第百八話……モンスターが出た!
午後になり、ビルさんを連れて改めて洞窟Aに向かった私達は、その出入口前にいた。
「よし、それじゃあ運ぶぞ」
たすくが魔壁前にいるモンスター全員に遠隔で声をかけ、返事を受けると、彼らを五秒程度で出入口まで運んできた。
『やっぱり、一番恐ろしいのは、たすくだろ……。洞窟内の景色を認識すらできなかったぞ……』
先頭を切り、ドスドスと足音を立て、トロール姿で出入口から外に出てきたTくんの表情は、モンスターとは思えないほど複雑な表情をしていた。
「あまり気にしない方が良いよ。Tくんなら、『衝撃を無効化したにせよ、その力は一体どこに行ったのか』とか色々考えちゃうだろうけど。
それにしても、案外普通の反応だね。初めての洞窟外でしょ?」
『いや、その疑問で頭が一杯だったからこそだ……。しかし、改めて眺めてみると……美しいな……』
『うん……。プレアとラピスから話は聞いてたけど、外ってこんなに色鮮やかで眩しいんだね……』
モンスター全員が外に出て辺りを見渡していると、ビルさんがみんなの前に出た。
「この洞窟は我が国の領地内にあるから、この言葉が適切かどうかは分からないが……。
ようこそ、サウズ地方サウズ国へ! 皆を歓迎しよう! そして、我が国の一員となってくれることを心から嬉しく思う!」
『ああ! 俺達もだ! 感謝する!』
ビルさんが突き出した右こぶしに、ゆっくりと優しく右こぶしを合わせるTくん。
「それでは、少し早いが予定通りの順番で私に付いてきてくれ!」
そして、ビルさんが街の方を振り返り、みんなが進み始めようとした。
しかしその瞬間、今までに感じたことがない地震が発生した。
「な、なんだ……⁉️」
「うわ、変な地震!」
それもそのはず、地震が起きた直後、洞窟Aの出入口付近がガラガラと音を立てて崩落し、中への道が完全に塞がれてしまったのだ。
変だと思ったのは、崩落の衝撃による地震だったからだろう。
その際、細かい瓦礫や砂煙が中から勢い良く吹き出してきたが、たすくがそれを遮ってくれた。
「あ、危なかったね……。誰も巻き込まれなくて良かったよ。もしかして、みんなが歩いた時の衝撃が原因?」
「いや……これは……」
「…………何だろう……何か、変……ううん……何かが変わった……?」
たすくとリズの意味ありげな言葉に、私達は息を呑んだ。
「おそらくこの崩落、意図的なものだ。だが、心配する必要はない。誰がやったかは分かった。神様だよ」
「えぇ⁉️ どういうこと⁉️」
「正確には、そうプログラムされていた。この崩落の中心に穴が空いてるだろ? そこに侵入した光の通路がそれを示してくれた。
綺麗な正八面体を連続で描いて、中に繋がってるんだ。そして、その先には『とある物』が転がっていた。先と言っても魔壁前だけど……今持ってくる」
「あ……」
私がその方法を想像した瞬間、おせっかいスキルにより、崩落現場が一瞬にして塵と化し、その奥からとてつもないスピードで、『ソレ』が向かってきた。
なんか見覚えある光景だなぁ……。
しかし、たすくは『ソレ』を手に収めず、私達に見せるように、宙に浮かせた状態に保った。
「え……? 宝石が付いたネックレス? その赤い宝石が……正八面体?」
「神様からの報酬だろうな。その条件は、『モンスターが全員、洞窟外に出ること』。
崩落現場の光の通り道が、その報酬の内容を表していて、一定期間内に魔壁前に到達して回収しないと、この宝石が消滅する、なんてこともあったかもしれないな」
「だとしたら、崩落を解消するまでに消滅してそうだよね。もしかして、それも条件に含まれるのかな? モンスターを追い出す形だと、宝石を手に入れても自分が外に出られなくなったり、今回みたいに自分が外の場合は、モンスター達と協力して魔壁前まで辿り着かないと無理な時間設定だったりとか。
でも、たすくがそれをぶっ壊しちゃった」
「今のところ、違反とはみなされていないみたいだけど……ん?」
たすくが宝石を右手に乗せ、おせっかいスキルを解除すると、ネックレスが自動的にたすくの首にかかった。
「あっ……! 呪いのネックレスだったりして!」
「それは流石に神様に失礼だろ! 多分、何か効果があるはずだ。それを確認したいが、今はそんな時間はないな。後回しにしよう。
不測の事態が起きても困るから、俺が宝石の力を抑えるように周りを包む。
ビル、とりあえず行こう!」
「あ、ああ……。それでは気を取り直して……予定通りの順番で私に付いてきてくれ!」
そして、私達とモンスター一行は、宝石の謎を残しつつも広場に向かった。
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