第二十八話……職務怠慢!
「おい、待て! その二人は第三王女殿下がおっしゃっていた女達だろ!」
門番の二体の化物が剣を構えながら、左側の化物が喋った。
「ん? ちょっと待ってください。第三王女殿下が、ですか? 都民からの通報や勇者管理組合からの通達ではなく? 行きの時は特にそんなことをおっしゃらなかったはずですが……」
「命からがら逃げてきた殿下を、確実に殺そうと追いかけてくるかもしれないから何とかしてほしいと、光栄にも直接ご命令を受けたんだ。
くくく、こんなチャンスは滅多にねぇ! 死ねぇ!」
左の門番がたすくに向かって剣を振り下ろした。しかし、セレナが素早く割って入って、剣で受け止めてくれた。
「おい、待てよ! アイツが生きてたってことか⁉️ だとしたら、良かった……。お付きの二人はどうなったか分かるか?」
「何を他人事のように言ってやがる! お前達が無惨にも殺したんだろう! 命乞いを無視して! モンスターの餌にして、自分達だけ助かろうとして!」
「そんなことするはずないだろ! そう聞いたのなら、それは嘘だ!」
「殿下が嘘をおっしゃるはずないだろう!」
「そんな先入観は捨てろ! そもそも、ちゃんとした兵士なら、まず事実かどうかを確認するのが、仕事の鉄則だろ!
『お前はこれこれこういう犯人だな?』と最初に聞けよ!
そしたら、『違います。なぜなら、こうだからです』と答えるから!
横の兵士を見てみろよ! 本来、二人同時に斬りかかるべきところを、お前の勇み足を見てるだけだろ? 確認が済んでないからだよ!」
「うるせえ! おい、『ビル』! 何してやがる! 殿下のご命令を無視する気か!」
「いや……彼女の言う通りだ。確認が先だ」
「てめぇ! 職務怠慢で報告するからな!」
「職務怠慢はお前だよ。冷静に考えてもみろよ。例えば、俺達がお前に剣を向けて、今にも斬りかかりそうなら、まだ分かる。あるいは、武器を隠し持っている素振りを見せるとかな。やらないとやられるからだ。でも、そうじゃなかった。しかも、子どもを連れてそんなことをするわけもない。
そして、仮に戦ったとしても、勇者複数人を余裕で制圧できる勇者管理組合の彼女がそれを止めることは容易に想像できる。一兵士がどうにかできるレベルではない。それなら、次に多数の応援を呼ぶべき。
ふむ……。どうやらマニュアル化はされているようだな。
なら、それらを一切無視して、勝手な行動をとっているお前こそが職務怠慢、いや、国民や同僚をわざと危険に晒す背任行為と捉えられても仕方ないんじゃないか?」
「次から次へと余計なことをぺらぺらと……。だったら、お望み通り呼んできてやるよ。お前達を一方的に殺すための兵隊をな!」
「いや、俺達はここで待つだけの時間が無駄だから、中に入って自由に歩かせてもらう。そうなると、門番としての役割は果たせず、街にも混乱を招くことになるから、お前の評価にはならない。
俺達が混乱を招くんじゃなくて、その兵隊の存在が混乱を招くという意味だ。
そう考えると、そのマニュアルもそうだが、そもそも門の体制がおかしいな。一体どうなってるんだ?」
「知らねぇよ!」
怒る化物を横目に、次にたすくはビルさんの方を見た。
「前にそのことを指摘したことがあります。しかし、体制もマニュアルも変わることはありませんでした。もちろん、私がマニュアルを作成しても破棄されます。
これは私の想像でしかありませんが、中央政府は今まで問題が起きなかったからそれでいいという考えなのではないでしょうか。そんな保証はどこにもないのに……。
あるいは、何か起きても我々は捨て駒、代わりはいくらでもいる。だから、どうなってもいいと……」
「ビルさんは、城勤務から左遷されてここに来たのか……。妻子もいるのに……」
「どうしてそれを……。いずれにしても、私の力不足だっただけです。しかし、悔やんでいても仕方がないので、与えられた仕事を誠心誠意、果たすだけです」
「例えば、俺みたいに本当に力不足だったのなら納得もできるけど、ビルさんの場合はそうじゃない。
あなたは、城内政治の考慮や根回しをすべきだったことを自分の力不足と言ってるようだが、俺にはそうは思えない。それをいくらやっても厄介払いをされていたように思えるからだ。それこそ、勇者のように。
どうやら、サウズ中央政府も腐っているようだな。だとすると、どうやって殴り込めばいいか……」
「おい! くだらねぇ話をしてるんじゃねぇよ! しかも、中央政府に楯突こうとしてやがるじゃねぇか。これは何を置いても報告しなけりゃいけねぇなあ!」
化物はわざとらしく言い放ってから、街の中に消えて行った。
「アイツ、相棒に許可なく持ち場を離れたな……。仕事とは何たるかをとことん分かっていない……」
「でも、厄介なことになるんじゃない? 早くここから離れた方が良いよ」
「いえ、それはあまり気にしなくてもいいかと。と言うのも、現在、サウズ洞窟区域で問題が起こっていまして、そこに人員も注目も集まっているためです。
彼はそのことを知らない……と言うか、自分以外に興味がないので、仕事に関係する事柄であっても、情報を一切集めず、このように実務に影響しているわけです」
「その問題とは? 私が通った時は、そのような状況ではなかったようですが」
「はい、その時は。しかし、それは偶々です。その前日も問題は起こっていましたが、わざわざサウズ首都外部に漏らす必要はないと中央政府が閣議決定し、箝口令が敷かれました。
あなたならもうお分かりではないですか?」
ビルさんがたすくを見て言った。
箝口令だから、当然口には出せない。そこで、先程の出来事からたすくのスキルを察し、思考を読ませたのだろう。優秀な人だ。
「トリプルAランクのシルバードラゴンが洞窟から出てきた。その対応に追われている、か」
「やはり、とんでもないスキルですね……。ただ、我々に被害は一切ないようです。出てきて、しばらく吠えて、攻撃を何度か受けたら、また洞窟に引っ込む、というのをここ最近繰り返しているとのことです」
「え……。それをポジティブに考えるとするなら、ドラゴンが何かを伝えたがってるとか?」
「普通に考えても、それが自然だろうな」
「しかし、上からの命令は『対話』や『捕獲』ではなく、『討伐』なので、兵も冒険者もそれに従っているようです。それでも全く倒せないので、力の差は歴然ですが」
「でも、もしそうだとしたら、かわいそうだよ! 何とかしてあげないと!」
「よし。その洞窟に向かおう! 『大場より急場』だ」
「では、お急ぎください。時間的には、そろそろ出てくる頃だと思います」
「ありがとう、助かるよ。本当は俺達の名前を告げたいところだけど、それを聞いたらビルさんは職務上困るだろうから、このまま行くよ。
俺達が無理矢理突破したことにしてかまわないから。複数人を一人で抑えるのは不可能だとか言えばいいよ」
「お気遣い感謝します。おそらく、かつての第二王女殿下ではないのでしょうね。しかしながら、セントラルの未来を、より期待させてくれる。皆様の無事を心から願っています」
「サウズも変えてみせるさ!」
そして、私達はビルさんと別れて、サウズ首都内に入り、その中の南西部に位置する『洞窟門』に向かった。
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