第百十一話……モンスターとしての責任
たすくがスキルを使って妨害者を宙に浮かせ、私達の目の前まで移動させると、そこには『死刑』ランクの化物四体を確認できた。
「全員『死刑』ランクだね」
「ありがとう、みか。冒険者っぽいな。男一人、女三人」
たすくが気を利かせて、私にどんな妨害者かを伝えてくれた。
「な、なんだ⁉️ 体が動かねぇ!」
「いやぁ! 何これ⁉️ 離して!」
冒険者の化物達は、たすくの力のことを全く知らないようだ。
「Tくん、まずは頼む」
「承知しました。そちらの冒険者の皆さん、私は人間に変身したトロールのTくんと申します。あなた達は、最近発布された『国家持続方針』も『モンスターと人間の共存社会実現方針』もご覧になっていない様子。もちろん、公開処刑も。
あなた達は、どちらからいらっしゃったのですか? 自己紹介をお願いします。この場の皆さんのために」
「はっ、モンスターなんかに名乗るかよ! お前ら、騙されるな! コイツらが人間を殺さない保証なんてないだろ!」
その冒険者達の言動に、サーズさんを始め、明らかに周囲が怪訝そうな顔をしている様子が見て取れた。
また、化物リーダーから何かが出ているようだが、瞬時に消えている。たすくがスキルを無効化しているのだろうか。
「それは人間同士でも同じことではないですか? 刃物を隠し持った人間が、無差別に人間を殺さない保証なんてどこにもないのですから」
「うるせぇ! 程度があんだろ、程度が!」
「人間も少し賢ければ、大量殺人など容易にできますが……。とりあえず、私から言って自己紹介してもらえないようであれば、上の人間にエスカレーションしましょうか。
ビル・クライツ宰相、お手数をおかけして申し訳ありませんが、よろしくお願いします」
「てめぇ、何言って……」
「Tくん、了解した。私はサウズ国宰相ビル・クライツだ。当然、偽物ではない。君達、明らかに我が国の冒険者ではないな。どの国から来た?」
ビルさんの自己紹介と質問に、化物冒険者達は戸惑っていた。
「う、嘘つくんじゃねぇよ! 国が率先してモンスターを引き連れてるのかよ! どっかの悪の組織だろ!」
「質問に答えてもらおうか。場合によっては、この場で処刑する」
「おいおい、そんなことしたら国際問題になるぞ! 俺達は『ウェルズ国』から来た冒険者なんだからな!」
「ウェルズ国の冒険者が、なぜ我が国に来て我が国の最重要イベントを妨害するのだ? しかも、ウェルズ国代表者とでも言わんばかりに。内政干渉か? その方が国際問題だな。
早速、お前達を捕まえて、ウェルズ国に遺憾の意を表明した後、我が国で処刑し、謝罪と賠償を要求するか。場合によっては戦争だな。
陛下、よろしいでしょうか」
「ああ、至急頼む」
「へ、陛下⁉️ おいおい、やっぱり嘘なんじゃねぇか! お前達こそ処刑だろ! 国王と宰相を装って、こんな馬鹿げたイベントを開いて!
そんな大事なことを簡単に決められるわけねぇんだよ! ましてや、戦争になんてなるわけないだろうが! 政治のことも知らない、とんだマヌケどもじゃねぇか! だっはっはっは!」
「私達の言葉や状況を信じられず、笑いが溢れ、現実逃避するのも無理はない。このような素晴らしい国は、かつて存在したことがないのだからな」
「ウェルズも相当深刻だな。優秀な冒険者がセントラルとは無関係に流出しているとは聞いていたが、無能な冒険者まで流出して他国に迷惑をかけるとは。
我が国にもウェルズ地方出身の冒険者は少なからずいるが、彼らは決してこの者達のように無礼でも無知でも無思慮でも無能でもないのだがな」
「宰相、陛下、誠にありがとうございます。私からも発言よろしいでしょうか」
Tくんの挙手に、サーズさんとビルさんは発言を促すと、彼は改めて冒険者達の方を向いた。
「あなた達は、『責任』という言葉を全く理解していないようですね。だから平気で他国でも暴れる、人も国も貶める、自分達が正しいかのように振る舞うのでしょう。そして、このあとは自分達の正当性と居場所を主張するのでしょう?
それは間違っていると断言できます。自分が良ければそれでいいわけではないのです。あなたの一挙手一投足で、周囲も仲間も国の同胞も同じように評価されてしまうのです。だから、関係者だけでなく全員に、本当に全員に迷惑がかかるのです。
差別だと言うかもしれませんが、それが現実であり、人間の心なのです。もちろん、私達モンスターも同じです。
サウズ国という素晴らしい国では決して起こらない前提でお話ししますが、もし私達が一人の人間から嫌がらせを受けたら、『ああ、やっぱりこの国の人間はモンスターを受け入れてくれないのかな』とか『ああ、やっぱり人間はモンスターを受け入れてくれないのかな』と心の片隅で思ってしまうのです。事実がそうでなかったとしても。
逆に、私達の内、たった一人でさえ人間に危害を加えてしまった場合でも同じことが言えます。『ああ、やっぱりモンスターは野蛮で危険な存在なんだな』と思われてしまうのです。
だからこそ、そのことを宰相が実際に示してくださった。
これまでそうでなかったとしたら、あなた達の汚名は、時系列にかかわらず誰かが濯いでくれていたのです。
だからこそ、陛下はウェルズ国の状況と、他のウェルズ国出身の冒険者に言及した。
もちろん、戦争になることはないでしょう。お二人の極めて優秀な政治手腕によって、ウェルズ国に対して、あなた達を放置した責任を金銭や貿易手段を用いて必ず取らせるでしょうから。
あなた達はそれを悪びれもせず、現実逃避したまま死んでいく。哀れで仕方ありません。ただ、それも責任なのです。しかし、取り返しが付かない責任です。
私達モンスターは、決してそのような愚行を犯しません。素晴らしい人々によって、それらを十分に教えられ、真に理解できる知能を持っているからです。それを他の洞窟のモンスターにもしっかり伝えていく。
サウズ国民もそうであり続けるでしょう。私の話に真剣に耳を傾け、頷いてくれている皆さんの反応を見て確信しました!」
Tくんの演説に、周囲の人達は歓声を上げた。
一方、化物冒険者達は、やはり悪びれもしない態度を貫いていた。
「こんな詐欺師どもの話なんて聞く価値ねぇ! 騙されんな! 俺達がこの国を救ってやる!」
「詐欺師はお前だろ」
化物冒険者に反論するように、これまで黙っていたたすくが、ついに口を開いた。
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