第百十四話……経済政策の一端!
「さて、実は私達の英雄の中にもモンスターとそれに準ずる存在がいることを皆は知らないと思う。敬称略で改めて紹介しよう」
サーズさんのアイコンタクトにたすくが応え、三人を浮かせた。
「皆もどこかで聞いたことがあるかもしれない。伝説の青い虎のことを。ラピス!
そして、前政府では箝口令が敷かれていたが、冒険者以外でも知っている者がいるかもしれない。シルバードラゴン改めプラチナドラゴン、プレア!
この二人は、人間との友好を深めようと日々努力をしてきた。特に、プレアは今日の友好宣言の真の立役者だ。
最後に、例の本能だけで動いていた毒のドラゴン。私達はバッドヴェノムドラゴンと名付けたが、その存在から全く別の存在として生み出され、優しい癒やしの魔壁の輝きを持つリズ!
この三人に対しては問答無用。私は彼女達に出会った直後から話を聞いていたので、英雄であることに一切変わりはない!
私達の先駆者である英雄を改めて讃えようではないか!」
サーズさんの呼びかけに、周囲は再度盛り上がった。
今度はビルさんが拍手を制すると、あっという間に次第の終了だ。
「では、これにて友好関係締結イベントを終了とする。モンスター諸君は洞窟管理棟建設のための資材搬入作業に移ってくれ。首都民においては、一番外側から順番にゆっくり解散すること。珍しさのあまり戻ってきて、モンスター達の搬入作業の邪魔をしないように。
なお、今回は同胞となったモンスター数が少ないので、各個人の自己紹介シートを似顔絵付きで公表する予定である。もちろん、民間に全て委託するので、似顔絵に自信がある画家は、サンプルを一枚のみでかまわないので、一週間以内に役所に提出すること。
初回であることから、失礼ながら画家の個性は出さなくて結構なので、いかに似ているかが採用基準となる。タッチには個性を出してもかまわない。できるだけ多くの画家および画家志望に参加してもらいたいので、モンスター一人に対して画家一人が担当する形式を考えている。
当然、画家名も公表するので、この機会に是非宣伝に使ってほしい。今回不採用となっても、入場無料の展示会を開催するので、そこでも名を売るチャンスとなるだろう。
あえて不採用を狙って、そこで画家の個性を出してもかまわないが、その場合は採用狙いのものも含めて二枚提出してもらう。あくまで、似顔絵画家の採用を目的としたものであり、今後の政府からの要望にしっかり応えられるかどうかも見たいからだ。
二枚提出したからといって有利になることもない。
それでは、順次解散!」
「おおー、そんなところまで決めてたんだ。前に画家救済の話は出たけど、すぐに機会を見て実行できるのは、やっぱりすごいね」
「民間企業との癒着だったり特定企業や個人の宣伝だったりなんて、上がしっかりしていればどうでもいいんだよな。みんなにとって、ありがたい機会だよ」
そして、サーズさんが城に戻り、公開処刑終了時と同じように、ビルさんがこちらに近づいてきた。
「私は少しだけ搬入作業を見ていくので、先に帰っていてくれ」
「モンスターのみんなは、いきなり初仕事だけど大丈夫なの? 仕事のやり方とか教えてないよ?」
「問題ない。新人育成に力を入れている商会と建築業者が取りまとめを行っていて、こちらの事情も説明済みだ。パワハラの概念も伝えてある。私はそれを少し確認するだけ」
「ならいいけど」
「仕事のやり方を変に覚えてしまったら、組織が腐るのも早いから注意だな。時間がある時に、『仕事のやり方そのもの』をレビューした方が良い。特に最初の一年と慣れる頃の三年が大事だと言われている」
「全くもってその通り。本質的な課題を捉えられなかったり、おかしな対策を採用してしまったり、報連相さえできなかったりする。城内エリートですら、それが起こり得るんだ。新人育成は、組織にとって最も重要なミッションだよ」
「そう言えば、サウズの人事部、って言うか人事院か、そこって問題ないの? 私達がここに来る時、人事が機能してないんじゃないかって話してたんだけど」
「いや、問題はあったし、それは当たっている。一部のエリート良心派がいなければ、コーディーも採用されていなかっただろうな。つまり、人事院はクズの集まりと化していた。もちろん、今回は一掃した」
「へー、人事ってエリートの集まりのイメージだけどね」
「組織によるらしい。仕事ができる人が人事に異動する組織もあるし、仕事ができない人が異動する組織もある。まぁ、サウズの場合は、王子達が直接採用したか、人事に人を送り込んでいたんだろう」
「そういうのがごちゃ混ぜになっていたのが、私達の人事院だったんだ。
おっと、それでは私は商会と話をしてくる」
「ビルさん、ありがとう。またあとでね」
私達がビルさんに手を振って別れると、今度はTくんがこちらに近づいてきた。
「たすく、みか、みんな、ありがとう。おかげで、無事にイベントを終えることができた」
「Tくん、流石だったよ。みんなが安心できたと思う」
「ああ。本当に素晴らしい演説だった」
「私も安心できた!」
「わしもじゃ!」
「……私も……人間でもモンスターでもないけど……」
「サーズさんがリズさんも含めてくれたから安心ですね。これも後世に残る伝説のイベントでした」
「ありがとう。本当に嬉しくて、楽しくもなってきたぞ!」
「でも、油断したらダメだよ」
「調子に乗ってはいけないし、理想と現実のギャップで落ち込まないようにしないといけない」
「分かってるなら、よし!」
私達はモンスター達と笑顔で別れ、妨害者の連行を手伝いながら城に戻った。
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