第百十八話……賢者は歴史に学ばない!
「これ、めちゃくちゃ古い紙だったりする?」
「いや全然。こんな物に価値なんてないから、古くなったら都度書き写している。そうでないと、逆にこれを崇め奉っているように思えてしまうからな」
「面白い心構えだな。サウズはセントラルに従順だと言われていたのに」
「そう言えば、なんでセントラルの各国は植民地を解放したんだろう、なんで植民地の人達は解放された歴史を誇らしげに自慢しないんだろうって話を、前にセレナとしたことがあったんだけど、なんで?」
「実は、セントラル成立の過程でごたごたがあって、各領国は植民地どころではなくなった、というのが真相らしい。今でこそ領国同士は固い絆で結ばれているが、当時は互いに牽制し合っていた。
ただ、その状況で洞窟から高レベルモンスターが大量に出てきてしまい、力を合わせてその対応をせざるを得なかった。それが『勇者』の始まりと言われていて、セントラル成立の始まりとも言われている。
『魔床』と『魔天井』を管理するだけでも、相当のコストがかかるからな」
「セントラルは他の地方とは違って、洞窟というより『ダンジョン』と『塔』らしいからなぁ」
「そのまま、『セントラルダンジョン』と『セントラルタワー』ですね。どちらかと言うと、セントラルタワーの方が攻略難度は高いです。所々吹き抜けになっていたり、壁がなかったりするので、落下死するという意味で。モンスターの強さはどちらも変わりません」
「でも、それだけで解放者達が自慢しない理由にはならないよね? 普通はセントラルのことをバカにするよね?」
「そこはセントラルが上手くやったと思う。セントラルの成立自体が、植民地時代よりも厄介になった。つまり、戦力と権力をより集中させてしまったんだな。かなり早期に。
『これ、マズイんじゃね?』と気付いた当時の我が国の中央政府が、いち早くセントラルに迎合したのも、それが理由だと思う。
ある意味では、その選択は正しかった。それがなければ、この機に乗じて全ての国を巻き込んだ大戦争になっていてもおかしくなかったから。
そういう歴史もあって、現在の各国が我が国に抱いている感情は、賛否半々といったところだな。戦争を未然に防いでくれてありがとうという声と、セントラルが隆盛を誇っているのはお前達のせいだという声。
いずれにしても、過去から現在までの全てが他力本願による失敗と現状維持だから、セントラル含めて、どの地方も大きな声では言えないということかな。もちろん、その歴史自体を知らない人がほとんどだ」
「聞けば聞くほど面白い歴史だな。やっぱり現状把握だけでなく、歴史の把握も大事だと分かる。何も考えずに『変革だ!』と言って、セントラルの体制を破壊しても、セントラル民は誰も付いて来ない可能性が高いってことだもんな」
「『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』ってヤツでしょ?」
「ん? 経験からも学ぶことはあると思うが?」
「ちなみにその言葉、全く正確じゃないんだよな。実は、ほとんどの人が『洞窟のイドラ』『市場のイドラ』『劇場のイドラ』に陥ってるんだよ。
ちゃんとした文章で言えば、『自分の経験から学べると信じているのは愚者だけだ。私はむしろ、他人の経験から学び、初めから自分の過ちを避けることを好む』が直訳らしい。『賢者』も『歴史』も出てこない。まぁ、もしかしたら、それも正確じゃないのかもしれないけど」
「え、そうなの⁉️ ずっと騙されてた……」
「最初のは悪い言葉ではないが、良い言葉でもないな。誤解しやすい。やはり、自分で考えることも大事だ。それに、真の天才であれば、学ぶ必要もないからな」
「ああ。だから、本当にこんなこと言ったのかなって思って調べたんだよ。もしかすると、世の中の名言って、実は言ってないことが意外に多いんじゃないかとその時に思ったな」
「伝言ゲーム、改変、捏造は当たり前な世の中だからね。それは全世界共通だってことか。
あ、ごめんね。話を戻していいよ」
「いや、素晴らしい話をしてもらった。やはり、公開処刑時の陛下のご発言は全て文書に残して、予め広めておくか……」
「じゃあ、勇者管理法から順番に読ませてもらうよ。終わったら、ちゃんと元に戻しておくから」
そして、ビルさんは仕事に向かい、私達は法律と政策の勉強を始めた。
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