第二十九話……洞窟Aのモンスター⁉️
「たすくって囲碁も齧ってるの? どんだけ手広いのよ」
「そう言うみかこそ、格言を知ってるなんて詳しいじゃないか」
「私は昔、近所に天才囲碁少年がいたって聞いて、へぇーって思ったから、少し勉強してみようかなって思っただけなんだけど」
「奇遇だなぁ。俺も似たようなものなんだけど、あの現場がその近所だとすると、ソイツは俺の高校の後輩なんだよ。と言っても、話したことはなかったんだが」
「え⁉️ すごい偶然じゃん! 今、その人どうしてるの?」
「……。残念ながら、暴走車に轢かれて亡くなった。しかも、その妹まで……」
「え……」
「俺は次の日のニュースで知ったんだけど、しばらく間を置いてから、線香をあげに遺族を訪問したら、ご両親は全然平気な顔しててさ。
断られたよ。その必要はないって。流石の俺も驚いたな。普通、子どもが二人も突然いなくなったら、正気じゃいられないはずなのに。
『ああ、いいんですいいんです。二人とも遠い所にいるだけなので。遺影も処分しました。逆に不謹慎になっちゃいますからね』って明るく言われたんだよな。もしかしたら、もう正気じゃなかったのかもしれないけど」
「何それ……」
「お二人のように異世界転生したのでは? それを両親も知っているとか」
「……。流石、セレナだな。常識に囚われない発想だよ。でも、そんなことあるのかな……。いや……天才ならそういう手段も確立できるのかもな。神様と交渉したのかもしれないし」
「私はともかく、たすくならできるんじゃない?」
「どうかな……。みかの心を救った時点で、俺は向こうに未練がなくなったからなぁ。モチベーションも湧かないと言うか……。それを神様に見透かされて、許可されないんじゃないかな」
「助けることに関して、珍しく後ろ向きだね。向こうには誰かの助けを待っている人なんて、いっぱいいるのに。
でも、これまでのたすくの発言からすれば当然か。自分の身近な人を優先して助けるってそういうことだもんね。
じゃあ、私が向こうと連絡を取りたいって言えばいいのかな?」
「……。本当にそう思ってるのなら」
「……。確かに、今の私はそんなこと思ってない……。切り分けたいのかな……。これまでの自分と今の自分を。性格とかじゃなくて、ここから再出発するみたいに……」
「悪いことじゃない。人との関係をリセットする人達もいる。迷惑や心配をかけなければいい。元々薄い関係なら、そういうことも起こりづらいだろうし、起こっても一過性のものだ」
「うん……って、いつの間にか私のカウンセリングになってるんだけど……。そして、洞窟門も素通り……。抜けたら森があるんだね。動物とかいそうな感じ。なんか遠くで草木が揺れてるし」
「門は単純に、その動物や洞窟から出てきたモンスターを街中に入れないためのものだな。首都内だから検問は不要なんだろう」
「首都内に洞窟が存在するのは、セントラルとサウズ地方だけですね。残りは少し外れた所にあるみたいです」
「あ、もうドラゴンが出てきてるみたいだよ! 声が聞こえる! 遠すぎて何言ってるかは分からないけど」
「よし、急ごう!」
そして、私達は足早に洞窟へ向かった。
そこは、『洞窟A』と呼ばれていて、最も危険なモンスターが存在する洞窟らしいが、モンスターが洞窟の外に出てくることは極めて稀なため、今回の騒ぎになっているとのことだ。ちなみに、アルファベット順に『洞窟G』まであるらしい。
「あれ……? ドラゴンなんていないじゃん!」
「いや、いるだろ。かなりでかいぞ。あれが生息してるってことは、洞窟Aって広いんだな」
「もしかして、ラピスちゃんみたいに、みかさんには人間に見えるのでは? 今は人だかりで姿が見えませんが」
「『やめるのじゃ! やめるのじゃ!』って言ってるね」
そこで私達は、冒険者の人だかりを抜けて、一番前に踊り出た。
「うわ、裸の銀髪美女が佇んでる……。口調から、おばあちゃんだと思ったけど、見た目はめっちゃ若いね。二十歳前後かなぁ。
銀髪とは言ったけど、よく見るとなんか光り輝いてる気がする。それに、尻尾もあるね。
とりあえず、たすく!」
「ああ! 待てお前達! このドラゴンに攻撃するな! この子に戦う意志がないことは明らかだろ!」
銀髪美女は、たすくの言葉に驚きの表情を見せた。
「な、なんなのじゃ、お主達は⁉️」
「私達はあなたを助けにきたんだよ。『やめるのじゃ』ってことは、何かを伝えたいんでしょ」
「わしの言葉が分かるのか⁉️」
「そうだよ」
「お、おお……。い、いやしかし、だからと言って、状況は変わらぬ。話が分かるお主達を説得しても意味はないのだからな。モンスターと一緒にいるのは少し気になるが……」
「どういうこと? それに、ラピスのことも分かるんだ……。ここだとゆっくり話せないから、とりあえず洞窟に戻ろうか」
「必要ない! わしはもう洞窟には戻らない! これからは命尽きるまで、人間の心を動かすだけじゃ!」
「でも、今までだって動かせてないんだから、少なくとも方法を変えないとダメでしょ。
それに、時間をいくらかけても、強い人がやって来る確率がどんどん高くなっていくだけだし、それってつまり、無駄死にに近づくだけだよ?」
「余計なお世話じゃ! ならば、わしはここで死ぬ! 死ぬことで一矢報いるのじゃ!」
「そういう人、たまにいるけどさぁ、焼身自殺とかハンガーストライキとか。自殺しても大勢は揺るがないんだよね。死んじゃったら、その結果も分からないし。
だから、何かを訴えるために自殺しても、バカにされるだけだよ。自殺するなら、一時の苦痛から自分が逃げる時だけ。これ一択。まぁ、それもバカにされると言えばバカにされるんだけど。
仮にそうやって死んだ人が現世を見て思考できるとしたら、後悔してると思うよ。『あれ? 無駄死にじゃね?』って。まさに、後悔先に立たずだよ。
思い込みなんだよね。自分の命が世の中を変える一石になるなんていうのは。世の中からすれば、『たかが一人の命』なんだよ。
ましてや、あなたは人間から見れば、会話できないモンスター。『たかがモンスター一匹の命』はそれにも値しない。
むしろ、人々からは喜ばれるんだよ。『ありがとうございます。凶暴なモンスターを退治してくれて』って。仮に凶暴じゃなくても、そう伝わるんだよね。
あなたは人間の凶悪さ、邪悪さを分かっていない。もちろん、全員がそうじゃない。でも、そういう人達は埋もれることも多い。
実際、この中でも『これ、戦う必要ある?』って思ってる人もいると思う。でも命令だから、あなたを討伐しようとしている。人間に好意的で善良で、人間とモンスターが手を取り合って世の中を良くして、みんなで笑顔になろうと考えているドラゴンを一匹だろうが何匹だろうが討伐しても、自分に一切の責任はないからね」
「…………。『責任』とは……?」
「じゃあ、教えてあげるから、洞窟に戻ろうか。人間を知る上で絶対に必要な単語だから」
「ドラゴンさん、少し暴れてくれると、剣を合わせながら私達も自然に洞窟に入れて、今後も動きやすくなるのですが」
「『わ、分かった。やってみるとしよう』って」
「よし。セレナと彼女の殺陣に合わせて、俺達も中に入ろう」
そして、間もなく殺陣が始まった。
「あとは俺達に任せろ!」
たすくが兵と冒険者の群衆に呼びかけた後、私達は洞窟の中に向かった。
「面白かった!」「つまらん……」
「続きが気になる!」「次回作に期待!」
「おせっかいすぎ!」「言うほどおせっかいか?」
と思った方は、以下の「☆☆☆☆☆」から、応援をお願いします!
星一つであっても、皆さんの反応が大変励みになります。
星五つであれば、なおのこと!
ブックマークもよろしくお願いします!
最後に、本話をお読みいただき、ありがとうございました!
Xアカウント @tachizawalude




