴走を止めようとしているのは、そこをブレずに前に進んでほしいから。
ただ、たすくがこの世界で人を助ければ助けるほど、処刑者が増えていく事実は確実に存在する。そういう意味では、私が望む社会に近づくことも事実。だから、私はここにいる……のかも。いや、いる理由の一つかな。
たすくがそれを嫌うのなら、私を追放していいよ」
「そんなことするわけないだろ。俺はさ、自分の思想を他人に押し付ける気は全くないんだよ。だから、これまでも選択肢や方法だけを提示してきた。まぁ、さっき話題にした壮行会みたいなこともあるけど……。
でも、俺が人を助けるのは、困っている人がいるからであって、困っていなかったら、どうすれば喜んでもらえるかを次に考える。それだけなんだよ。
俺自身が目指すものっていうのは、あまりなくて、『じゃあ、お前の中身は空っぽだな』って言われてもおかしくないけど、おせっかいと同じく、『だから何? 別にいいだろ。それが俺だよ』と今では開き直って言い返せる。
例えば、世界が平和であることに越したことはないけど、『世界は平和であるべき! 戦争絶対反対!』とは、少なくとも真っ先には思わないんだよな。
それは、何度も出てるように身近な人のことではないし、俺は言行不一致の偽善者だから、将来戦争になると言われても、今から何かしようとは思わない。戦争になったら、多くの命が失われるけど、その時になってから人を助ければいい。あえて戦地に行って、身近なことにしようとも思わない。
このどれか一つでも真面目に考えてたら、テロ発生国や内戦国で、とっくの昔に俺は死んでたよ。安全な場所から何を言っても無駄なんだし。そもそも、どんな所から何を言っても無駄なんだけどな。宗教問題と資源の奪い合いと武器輸出を何とかしない限り、自己満足でしかないんだ。
結局、究極のゴミ拾いと同じってことだ。いや、ゴミ拾いの方がまだマシか。
まぁ、何が言いたいかというと、みんなには俺の身近であってほしいってことかな。もちろん、強制じゃない。男らしく、強く言ってほしいなら、そう言うけど。
それに、誰かに助けられる喜びも知ることができた。自分の問題が解決して嬉しいってだけじゃないんだよな。『ああ、世の中にはこういう人が身近にいるんだ』って嬉しくなるんだ。
助け合ったら、そこが平和の始まりになるんだから、それを広げていけばいい。それでいいんだよ」
「ありがとう。また、たすくの考えを知れた。今までも結構話してきたつもりだけど、まだ話してないことあるんだね。
何となく分かった気がする。たすくといる心地良さが。正義を振りかざしつつも、ニュートラルに近いからなんだね。しかも、その正義は身近な人のためだけにある。大上段から降ってくるものじゃない。
世界を良くしたいのも、元は私達の身に降りかかった火の粉から来てるからね」
「人間の思考とは複雑じゃのぅ。わしも見習おうぞ」
「とりあえず、私には強く言ってみてもらえますか?」
「私もー!」
「分かったよ。セレナ、ずっと俺の側にいろ。お前に自由はない。これは無期限不平等契約であり命令だ。いいな!」
「はっ!」
「パワハラァァッ!」
「ラピス、もう離さない。死ぬまで、いや、死んでも俺と一緒だ。分かったな!」
「うん!」
「いや、セクハラァァッ!」
「みか、お前は……自由だ!」
「いや、そこは一緒にプロポーズしておけよ!」
「これが『ネタ』じゃな?」
こうなったら、ちょっとやそっとのプロポーズでは許さない。
私は微妙にモヤモヤしながら、中央政府があるサウズ城までの歩みを進めていた。
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