第二十二話……悪のセントラル情報!
「へー、そんなことがあったんだ……。でも、良かったね! たすくお兄ちゃんが元に戻って」
「結果オーライだね」
「今後は気を付けるよ。万が一、俺が暴走したら、セレナとラピスが物理的に止めてくれ。止めようとしてくれるだけでいい。それだけで、俺は正気に戻れる」
「承知しました」
「うん! 分かった!」
「ホントに戻れるのかなぁ……」
「約束する。もし約束を破ったら、何でも言うことを聞くよ」
「『何でも』ねぇ……。そもそも、たすくが約束を破った時点で、私達はこの世にいないでしょ」
「いや、そこまでの暴走は想定してないんだけど……。そういう意味では、人間に対しては、『力』の制約を設けられれば良いな。あとで色々と試してみよう」
「そう言えば、自動的に相手の力を反射しているような感じでしたが、あれはどのように?」
セレナの問いに、たすくはキーボードをカタカタするようなジェスチャーで、説明を始めた。
「『条件』を設定して、それに従った『動き』をするように念じたら、そうなった。俺達の世界の言葉で言えば、『プログラム』だな。
語源から発展して、予め書いたことが自動的に実行されるものの意だ」
「へー、たすくって営業だったのにプログラミングできるんだ? 何の営業だったかも聞いてないけど」
「大病院向けの医療機器の営業だけど、プログラミングと営業は関係ないな。プログラミングは、小学生の時からやってて、いくつかウェブサイトを立ち上げたり、アプリケーションを公開したりしてた」
「え、すごいじゃん! でも、たすくの性格を考えると、確かにそうだよね。医者とかになるよりも割と手っ取り早く、社会に貢献できることだし。
ってことは、エンタメ創作系に手を出していても不思議じゃないか……」
「小説や漫画も一から書いてはみたものの、未熟だったから、ほとんど誰も読んでくれなかったな。ウェブサイトとアプリケーションの出来には自信あったけど、内容がニッチすぎて、ユーザー数は思ったより伸びなかった。
そんなこともあって、結局は身近な人にだけ注力しようってことにした。それに、創作系は時間がいくらあっても足りないからな。自動生成してくれるシステムがあるとは言え」
「世の中、そんなに上手くは行かないか……。若さを売りにすれば行けたような気はするけど」
「お二人の会話を理解したいのですが、専門用語が多すぎてよく分かりません……」
「私もー」
「ああ、ごめん。そうだよな……。なぜ、俺はそんなことに気が付かなかったんだ……」
「『切れた』みたいだね。その状態で、さっきのこと説明できる?」
「それはできる。その前に、セレナとラピスに今の会話を説明しておくよ」
そう言って、広場にあった木製のベンチにみんなで座ってから、たすくが説明を始めた。
「…………ってことで、さっきの会話はこんなところにして、じゃあ、支援金の話に移ろうか……とその前に、元第二王女の名前を知っておきたいんだが、セレナは知ってるか?」
「はい、もちろんです。『マリッサ・センティネル』殿下です」
「王女の名前は、『マリなんとか』で統一化されてるのかな?
まぁ、それはさておき、マリッサ一行は、城から金貨を大量に持ち出し、ここまでの道のりにある村や町に、セントラルからの支援金と称して、一斉給付をしていたらしい」
「それは、横領……いや、王族でなくなったとしたら、窃盗なのでは……?」
「でも、あの姫はそこには言及してなかったよね? 気付いてなかっただけ?」
「かもしれないが、マリッサが村長に言ったのは、『これは実質、セントラルがこれまで各地方から過剰に徴収した分の還付金ですが、そう呼ぶと角が立つので、格差是正のための支援金と呼んでください』とのことだった。
そこでセレナに聞きたいのは、セントラルと各地方の関係だ。どんな名目の税金をセントラルは徴収してるんだ?」
「まず、税金を徴収しているわけではない、というのがセントラルの言い分です。
各地方は、独立した国であって、各中央政府が存在します。
セントラルは、第一から第五セントラル領国までの五つの国からなる共和国とでも言いましょうか。複数の国家から成るとは言え、帝国ではありません。皇帝は存在せず、最高評議会が頂点ですから。
セントラルからノウズ地方を除いた各地方に対しては、多額の『勇者管理費及び勇者育成支援金』を送金するよう要求、と言うか『依頼』しています。あくまで、お願いしている立場ですね。
ただ、やはり力関係があるので、ほとんど税金だろという声も少なくありません。その結果、セントラルとその他で格差が広がったのは事実です」
「各地方からすれば、貴重な戦力と労働力を奪われているのに、金を払わないといけないのは、二重に損しているはずだが、それ以上にスキル持ちを厄介者だと思ってるってことだよな」
「その通りです。さらに、国際法である勇者管理法によって縛られているので、仮に現状に不満があったとしても変更できません。
セントラルからすれば、『俺達がスキル所持者を一手に引き受けているのだから、金を貰うのは当然の権利』と言うのは自然のことで、『もう俺達が連行してやるよ。ありがたく思え。だからもっと金を寄越せ』とエスカレートしても不思議ではありません」
「でも、セレナが言ったように、それを根拠とする法律がなければ、金も要求できないんじゃないか? 流石に、国際法の改正を隠して施行することはできないだろ?」
「それもおっしゃる通りです。考えられるのは、『手始めに、サウズとセントラルの二国間だけで、試験的に導入してみよう』となったのかもしれません。であれば、何とか秘密裏にコトを進められます。
サウズ地方は、各地方の中でも、セントラルに従順とされていますから」
「何か歴史的な背景があるのか?」
「はい。これは、私がセントラルに行ってから知ったことですが、かつてサウズはセントラル内第一セントラル領国の植民地だったことがあるらしいのです。
と言っても、第五を除く各領国はそれぞれ植民地を持っていたらしく、セントラル成立時にそれらは解放されましたが、未だにその影響を強く残しているのが、サウズということらしいです。
各地方の人々は、そのことを決して話したがらないため、私も知りませんでした。と言うより、知っている人はもういないのではないでしょうか。
それでも、差別や虐殺等があったとは聞いていませんが……」
「でも、植民地を解放するメリットって何なの? それが当たり前の時代なら、解放する必要ないよね? 解放運動が起きて、それが成功したのなら、みんな誇らしげに話すから、それはないだろうし」
「うーん、支配コストがバカにならないか、その支配に注力していると、他国から攻められる恐れがあるってことぐらいしか思い付かないな。
あるいは、この世界特有の……『洞窟』の存在か。セントラルで洞窟にかけるコストと利益を考慮して、各地方から手を引いた可能性があるかな。
ただ、いずれにしても、人々が語らない理由にはならないか……。まぁ、その内、分かるだろう。
とりあえず、その話はこれくらいにして、マリッサに対する俺の考えなんだが、やっぱり彼女はセントラルを良い方向に変えようとしていたんじゃないか?
そのアプローチや手段はさておき、いや、関係あるかもしれないけど、それで現状変更を許さない周囲から煙たがられ、謀略と暗殺の対象になった。
禁忌については分からないが、勇者になるしか残された道はないと諭されるも、その道が閉ざされ、騙され裏切られたことに絶望して入水した、とか」
「勇者管理組合での第一セントラル領国王女に対する評判については、第一王女は『頭脳明晰の冷徹なバラ』、第二王女は『金色の面倒なバラ』、第三王女は『才能溢れる鋭いバラ』、第四王女は『無垢な毒バラ』、第五王女は『約束されたバラ』と言われていました。
つまり、それを聞いた人が持つ王女殿下方のイメージは、『まぁ、ロクでもないな』となるのが普通です」
「ちょっと贔屓目かもしれないけど、やっぱり第二王女だけ雰囲気違うよね。特筆すべき長所がなかった点も含めて。あ、でももしかしたら、さっき村長さんと話した時の『眩しい』金色の意味はあるかな。
第五王女は、多分まだ幼いから、それこそあんまり『棘』がない呼び方なんだろうけど」
「面白いなと思ったのは、『マリーゴールド』っていう菊の花があるんだけど、マリッサの名前と『金色の』が関連してるんだよな。実際のマリーゴールドは、『聖母マリアの黄金の花』と呼ばれていて、黄色とオレンジ色なんだけどさ。
その花言葉の一つは、『勇者』。ギリシャ神話のアポロンにちなんで、いくつかの花言葉があって、ネガティブな花言葉もあるんだけど、原産国のメキシコでは、お盆みたいな日の『死者の日』に贈る花とされている。
自分で話していて気付いたが、他の花言葉も含め、全部マリッサの境遇に関連していて怖いぐらいだ。
姉妹だから全員金髪で『金色』だろうけど、その点では他の姉妹には被ってないと思う。誰がその呼び名を考えたんだろうな」
「分かりません。ただ、その人が付けたかどうかは分かりませんが、名前を付けるのが上手いスキル所持者もいるみたいです」
「だとしたら、私の本質スキルに近いかもね。でも、他の王女の呼び名は別に上手いってわけじゃないから、違うような気はするし、私達の世界から引用しているなら、やっぱり違うと思う。ピンポイントで異世界人か神様が第二王女だけ名付けた場合以外は。
あと、禁忌のことなんだけど、たすくと私が……じゃなくて……マリッサとこの使用人が愛し合ってたんじゃない? それがバレて、城の幹部達の間で大事になった。じゃないと心中しないでしょ。使用人って、別に王女一人の家来でもないわけだし」
「なるほど、それは十分考えられる。マリアンが詳細を言わなかったのも頷けるか。同性愛かつ身分違いの愛が禁忌とまで言えるのかは謎だが、その場合は何らかの背景があるに違いない……。
おっと、あまり話していると遅くなるから、セレナの家に行こうか」
「はい。こちらです」
「そう言えば、こんなにかわいい女の子二人が側にいるのに、たすくからは性欲が全く感じられないんだけど、もしかして同性愛者なの?」
「それ、よく言われてきたんだけど、その発想になるのは、やっぱり女子特有だよな。
もちろん違う。ガチガチになる性欲もある。
なんて言えば良いんだろうな。異性を意識すると、助けられるものも助けられなくなる場合があるから、できるだけ意識しないようにしている、のかな。特に緊急時は。
さらに、今の体になることで、女性に対する異性の認識が薄れてきたのかもしれないとは思ってる。
今なら、平気でセレナの背後からおっぱいを鷲掴みにして、『良いモノをお持ちですなぁ? ムフフ』と言えそうだ」
「ふふふっ、私は望むところですが」
「私も揉んでいいよ!」
「でも、セクハラなんだよなぁ……。しかも、セリフが完全におじさんだし。セクハラは同性でも成り立つからね」
「それを言うなら、みかの質問もセクハラだろ!」
「そうだよ。それがどうかした?」
「開き直るな!」
「私が問題にしてるのは、無意識にセクハラをすることなんだよ。私は意識して言ってるからいいの。
それに、踏み込まないといけないことをそのままにしていたら、いつまで経っても信頼関係を築けないし。
たすくのは完全に余計な一言だからね」
「う……。確かに、ウケを狙って、言わなくていいことを付け加えてしまった……」
「やっぱり政治家か! 失言のデパートかい!」
「申し訳ありません! 私も実は愛想笑いでした! たすく様は完全に滑ってました!」
「え、たすくお兄ちゃん、なんか面白いこと言ってたの⁉️」
「こりゃあ、手厳しいなぁ……」
「村長のネタをパクるな!」
「あれって、ネタだったんですか⁉️」
「ネタって何? 食べ物?」
「ラピス、微妙に当たってる」
私達は笑いながら、セレナの家に向かった。
ちなみに、私達が話している間に、たすくが心の声を理解できるようになっていたことから、私がいる所でたすくがセクハラをしても、おせっかいスキルが発動することが分かった。
このことは、たすくには黙っていることにしよう。セクハラを助長してしまうから。
まぁ、そのことを聞かれたらすぐにバレるだろうけど。
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