第百十三話……友好宣言!
「滅相もないことでございます。さて、人間とモンスターに違いはないことまでお話ししたかと思います。
今は人間とモンスターの間に違いがあったとしても、話し合えば必ず解決に至ることができる。そうでなくとも糸口は見つかる。あとは偉い人に任せればいいのです。
もしかすると、先程のやり取りを見て、どちらがモンスターか分かったものではないと思った方もいるかもしれません。それはとてもありがたいことです。
私達モンスターが目指すべきはそこです。しかし、実はそう思ってもほしくないのです。人間とモンスターの分け隔てなく、偏見もなく、もちろん差別もなく、『この社会で生きる同じ仲間だよね』と思ってほしいのです。
いえ、究極はそれさえも思わないことです。国家持続方針をご理解のサウズ国の皆様には、すでにお分かりのことと思います。
『モンスターが当たり前にそこにいて、一緒に泣き、一緒に喜び、一緒に笑い合っている』ことが『日常』であってほしいのです。もちろん、私達もそれを心に刻みます。
お互いの歩み寄りが大切であり、どちらか一方では成り立たないのです」
そこでTくんはビルさんの方を向き、このまま友好宣言に行く流れをジェスチャーで伝えた。
「私達サウズ地方サウズ国洞窟Aモンスターは、サウズ国民が善良な人間であることを前提として、人間との共存を望み、人間社会の一員になることを望み、サウズ国民になることを望み、共に笑顔で歩いて行ける努力を惜しまないことをここに誓います。
みんなのための社会を一緒に実現して行きましょう!」
周囲が歓声と拍手に包まれると、サーズさんがTくんと同じ位置まで浮かせてもらうようたすくに合図を送った。
そして、準備が整ったところで、サーズさんがビルさんにアイコンタクトを送った。
「それでは、陛下より、同じく友好宣言を賜る!」
「Tくん、モンスターのみんな、ありがとう。モンスター用社会適合テストの結果を聞いた時にも思ったことだが、まさかここまで素晴らしい宣言になるとは思わなかった。
そういう意味では、妨害があったことも前向きに捉えたい。なぜなら、人間社会において最も重要であると言ってもいい『責任』という言葉を完全に理解した上で、Tくんがそれを行動で示してくれたからだ。
人間でもそれを行うのは容易ではない。完全に理解することも難しいし、偶然の状況で適切な判断をすることも難しい。
Tくんだけではない。この場の全員が頭に血が上ることもなく、冷静な判断を下し、黙って状況を観察していた。殿下の力を恐れているわけでもない。
なぜか。心から、真剣に、この先ずっと、人間と仲良くして行きたいと思っているからだ。当然、私もそう思っている。
モンスター達の『この姿』を見て、仲良くなんてなりたくないと突き放す者は人間ではない。一切騙す気もなく、心から『あなたと仲良くなりたいです。迷惑は絶対にかけません』と手を差し伸べられているのに、手を握り返さない者は人間ではない。
この発言が差別だと思うだろうか。それなら差別で結構。差別国家で結構。
相手が人間であれば、それも頷ける。内心でどう思っているのか分からないからだ。
しかし、モンスターは純粋な心を持っている。そこに違いはあるだろう。ただし、素晴らしい違いだ。その辺の人間よりも余程信用できるのだ。そこは失くさずにいてもらい、私達がそこに近づくべきだろう。
その純粋な心を踏みにじった場合にどうなるか。皆なら当然理解していることだな。そこに一切の違いはない。主体と客体が人間に限った法律があれば、私の友好宣言直後にモンスターにも適用されることは事前の通知にもあった通り。
だから、私の長い話はこれぐらいにして、宣言に移ろう。
サウズ地方サウズ国王サーズ・サウゼリの名において、洞窟Aモンスターが善良なモンスターであることを前提として、王家および全国民がモンスターとの共存を望み、モンスターが人間社会の一員になることを受け入れ、サウズ国民になることを受け入れ、共に笑顔で歩いて行ける努力を惜しまないことをここに誓う!
みんなのための社会を一緒に実現して行こう!」
サーズさんとTくんが両手で固い握手をすると、今日一番の歓声が上がった。モンスターのみんなはホッと胸を撫で下ろし、すぐに笑顔で周囲に応えていた。
ちなみに、モンスターをモンスターと呼んでいいこともTくん達と合意している。『え、俺達モンスターだけど、そう呼ばれることに何を不快に思うことがあるんだ?』と言っていた。単なるまとめの呼び名であること以外に意味がなく、呼ぶ側に差別心がない、呼ばれる側が何も思わないと差別にはならないことがよく分かる。
そして、サーズさんが拍手を制し、さらに話を続ける。
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