第二十五話……長かった一日!
「みかは寂しくないのか? 家族と会えなくて」
セレナの部屋の床で寝る直前、たすくが私に聞いてきた。
「思い出さないようにしてたのに……ホント、おせっかいだよね……」
「……。それは嘘だな。もう思い出してたクセに」
「……。まぁ、それは世界が灰色になる時から考えてたことだよ。一人娘の私が死んだら、パパもママも泣くんだろうな。立ち直れるのかな。私は二人を悲しませたことを、地獄で、文字通り誤用じゃなく永遠に後悔して苦しむべきだ、って。
でも、いざ死ぬと、こっちの現実に一生懸命になって、そんなことは頭の片隅に追いやられた。
つまり、それに関しては、癒しの時間なんて必要なかったんだよ。自分が薄情な人間だと再認識した。
何なんだろうね、私って。親不孝なんてレベルじゃないよ」
「みからしい答えだよ。でも、俺はそんなことを聞いてるんじゃない。『みかが』寂しく思っているかを聞いたんだよ」
「…………。もう分かってるクセに……」
「俺はさ……いや、おせっかいの俺だからこそ、自分の感情を声に出すことが大事だと思ってるんだよ。自分が言ったこと、やったことが相手に伝わらないなんて、山のようにあったから。
少なくとも、自分の感情を伝えれば、セレナの言葉じゃないけど、『何だよー』って言ってくれる人がいるから。
まぁ、それでもビジネスパーソンの間では通用しなくなったんだけど……。特に、営業の場合は、コミュニケーション能力と結果が求められるから。
でも、プライベートでは十分メリットになる。自分にとってもメリットなんだ。
感情の整理ができるから、前に進みやすい。もちろん、あの時の俺のように感情が分からなくなることもあるけど、俺はそのことも声に出した。
それは、助ける方からも、助けになるから。俺が助けることなんて、今更だろ?」
「うん……。寂しい……んだと思う。でも、二度と会えないから、そんな感情を抱いても無駄にしかならなくて……私はここで生きているから、むしろ、パパとママの方が死んだようにも思えてきちゃって……。それって、悲しいってことなのかな……。
でも、何なんだろう。改めて考えてみると、心にポッカリ穴が空いた気持ちなんだよ……。虚しいってことなのかな……。分からないよ……」
「それは、『やるせなさ』だな。感情をぶつける先がなく、どうしようもできずに、晴々としない気持ち」
「そうかも……。たすくは、やるせない気持ちになったことあるの?」
「俺は……まさに、みかと会った時がそうだったな。あの時の感情は、やるせなさを包含していたかもしれないが」
この期に及んでも、たすくの過去を掘り起こそうとした自分に、ある意味で尊敬の念を抱いた。『もうやめよう、こんなことは』と思っても遠回しに聞いてしまうのは、私の悪い癖だ。
「ありがとう、たすく。もう寝ようか。ごめんね、セレナ、ラピス」
「いえ、興味深いお話でした」
「うん。正しい言い方かどうか分からないけど、面白かった!」
「それじゃあ、おやすみ」
「あ、たすくには言い忘れてたけど、狼にはならないでよ!」
「私はかまいませんが」
「たすくお兄ちゃん、狼に変身できるの?」
「ふっふっふっ、俺は狼だけじゃなく、悪魔にも変身できるんだぞ」
「ああ、色欲魔でしょ? 下半身をガチガチにして全裸になろうとする変態悪魔」
「それって変態なんですかね? よく考えてみると男性なら普通では?」
「私もたすくお兄ちゃんの裸、見てみたかった。すごく綺麗だし」
「言われてみれば、今の俺は女だった……」
「見ず知らずの人の前で、いきなり裸になろうとするんだから、男女問わず、十分変態でしょ。水に濡れていたとは言え」
「いや、それ重要なことだから! 濡れてなかったら裸にならないから! あと、ガチガチじゃなくて、ギチギチな!」
「今にも張り裂けそうなほどギチギチになってたでしょ! それで勢い余って、ビュビュッと出しちゃったでしょ!」
「そうだけど……って、そうじゃないから! 出したのは『力』な! もう寝るぞ!」
「はーい」
ラピスは虎の姿に戻って寝るそうだ。
明日から本格的な旅が始まる。緊張で眠れるかどうか分からなかったが、今日だけで色々なことがありすぎて、道中での休憩がなかったかのように、私達はすぐに眠りについた。
考えてみると、異世界転生初日なんだよなぁ。この先、どんなことが待ち受けているのか、私は期待と不安で胸がいっぱいだった。
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