第百十二話……妨害者の末路
「ウェルズ地方で大犯罪者になって死刑確定だから、サウズ地方に逃げて来たんだろ? そして、偶々このイベントを見つけ、欲が出た。たとえウェルズ地方の犯罪者だとバレても強制送還されないように、偽装モンスターをけしかけている悪の組織を追い払い、国民を窮地から救った英雄になろうとして、この場に現れた。現在の状況や事実を一切確認せずに。
残念だったな。ここにいるモンスターは全員本物なんだよ。洞窟Aの超高レベルモンスターだ。お前達では、相手がたとえ一体でも絶対に勝てない。
余程焦っていたのか、本当に何も考えていないのか。
もし、フォーリエが生きていたらスキルの影響を疑うけど、アイツは死に、時間はとうに過ぎているから、それはない」
「て、てめぇ! 何を知ったふうな口を叩いてやがる!」
「すごいな。明らかに外見のオーラが違うのに、殿下方を普通の冒険者だと思っているのか」
「いずれにせよ、我が国のルールや秩序を無視する他国民は問答無用で排除する。排除方法には、我が国での死刑も含まれる。他国民だと申告すれば、門兵からそう伝えられ、国家持続方針を説明されたはずだ。それに対して真っ向から唾を吐きかけた形だ」
「コイツらは、説明を聞かずに振り切って来たみたいだな。だから焦っていたのか。モンスターが本物だとしても、わざと刺激して混乱を招くことで逃げ延びられると。門兵は突き飛ばされただけだから、軽傷だと思う」
「さっきからてめぇ……なんで俺達のことにそんなに詳しいんだよ!」
たすくの説明により、みんなが状況を把握できたところで、丁度良く追手の門兵複数人が到着した。
「も、申し訳ありません、陛下! この者達が挙動不審だったため詳しく話を聞こうとしたところ、『俊足スキル』のようなものを使って、北東門を強行突破してしまい……」
「ご苦労、問題ない。こちらで確保した。現状では、スキルを使われたらどうしようもない。ただ、その対策はビル宰相が推進中だ。近日中に実行されるだろう。
お前達は持ち場に戻っていいぞ。評価には影響しない。いや、負傷者が自分達のみだとすれば、不審者と見抜いたことがむしろ良い成果になるか。報告書はあとで読ませてもらう」
「へ、陛下のご寛大さに心が打ち震えております! 誠にありがとうございます! それでは、失礼いたします!」
そして、門兵達は北東門に戻って行った。
「…………。こ、このままじゃ、モンスターが暴れてしまうぞ! 俺達に任せろ!」
「コイツ、国王と兵のやり取りを実際に見ているにもかかわらず、まだ『知らなかった』で済ませる気だな」
「命を賭けたギャンブルなんてやるもんじゃないね。そのまま逃げてた方が、まだ助かったかもしれないけど、ギャンブルであることに変わりはないからね」
「殿下、この者達のスキルをお聞きしてもよろしいでしょうか。捕らえ、勾留する際に注意が必要な場合がありますので」
ビルさんの確認に、たすくは数秒の間、化物冒険者達の思考を読んだ。
私の目には、すでにスキル名が表示されているが、本質名なので何も言わないことにした。
「男は、『騙しスキル』。だから強気に出てきたわけだ。でも、俺がスキルを無効化していたから、みんなに影響はない」
「はぁ⁉️ 無効化って何だよ!」
「女は、ビルから向かって左側が『身体能力向上スキル』。自分と仲間が俊足になったのもこれのおかげだ。ただ、限度があるようだから、鉄の枷なら問題ない。
中央は、『魔法操作力向上スキル』。右側は『料理スキル』。いずれも拘束には問題ない」
たすくは、男化物冒険者を無視して話を続けた。
もしかすると、聞く耳を持ちたくないほど、彼らは酷い事件を起こしてきたのだろうか。それとも、すでにビルさん達が対応を決めているからだろうか。
「そこで、セレナに聞きたい。騙しスキルがどの程度効力を発揮するのか分からないんだが、『コイツには絶対に騙されないぞ』と思っていても、騙されるものなのか?」
「定義によると、スキル所持者のスキルレベルによるらしいです。とは言え、絶対に効果を発揮する騙しスキル所持者は、これまで現れていません。
ウェルズ国から他国に『スキル犯罪者警報』がないようであれば、そこまでではないとも思いますが、念のために確認しておいた方が良いかもしれませんね」
「では、殿下にはその者達の声を周囲に一切聞こえなくしていただき、イベント終了後、連行にご協力いただきたく存じます。陛下、よろしいでしょうか」
「ああ。犯罪者と言えども、この歴史的イベントは見てもらいたいからな。自分達の認識が我が国の社会といかにかけ離れているかを確認してもらいたい。
Tくん、こちらの話が長くなって申し訳なかったな。続けてくれ」
サーズさんの促しに、Tくんがお辞儀をした。
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