第二話……おせっかいパーティー結成!
「あのさぁ、これだけは最初の内に聞いておきたいんだけど……」
「何?」
「さっき私が言った『邪悪な人達』、その人達を助けようと思うかどうか。
当然、私は助けてほしくない。つまり、その人達を助けたら、私が助からない。
そこで矛盾と言うか、二律背反になるよね?」
「それはもちろん考えたことがある。例えば罰を受けさせることが、その邪悪な人の助けになる。改心して、社会で誠実に生きていけるという意味で」
「全く反省しなかったり、死んだ方が良いレベルの、法律をかいくぐったりする極悪人は?」
「その場合は閻魔様に裁いてもらうように、自死を促すしかないかな。それこそ、法律をかいくぐって」
「とても冗談に言ってるように思えないんだけど……。でも、そうしたらあなたが極悪人になるよね?」
「俺は別にどう思われてもいいんだよ」
「…………」
「何、その微妙な表情は」
「いや、答えは納得できるものだったから別にいいんだけど、なんか微妙にサイコパス入ってない?」
「サイコパスもソシオパスも定義を調べたことあるけど、俺には当てはまらないと思ったなぁ」
「さっきの答えで、少なくとも『誇大的な自己価値観』と『罪悪感の欠如』が当てはまる。ちなみに、咄嗟に私を助けようとした『衝動性』も」
「よく項目を覚えてるなぁ。でも、項目として当てはまってるのはそれだけだろ? サイコパスとして判定できるわけじゃないから、当てはまっていないと言える」
「今の発言もそれっぽいけど、既存の項目には当てはまらないかな。強いて言うなら、やっぱり『誇大的な自己価値観』。
私が微妙な表情をしたのは、さっきまでのあなたとは、まるで別人みたいな印象を受けたから」
「言われてみれば確かにそうだ……」
「え? それを自分で言うの?」
「いや、何と言うか……。冷静に考えてみると、いつもの俺なら、相手の気持ちも考えず突っ走って迷惑をかけていたけど、さっきは君の気持ちが手に取るように分かった。
でも、今は分からないんだ。何を言わんとしているのか。それも、いつも以上に……」
「うーん、火事場の馬鹿力ってヤツ? そして、燃え尽き症候群になった、みたいな。多重人格ではないよね?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない……。あるいは、転移か転生の影響とか……。元の人格の影響も考えられるか……。そしたら多重人格になるのかな……」
「でも、私を気遣うために転移の可能性を排除してないのは、少しは相手の気持ちが分かってるってことじゃない? 私はもう転生でもいいと思ってるよ」
「確かにそうだ……。いつもの俺なら……」
「いや、それはもういいから!
とりあえず、これからよろしく。まだ自己紹介もしてないんだよね。
私は『常添みか』。『みか』って呼んで。苗字では絶対に呼ばないで。
察しの通り、私は高校でイジメられて死にたいと思うようになった。
私がおせっかいを焼いたからって、高校生にもなって、名前でイジメ……と言うか、それから発展して器物破損や暴行をする連中は、馬鹿で幼稚で、こんな育て方をした親を見てみたいと思ったけど、多分時代だろうね。
甘やかしまくって、ろくに教育もしてないんだろうなっていうのが、それこそ手に取るように分かったよ」
「じゃあ、みか。暴行って、殴られたり……強姦されたりってことじゃないよな? 警察がどうのとも言ってたから……。
一瞬しか顔は見られなかったけど、綺麗だったし、かわいかったから少なくとも殴られてはいないと思うけど……」
「かわいいって……ありがとう……。まぁ、それは安心して。そこまで行ったら、もっと早く確実に自殺してるから。
雨の日に突き飛ばされて泥まみれにさせられたとか、何度も足を引っ掛けられて転ばされたとかだから。ね、幼稚でしょ?」
「安心できないんだよなぁ……。まぁ、こっちではそういうことは絶対に起きないし、起こさせないから、そういう意味では安心か……。
俺は『瀬海たすく』。俺も『たすく』でいいよ。こっちでのお互いの年齢は分からないんだし」
「たすく……。まさに、『名は体を表す』じゃない?」
「まぁ、俺もイジメとまでは行かないまでも、名前でからかわれたことはあるから、みかの気持ちは分かるよ。
『セカイをタスけるんだろ? 早く助けろよ。ぎゃはは』みたいな。
それに加えて、技術用語で『タスクキル』っていうのがあって、それでも。
そして、同じく察しの通り、俺もおせっかい焼きだから、周囲からウザいと思われていたはずだ。
当時の俺はそんなこと、これっぽっちも考えてなかったけど、社会人になって二年目、同期や上司から指摘されて初めて気付いた。
それでも直らないから、『わざとやってるのか!』とさえ言われて、今までもこれからも人に迷惑しかかけないなら、俺の人生は何だったんだろうと思うようにもなった。
医師にも診てもらったけど、いくつかの項目には当てはまるものの、全体としては特定の病気や障害には当てはまらないらしい。もちろん、さっきのサイコパスみたいに、自分でも色々と調べた。
名前の通り、みんなを助ける気持ちで生きてきた。
いつでも誰かを助けられるように、勉強や運動も頑張った。
一時期、呪いの名前なんじゃないかと疑問を抱くこともあった。
それでも、一生懸命やってきたけど、それじゃあダメなんだってことが分かって、これからどうしようと思っていたのが、まさにあの時だった。
結局、みかを助けることができなかったけど……君の笑顔を見ることができて、逆に俺が助けられた気分になったんだ。
少しは……ほんの少しは……役に立てたのかなって……。
その意味でも、ありがとうって言いたかったんだよ」
「……。じゃあ、これからも頑張って役に立ってくれるんでしょ? 役に立つ度にそんな涙を流してたら枯れちゃうよ」
「ああ! もちろんだ! みかも、もらい泣きするなよ!」
「うるさい……! おせっかい!」
「ははは! 俺達は似た者同士だな。おせっかい同盟か」
「うーん、異世界だから、『おせっかいパーティー』じゃない?」
「良いね、そのダジャレ」
「いや、ダジャレじゃないんだけど……今初めて気付いた。言いたかったのは『パーティー』の方」
「それだと、『この子』もおせっかいってことにならないか? 俺達にとっては命の恩獣だぞ?」
「そう言えば、私達がどれだけうるさくしても、たすくにずっとくっついて寝てるね。かわいい。
さっき私の質問に頷いたから、聴覚を失ってるわけじゃないのに」
「お姉ちゃん達の会話が心地良かったからだよ!」
「え⁉️ 起きてたの⁉️ って言うか、普通に話せるの?」
「え⁉️ お姉ちゃん、私の声が聞こえるの?」
「ん? みか、この子と話せるのか⁉️ 俺には鳴き声も唸り声も聞こえないんだが」
「う、うん……幻聴なのかな?
それを確認するには……そうだ。あなたから私に右手と左手のどちらかを複数回挙げるように指示してみてくれる? 当たってたら、私の所に来て、ほっぺたをスリスリする」
「うん、分かった!」
「それ、ほっぺたスリスリしたいだけなんじゃ……」
「いや、違うから!」
「あははは! じゃあ、行くよ! 右手を二回挙げて下ろして、左手を一回挙げたままにする」
「お、良い指示だね。短い動作だけど、偶然そうなる可能性がほとんどない。はい!」
「正解! はい、スリスリ~」
「あ、今幸せを感じた」
「少し気持ち悪いが、どうやら完全にコミュニケーションができているようだな。
となると……まずは君を最初に見て驚いてしまったことを謝らせてくれ。ごめん!」
『ううん、全然気にしなくていいよ。いつものことだから』
「だって」
「ありがとう。そこで初めに聞いておきたいことがある。君は虎のような動物なのか人間の女の子なのか。
これで、俺とみか、少なくとも視覚と触覚について、どちらの認識が正しいかが分かる」
『基本は虎の姿だけど、人間にも変身できるよ。でも、どっちが本当の私かは分からないんだよね。物心ついた時からそうだったから』
「え⁉️ そうなの⁉️ すごいね……だって」
「つまり、今は虎ってことだよな? でも、みかには人間に変身した姿が見えている。
そして、君が『お姉ちゃん達』と言ったことから、君には俺が金髪女騎士に見えている」
『うん、そうだよ』
「じゃあ、私が見ているのは何なの? その対象の正体とか?」
「魂とか本質とか? 断定はできないけど、そういう感じだろうな。仮に、鏡や水の反射で見ても、それは変わらないと」
「なんで私だけ……。もしかして……これが制約……? だとしたら……」
「何か知ってるのか?」
「う、うん……。私、神様の声を聞いたかも……。私は半分自殺みたいなものだから、制約を設けるとか。それ以上は聞いてないけど」
「うーん……それにしても、制約とは思えないな……。別のことを言っている可能性もあるんじゃないか?」
「まぁ、それはそうだけど、私にしてみたら、どういう日常生活になるかはまだ分からないし」
「確かにそうだ……。俺は何を言っているんだ……」
「また始まった」
『前のお姉ちゃんもそんな感じだったよ』
「え、そうなの? だったら、前の人格や思考に引きずられてるんじゃない?」
「その話は詳しく聞きたいけど、その前に、君の名前を聞いてなかった。なんて呼べばいい?」
『名前はないよ。逆に、何か良い名前ある? 名前欲しい!』
「そうなのか……。俺はてっきり、この二人と君が仲が良くて、名前も付けられてたんじゃないかと思ってたんだが……」
『いや、お姉ちゃん達とは、さっきここで初めて会ったんだよね。
私を見ても、あんまり驚かなくて嬉しかったんだけど、このまま食われてもいいかみたいなことを言い出して……。
もちろん、私はそんな気なかったし、二人ともすごく綺麗だったから、近づいてみたら受け入れてくれて、でも私達はこれから泉に入るから向こうに行ってくれって言われて、大人しくそこから離れたら、二人の姿が見当たらなくて、もしかしたらと思って、泉に沈んでる二人を見つけたから、引っ張り出して、胸を踏んづけて水は吐かせたけど、眠ったままだったから、とりあえず焚き火をするための枝や草を集めたりしてたんだよ』
「やっぱり入水なのか……。その理由は分からなくても、なぜここを選んだのかぐらいは知りたいな……」
『なんか、この森は猛獣や伝説の生き物の住処らしくて、一番奥の泉に辿り着いて、そこに入ることができれば、極楽浄土に行けるみたいな話があるらしいよ』
「他人事みたいに言ってるけど、その猛獣や伝説の生き物って君のことなんじゃ……おっと、名前をどうするか……」
「たすくが決めていいよ。色々な知識があるなら、良い名前も思いつきそうだし」
「うーん、そうだなぁ……。『青』を活かしたいから……『ラピスラズリ』の『青い宝石』から取って『ラピス』はどうかな?
ラテン語では、本当は『ラズリ』の方が青で、『ラピス』は石っていう意味なんだけど、本当に大切なのは本体で、何色にもなれるし、宝石にもなれる、蹴飛ばされても転がって形が整っていけば、より綺麗になる、という意味を込めて」
『私、ラピス! ありがとう、たすくお姉ちゃん!』
「へぇ、意味が出揃うと良いじゃん」
「誕生日プレゼントで、誕生石を調べていたら出てきたんだ」
「え……それって、彼女へのプレゼントとか……?」
「まさか。高校の同じクラスの女子にあげたやつ。好きな色は青だって言ってたから、バイトで貯めてたお金で、小さくて軽いラピスラズリを」
「いや、重っ! そんなのもらっても困るでしょ! 彼氏でも好きでもない人からもらっても。ウザがられてたとしたらなおのこと。しかも、高校生で! 流石、おせっかい星人」
「やっぱりそうなのか……。女子の考えることは、いくら考えても分からないから、できるだけ良い物をと思っただけなんだけど……」
「ある意味、どうでもいいと思ってたってことか……。サイコパスの『情緒の深みの欠如』と『共感性の欠如』に当てはまるね。『無責任』にはギリギリ当てはまらない」
「……。本人の目の前でサイコパス診断を行う人もサイコパスっぽい気が……」
「っぽいだけでしょ?」
「…………。これじゃあ、おせっかいパーティーじゃなくて、サイコパスパーティーになっちゃうな……」
「やっぱり二人とも面白いね! 私もそのサイコパス診断(?)してほしい!
私、仲良くしたいのに怖がられて誰も近寄ってこないし、近寄ってくるのは、私を殺そうとしてくる人しかいないから……」
「……。ちょっと待った!」
「え? 何?」
「いや、今……普通にラピスの声が聞こえてたんだけど……。みかが通訳する前に……サイコパス診断してほしいって」
「合ってる……。どういうこと?」
「こっちが聞きたいよ……。あ、ラピスの声、かわいかったよ」
「ありがとう!」
「セクハラ判定もやるべきか……。私にもかわいいって言ってたし」
「いや、ラピスはありがとうって嬉しそうに言ってたから! 子どもに言っただけだから!」
「関係ないんだよ、そんなのは。セクハラについては、もう受け取り手の問題じゃなくなってるんだから」
「確かにそうだ……。俺は会社で研修も受けたのに……」
「……。まぁそれはともかく、話の続きをするからね。
サイコパス診断については、子どもに対しては、あくまで傾向を見るぐらいだから、あんまり参考にできないよ?
それに、状況が状況なだけに怖がられるのも殺されかけるのも仕方ないし……。
とりあえずそれは置いておくとして、何かそれらしいエピソードある?」
「さっきプレゼントの話をしてたけど、私が仲良くしたいと思って、お近づきの印に動物の肉を民家の扉の前に置いたら、みんな気味悪がって捨てちゃうんだけど、どういうこと?」
当時のラピスがウキウキで木々に隠れて、ショックを受ける様子がありありと見えた。かわいいなぁ。
「それは、ラピスが人間の常識を知らないだけだよ。
強いて言うなら、『誇大的な自己価値観』と『共感性の欠如』に当てはまるかな。
自分が正しいと強く思っていることでも、相手がそう思っていない可能性を考えていないから。
そして、その話は間違いなく、おせっかいと言える」
「……。ちょっと待った!」
「何なの!」
「ラピスの声が聞こえなくなった。なんて言ったんだ?」
「は? 時間制限でもあるの?」
「いや、こっちが聞きたいよ……」
「後でまとめて話すから。とりあえず、『おせっかいパーティー』結成! おめでとう!」
「雑っ!」
「面白かった!」「つまらん……」
「続きが気になる!」「次回作に期待!」
「おせっかいすぎ!」「言うほどおせっかいか?」
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