第三十三話……最低のクズども!
プレアの服は、ラピスに着せている子ども用のようなシンプルなデザインではなく、銀髪ロング清楚美女に似合う白いワンピース服を選んだ。ラピスとは違い、プレアは人間に変身しても尻尾が残ったままなので、少し膨らんだスカートにしている。
プレアが喋らなければ、ベストマッチと言えるセレクトだろう。
たすくが彼女に『綺麗だよ』と言って、またセクハラしていたから、私がまた怒った。
「みかに聞いておきたいことがあったんだけど、ビルさんは化物レベル十ぐらいってことだったけど、とてもそうは思えなかったんだよな。高すぎるっていう意味で。
多分、みんなもそう感じてると思うんだけど、どういう見た目だったんだ?」
「まぁ、それは私も同意見だよ。見た目で言うと、顔の肌が爛れ、両目を縫われて血涙を常に流してた。一言で表すなら、痛々しいゾンビみたいな感じ」
「そのレベルで十なのか……」
「人の形をかなり保ってたからね。多分、この国の悪い所を知っていて、変えないといけないとは思ってるものの、職務に従事することを言い訳に、そこに目を瞑り、何もしていない屍のようだっていう罪の意識があったから、あんな感じに見えたんだと思う。罪の意識があったから、人の形だったっていう意味ね。
でも、今見たら村長さんと同じレベル五になってると思うよ」
「妻子がいる身ですからね。左遷より酷い事態を避けるのは、仕方がないことだと思います。特に、国に奉仕したいと考える人にとっては、それ以外の職に就こうとは思わないでしょうし」
「似たようなよくある話として、家を買ったら転勤の辞令が出るんだよな。家と家族を人質に取られてるようなもので、俺の会社でもあったよ。先輩が断れなくて、泣く泣く海外に単身赴任してたな。
壮行会は開いたけど、あんまり楽しくなさそうだった」
「その壮行会は完全におせっかいでしょ」
「ああ。間違いなくそれで全員から嫌われたと思う。ネタみたいな感じで開けば、まだ良かったんだけど、結構真面目にやっちゃったからなぁ……」
「うーん、ネタはネタで、いじりという名のいじめになりかねないからなぁ……。せめて、仲の良い人達で『励ます会』を開く程度でしょ」
「ネタとは何じゃ?」
「食べ物らしいよ」
「話のネタ、お笑いネタ、色々ありますね」
「ネタキャラっていうのもあるぞ。ほら、アイツみたいに」
前方を見ると、南門左にいた化物が、化物五体を連れて、こちらに向かって来ていた。なぜか悠然と。
「へっへっへ、やっぱり俺は運が良いな。絶対に会えると思ってたぜ」
「奇遇だな。俺も運が良いと思ってたところだよ。心配事を早い内に一つ解消できるしな」
「たすく、他の五人も化物レベル六十ぐらい」
「なんじゃ、アイツは? 生理的に気持ち悪いと感じる人間もいるんじゃのぅ」
「プレアさん、そういうことは思っていても言ってはいけないんですよ」
「あ? 口の品はないが、身体の品は良さそうな女が一人増えてるじゃねぇか」
「人の容姿を見るなり気持ち悪いと言ってしまってすまぬな、お主。
しかし、言動も表情の変化も本当に気持ち悪いのぅ。内面から滲み出ているのが、面白いほど分かってしまう。そこは直せると思うぞ。
もし、そのままモンスターと対峙したら、気持ち悪すぎて真っ先に殺されてしまい、お主のためにならぬ」
「プレアさん、そういうことはたすく様の専売特許ですから、言わなくてもいいんですよ」
「よし。あとは俺に任せろ。
おい、お前! 俺は多数の応援が必要だと言ったはずだよな? それしか集められなかったんなら、もう諦めろよ。あるいは、日を改めろ!」
「日だけじゃなくて、おじさん全部改めないと痛い目に遭っちゃうよ!」
「私がソイツの立場だったら、ここは地獄かと思うよ……。頭がおかしくなりそうで」
「何だお前ら? 頭おかしいのか? くだらねぇ他人の心配とかしやがって。自分さえ良けりゃそれでいいだろうが! だから、俺は好き勝手やるぜぇ。お前らの身体をな! ぐへへへ」
『ぐへへ』ってホントに言うんだ……。でも、妙に合ってるなぁ。きっと、化物に見えていなくてもそう思っただろう。
いつの間にか、私達を殺すことよりも、私達の身体を愉しむことが目的になっているようだし、心底気持ち悪い。
真っ昼間で人の往来も普通にあるのに、どうかしていると誰もが思うだろう。
「お前は本当に自分のことしか考えていないんだな。もしかして、余罪があるんじゃないか?」
「はぁ? 何バカなこと言ってるんだよ。余罪なんてあるわけねぇだろうが! 俺は一回も捕まったことがねぇから、ここにいるんだよ! だったら『罪』じゃねぇだろ?」
「おい、そんなことはどうでもいいから、早く始めようぜ。どうせコイツらは偽勇者パーティーなんだし、話すだけ時間の無駄だろ」
「マジでこんな機会ないからなぁ。コソコソ隠れながら、物色しなくていいなんて最高だな! セントラルに行ったらパラダイスだろ!」
「俺、そこの小さい子な! 殺してからも絶対愉しむんだからな!」
「じゃあ、俺はブレイな! 殺す前に交換しろよ? あー、もう我慢できねー」
「いやいや、いつも言ってるだろ? 過程も楽しまないと損ってな。全てをしゃぶり尽くすのが通なんだよ。だから、こんな頭のおかしいヤツらだって相手してるんだ。
この前の女だって、そうやって愉しんだろ? 強気に反抗、泣き喚いてからの屈服、そして絶望が良いんだよ。それを一人で二度味わえるんだからな」
「おいおい、手足を含めたら四回分増えるだろ? いや、二本切り落としたら大抵静かになるから、あんまり増えないか。いやー、勘違い勘違い。ダッハッハッ!」
「…………。最低のクズだよ、お前ら!」
「たすく!」
「分かってる!」
たすくは、右手を前に突き出し、縦に握り潰すような素振りを見せた。
すると、化物六体が直立のまま一ヶ所に集められ、強制おしくらまんじゅうのように、互いの体を強く押し合った。
「ぐえぇぇぇぇっ!」
サザエ村でも似たようなことがあったが、それ以上にプレス機で圧力をかけられている感じだ。
体を潰される痛みに伴う叫びが聞こえるかと思いきや、これもサザエ村と同様に、化物達の口が塞がれ、呻き声しか聞こえない。
「みか、なんでコイツらが化物レベル六十なんだよ……。説明してくれ……」
「私の話を冷静に聞けるなら説明してあげる。おせっかいスキルで、もう分かってると思うけど」
「それは大丈夫だ。こうやって拳を握っても、アイツらのスペースには、まだ余裕があるだろ? アイツらに出会った時点で、俺もプログラムで制約を付けたんだよ。
説明については、なんて言うか……みかの口から聞きたいのかな。やっぱり違うんだよ。心地良さと納得感が」
「うーん……制約がなかったら、握り潰してるってことだからなぁ……。まぁ、いいか。
さっき、その内の一人が言ってたことがヒントかな。行為と感情は振り切れてるけど、犯罪で捕まることを恐れているからだと思う。自分達のやっていることが悪いことだと認識してるんだよ。その方が興奮するからね。でも、罪の意識はほとんどない。
そう考えると、第三王女が最高レベルだったことも納得が行く。法に縛られない権力を持っているから、その認識も罪の意識も皆無。
つまり、一般人はこの辺りのレベルが限度なんだろうね。でもこの際、誤解を招くから、もっと分かりやすい表現にした方が良いかもね」
「ありがとう、納得できたよ。そうだな、表現は考えよう。とりあえず、コイツらを牢屋に入れたい」
「私は化物にしか見えなかったんだけど、コイツらって全員サウズの兵士なんでしょ? 余程人手不足なのかな?」
「人事が機能していない可能性はありますね。まぁ、それはどこの国も同じかもしれませんが。
それと、一般的に兵士は城の牢屋にしか入れることができないので、正門で例の合言葉を言えなくなってしまいます。
彼らを透明化させても、邪魔なことに変わりはないので、どこか別の場所に一時的に勾留した方が良いかと」
「うーん……。ビルさんに良い場所がないか聞いてみるか。思いの外、すぐに連絡をすることになって、ちょっと恥ずかしいけど」
「たすくに羞恥心なんてあったんだ」
「そりゃあ、あるよ。向こうから歩いて来た人を避けようとしたら、相手も同じ方にずれて、それを避けようとしてまた同じになって、それを五回繰り返して、結局ぶつかって怒られたことがあったな。あの時は恥ずかしかった」
「いや、普通ぶつかる前にどちらか立ち止まるでしょ。相手もおかしいよ」
「まぁそうなんだけど、相手は自撮りで動画撮影してたみたいでさ、回避を二回繰り返した時点で、動画のネタになったら相手も喜ぶだろうと思って、俺の方がわざと続けたんだよ。そしたら勘違いで、むしろ迷惑がられてたってオチ。
『機材が壊れたらどうしてくれるんだ!』って怒られた。『その時は弁償します』って返したら、『何言ってんだ馬鹿野郎!」って、さらに怒られた」
「えぇ……。そんなおせっかいあるんだ……。やっぱり、たすくの方がおかしいよ」
「『動画』が何なのかは分かりませんが、たすく様は、反射神経も運動神経も抜群ですね。普通できませんよ。相手に即座に合わせて同じ方向に避けるなんて」
「言われてみたら確かにすごいけど、セレナは無理にたすくを褒めなくていいんだよ。万能感を覚えさせないようにしないと。
『俺は異常なんだ。サイコパスなんだ』って自覚が大事なんだよ」
「勝手にサイコパス認定されてるんだけど……。あ、ビルさんに連絡しよう。ビルさん、ごめん。さっきの今で申し訳ないんだけど、今話せる?」
「はい、どうぞ」
どうやら、たすくの声もビルさんの声も化物達に届かないぐらいの音量に抑えられているようだ。
「ビルさんの相棒が仲間を連れて来たんだけど、相棒含めてソイツら全員極悪人だったから、牢屋に入れたくてさ。でも、城の牢屋に今連れて行くのは、さっき聞いたことがスムーズに実現できなくなるから、別の場所に置いておきたいんだけど、良い場所知らないかなと思って連絡した次第」
「なるほど。でしたら、ここまで再度ご足労いただけませんか? あるいは、遠視のスキルを使いながら、彼らだけをこちらに送致するなどができれば、それに越したことはありません。
実は、こんなこともあろうかと、反乱兵も勾留できる簡易牢をいくつか首都内に建設したのです。南門はほぼそこに接しているので、移動コストはゼロです。
これは自慢ではありませんが、かつて私と例の彼が実現させた政策の一つです」
「おお、流石! じゃあ、今送る。透明化させてるから、急に目の前に現れると思うけど、そのタイミングは教えるから驚くことはないと思う」
「ふふっ、それを聞いただけでも驚きですよ。私もここから離れられるよう、門を一旦閉めるので、少々お待ちください」
間もなく、門の閉まる音が聞こえてきたが、その間にたすくは化物達を透明化させ、向こうに送ったようだ。
「今のところ、容疑は他王家暗殺計画による国家転覆罪にしておいて。余罪は、強姦殺人多数ってことで」
「承知しました。余罪については、これまでも疑われていましたが、いつの間にか揉み消されていたように思います。
その協力者兼権力者が間違いなく城内にいるはずですが、残念ながら我々は特定できていません。いえ、正確には最高権力者は分かっているのですが、実行犯が分からないといったところです」
「ソイツから聞き出せるかもしれないけど、根本を変えないとな。よし、そこも何とかするよ」
「ありがとうございます!」
「ごめん、もう一つ聞いていいかな。ソイツらみたいな奴らがたくさんいるなら、集められたスキル持ちも、このサウズ首都でさらに酷い目に遭ってる可能性が高いと思うんだけど、ビルさんはどう思う?」
「そこは、ご心配には及びません。先程申し上げた冒険者育成計画を名目に、彼が保護し、勇者管理組合への引き渡しまでの時間を稼いでいますから。『ヒアリング』とは、それを含んでいるのです。
スキル所持者の考えや戦い方を、サウズ地方の冒険者に学習してもらうという、それらしい目的で。
ただ、中には本当に厄介なスキル所持者もいるようなので、それは即時引き渡しているそうです」
「ありがとう、安心した! 二人とも本当にすごいよ!」
「いえ、私は……。いえ……ありがとうございます。嬉しいです……本当に……」
それからビルさんは、たすくがタイミングを合わせて姿を現した連中に手錠をはめて、簡易牢に常駐していた兵と共に、牢屋に向かったようだ。
「面白かった!」「つまらん……」
「続きが気になる!」「次回作に期待!」
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