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異世界<おせっかい>人情ラプソディ~いや、『おせっかいスキル』で無双って何⁉️~  作者: 立沢るうど


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第二十話……囚人のジレンマ!

「村長、お願いがあるんだが、コイツらの骨折した手足を真っ直ぐ固定した上で、回復魔法を常時かけられる仕組みを構築したい。

 しかし、コイツらが回復した結果、更正もせずに、魔法を使われて脱獄されては元も子もない。

 普段は犯罪者をどうやって勾留してるんだ?」


 村の少し外れの建物にその牢屋はあり、私達がそこに着くなり、たすくは村長に質問した。

 口調もいつものたすくに戻っているようだ。


 もう一つ気付いたこと、と言うか、分かったことがある。

 たすくの『力』を使い続けている限り、途中で効果が切れることがないと判明した。明らかに、発動してから時間が経ち過ぎているからだ。


「…………」

「えーと、聞こえなかったかな? もう一度言おうか?」


「い、いえ……。実を言うと、私が村長になってから勾留をしたことは一度もありません……。この村は良い村ですから……」

「犯罪が起こらなかった……わけではないな。軽犯罪でもすぐに処刑していたか」

「た、たすく様! お待ちください! そんなはずは……。私は子どもの頃から、『悪いことをしたら、村外れの牢屋に入れられるんだよ』と両親から教わってきました!」


 ここにセレナの母親がいればそれも確認できたのだが、残念ながら、あとで家に行く約束をし、あの場で別れて、ここに来ている。


「残念ながら、両親の嘘だな。みかはどう見えた?」

「うん……。村の人は、子ども以外、全員同じような化物に見えた。もちろん、セレナの母親も……。コイツらほどではないけど……」

「う……。村長! どういうことですか!」

「すまない、セレナ……。成人後は皆に伝えることなのだが、お前は昔から勇者を目指し、セントラルに行くとずっと言っていたから、その必要はないと判断したのだ。

 これはつまり、犯罪者にコストをかけるだけ無駄という村民の総意なのだ」


「未成年者に伝えない理由は?」

「それは、残酷な大人の都合を、未来を夢見る子どもに伝えたくないからです」

「まさに、大人の勝手な都合だね。子どもは大人に裏切られたと思うだけなのに。

 知るべきことを知らなかったら、取り返しの付かないことになってもおかしくないんだよ? 勇者がまさにそれでしょ! 子どもにプレゼントを配るサンタクロースの比じゃないでしょ!」

「……」


「村長、そういう法律でもあるのか?」

「…………」

「何とか言いなさいよ!」

「……。軽犯罪者を各自治体の判断で勝手に処刑していい法律など、私は知りません。一体、どのような根拠でこんなことを……」


「……。なるほどな。『他の村でもやってるから』か」

「っ……!」

「はぁ⁉️ そんな理由なの⁉️」

「これに関しては、良心のカケラもないですね……」


「まぁ、気持ちは分かる。『ゲーム理論』における『囚人のジレンマ』だよ」

「……」

「そうだけどさぁ……」

「何ですか、それは?」


「簡単に言えば、お互いに協力した方が良い場面でも、協力しない者が利益を得る状況が存在すると、自分の利益のみを考えて協力しなくなることだ。これは、現実でも多く当てはめられる。

 今回の場合、全自治体がコストをかけて犯罪者を勾留し、冷静な判断の下で刑を執行した方が、社会的にも道徳的にも健全だが、コストをかけた分、村の自治や発展に少なからず影響がある。

 つまり、他の自治体に遅れを取ってしまうことになる。だから、コストをかけない方法が採用される。

 この場合、もう一つ問題がある。そのコストをかけない方法が処刑であると結論付けたことだ。

 とは言え、それより良い方法があるわけではない。しかし、ここで言いたいのは、コストをどれだけ削減できるかの究極が、その選択であって、一切妥協していないところが問題だと思う」

「……。おっしゃる通りです。しかし、我々はもう引き返せない。途中で止めてしまっては、死んでいった者達にも示しがつきません」

「そんなの建前でしょ! 子どもに伝えないのだってそう!」

「私は、本音と建前を使ってこそ、『大人』だと言われたことがあります。果たして、そうでしょうか? 私は納得できませんでした。

 それは、言い訳という名の詭弁ですよ。それなら、子どものままでいい。そう思ったことがあります」


「実際にそれを言うと、『子どもの我儘だ』と言われるんだろうな。俺も二人と同じ気持ちだよ。

 俺には思考停止の方が、かっこ悪く見える。それは、現状を変更したくない大人の都合、『大人の我儘』なんだよ。

 『そんなことは誰でも言える。言うは易し、行うは難しだ』とも言われるだろう。『大人の経験』からな。

 『でも、不可能じゃないんだろ?』。そういう気持ちが大事なんじゃないかな。

 体は大人、知識も思慮も大人、でも心は少年でありたいね。それに憧れる大人だって、いっぱいいるんだから、誰だってそうなれるはずだ。誰しもが子どもを経験しているんだから」

「…………。あなた達を見ていると、本当に眩しい……。

 セレナ、正直に言う。私はあの時、お前がこの村を旅立った時、ホッとしたんだ。怖かったんだよ。真実を告げて、お前を悲しませてしまうことが、お前に激怒されることが、お前に失望されることが。

 そして、お前に殺されてもおかしくないと覚悟を決めていたのに、それを言い出せず、勇者になるからというどうでもいい理由を付けて、結局何もしなかった。

 眩しい光が遠く離れて、やっと目を開けられると思った。目の前も足元も地獄の沼なのに、それに気付かず……いや、素晴らしい村なんだと自己暗示をかけ、もがきもせずに沈んで行くのを、ただ時が過ぎるのを待っていた。

 もう我々は死んでいるんだよ。ただ心臓と体が動いているだけだ。生きているのは、子ども達だけ。だが、それでいいんだ。それが我々の罪だ。それを一生背負って行けばいい」


 私には、セレナに気持ちを吐露した村長の顔と姿が、少しだけ変化して、また戻ったように見えた。

 やっぱり、『可能性』はあるんだ。


「村長さん、それは違うよ。人間はね、心肺停止の状態から、蘇生することもできるんだよ。今、あなたはそれを体験できた。そうじゃなかったら、自分の正直な気持ちなんて話さないでしょ?

 私の経験からも言うよ。自分は死んでいるようなものだと思う気持ちは分かる。でも、そう思い込んでいるに過ぎないんだよね。ふとしたキッカケで、『生き返る』ことができるんだよ。今みたいに、私達みたいに。

 私達が眩しいんでしょ? だったら、死んだフリして閉じている、その両目を開けてよ!

 もうとっくに朝なんだよ⁉️ 目を覚ます時間でしょ!

 重い腰を上げられないなら、そのままでもいいけど、私達を前に二度寝しちゃダメだよ! 本当に、二度と目を覚ませなくなっちゃうよ!」

「う……うぅ……。しかし……」

「まだ怖いですか? 今の私なら、目を閉じている方が怖いです。目の前で何が起こるか分からないからです。

 それに、眩しかったら目を開けられないと思いますか? そしたら、この世界の生物は、みんな目を閉じたままですよね。

 眩しさは慣れるんですよ。自分が活動を開始するからです。

 逆に暗闇にも慣れるのが人間です。でも、それは『死』に向かうためではありません。目を開けて、手を伸ばし、死なないように前に進むためです。

 私が今ここで村長に剣を向け、目を開けなさいと言うのは簡単です。しかしそれでは、みかさんの言う通り、またすぐに眠ってしまう。自分で目を開けて、活動する意志を自分自身に示さなければ、意味はありません。

 大人であれば示してください。お手本を見せてください。失敗したら、笑って誤魔化してもいいですから。面白いことを言えば、きっと子どもだって、『何だよ〜』と言って笑ってくれますから。

 それが、尊敬できる大人でしょう! 立派な責任の果たし方でしょう! 違いますか⁉️」


 これまで、村長は目線をずっと下に向けていたが、セレナの言葉にハッとしたように、顔を上げた。


「セレナ……。そう……だな……。昔のことを思い出したよ……。

 その辺の木の枝を使って、火を起こす方法を子ども達に教えた時、実際にやってみせたら、中々火が付かなくてな。

 皆が飽き始めて、『もういいや、行こうぜ』と言われる前に何とかしなくてはと思い、密かに魔法を使って火を着けたら、『それ、魔法ですよね? ズルですよね?』とセレナに指摘されたな……。

 それに対し、私が『ズルではない。こういう時に機転を利かせることこそが、サバイバルの本質なんだ。一方で、柔軟な発想は、それまでの知識と経験が多ければ多いほど、思い付きやすい。組み合わせが肝心とも言える。そして、自分の常識を疑うことも大事だぞ。ズルズルと鼻水を垂らしながら、ズルとばかり言っていたら、ズルズルと常識の沼にハマってしまうからな、ガハハハ!』と返したら、ややウケだったことが印象に残っているな……」


 村長の話の途中から、彼は徐々に人間の姿を取り戻して行き、完全とまでは行かないものの、私の震えはほとんどなくなる程度にまで回復した。

 一方、セレナを見ると、目の端に涙を浮かべながら、にっこりと微笑んでいた。


「私も思い出しましたが、それは違います。ややウケではなく、完全に滑っていましたから……」

「こりゃあ、手厳しいなぁ……」


 村長も軽く笑った。


「でも……私の心には、ちゃんと刻まれましたよ。その教えと、どういう大人が子どもに好かれるのかが……」

「それは何よりだな……本当に……セレナは村の誇りだからな……!

 すまなかった……! 本当にすまなかった……! セレナにも……皆にも謝りたい……!」


 村長はセレナの言葉に堪えきれず、涙を流していた。

 膝から崩れ落ち、土下座に近い形で謝罪する村長に、私達は妙に安心感を覚えた。

「面白かった!」「つまらん……」

「続きが気になる!」「次回作に期待!」

「おせっかいすぎ!」「言うほどおせっかいか?」


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最後に、本話をお読みいただき、ありがとうございました!


Xアカウント @tachizawalude

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