第百六話……認知的不協和⁉️
「そうか、聞いたか……。手続きは進めていないから、その点は心配しなくていい。たすく達には話そうと思っていたことだし、話せばそのために動いてくれることは分かっていたからな」
城に戻って王室に行くと、ビルさんがいたので、サラさんと会ったこととセントミディ家について話した。
「よかったら、セントミディ家についてのビルの評価を具体的に教えてくれないか?」
「一言で言うなら、税金を貪る堕落怠惰貴族。いくら言っても聞かないし、少し良くなったかと思えば、それは表面上だけで中身は一切変わっていない。
基本的に何もやろうとしない。失敗を恐れているわけでもない。どうすれば現状を楽に生きられるかしか考えていない。
具体的に言えば、『有事のために備蓄をしておけ』と言っても、『そんなどうなるか分からない将来のことなどどうでもいいから、使い切った方が良い』という考えを変えない。
また、『インフラ投資をしないと人口も増えようがない』と言っても、『そんなどうなるか分からない将来の……』を繰り返す。
かと言って、将来に不安を抱いているのかと思えば、そうでもないところに腹が立つ。不安だとしたら、普段から豪勢な食事を控えるはずだが、それが一切ない。貪欲なのか何なのか……。
これがサラを除いた一族全員の考えと態度だからな。正直、私も公開処刑を望むレベルだよ」
「うーん……。認知の問題かもしれないね。認知的不協和ってやつ。前にビルさんがいない時に、サーズさんには話したけど、新たな例を挙げるとしたら、『国が衰退していく』と『セントミディ家も衰退していく』。だから、『今の内に人生を楽しもう』という結論になる、みたいな。本来、その衰退を阻止しないといけないのに、そこから目を逸らしてしまう。
サラさんは、ビルさんを信じていて、衰退を阻止できると思っていたから、その結論には至らなかった。あるいは、もっと前にそう思う何かがあったとか」
「おお、みかの言う通りかもしれないな」
「なるほどな……。私とサラは早くから幼馴染だったから、認知的不協和に陥らずに済んだわけか」
「へぇー、じゃあビルさんの実家もそこにあるってことか」
「いや、私は商人の生まれで、色々な土地を回っている中でセントミディに長期滞在した際、サラに出会ったんだ。お互い一目惚れだったよ。
それからは毎日のように会い、私がその地を離れる度に抱き合いながら泣き、それでもサラの方から商い先に会いに来てくれた。
道中で誘拐されてもおかしくないから控えるように私から言っても、『あんな家にいるぐらいなら、ビルさんと一緒にいたい』と言って。そもそも、セントミディ家は放任主義だから、長期間サラがいなくても気にしなかったらしい。
私がセントミディに訪れること四度目の時、サラは家に絶縁宣言をして私と結婚した。
ちなみに、私の実家はサウズ地方西部にあり、両親は兄達に仕事を引き継いで、悠々自適の生活をしている」
「何気に惚気話を混ぜてくる辺り、愛し合ってるねぇ。まぁ、あんなに良い人いないからね」
「でも、セレナも素敵な女性だし、ユアさんもそうだ。モンスターだって、人間化したら美形が多かった。まぁ、それは関係ないかもしれないけど……。
実は、サウズ国はそういう人が多いんじゃないか?」
「私もそれは感じるかな。商人で各地を回っていた時も思ったし、海外に行った時も思った。まず、この大陸自体が、男女問わず美形が多い。その中で、性格の良さは、我が国は優れている気はする。贔屓目かもしれないが。
ノウズ地方は分からないな。しかし、誰でもウェルカムだから、元の国民は少なくとも良い人が多い気はする。まぁ、悪人を排除している可能性はあるが」
「面白いね、そういう話。いくつか要因は考えられるけど……戦争がないからとか、洞窟があるからとか、泉があるからとか、神様が特に力を入れている場所だからとか」
「神様の話は、やはり俺の盲点になるなぁ。普通は平等なんじゃないのか?」
「でも、俺達が知っている神様は別にして、一般的に信仰されている神様でさえ、信仰しないと助けてくれないからな。もちろん、信仰しても助けてくれない。なら、存在する意味ないよな。
逆に邪魔な存在だよ。宗教戦争を引き起こして、世界中でそれを肯定する道具にされてるんだから」
「ふふっ。たすくの方が、よっぽど神様じゃないか」
「しかも、たすくみたいに言うと、『我々の神を冒涜した! 宗教の自由を否定した!』とか言われて、世界中から袋叩きに遭って、終いには確信犯に殺されるからね。
宗教を利用して世界と自由を歪めてるのはどっちなんだよって話だけど、それも聞く耳持たず。そういう人達は、宗教にすがりつかないと生きて行けないんだよね」
「宗教もやはり考えものだな。何でも自由が良いかと言うと、そうでもないということだ。
ビル宰相、宗教の自由については、今の話を念頭に、もっと検討が必要だ。我が国が滅びかねない。他の自由化についてもだ。より具体的な、現実的なシミュレーションが不可欠になる」
「はっ! 宗教や移民、自由化政策に関連する関係部署には、さらなる検討を指示、基準化した上で、場合によってはペンディングとします!」
「ビル、明日の午後は予定通りでいいか? 首都民には実現方針がちゃんと広まっているみたいだし」
「ああ、予定通りで行こう。次第は明朝に渡す。私も洞窟からの行進に参加することになる。陛下は広場で合流となります」
「妨害者がいたらどうするの?」
「今回はTくん達に任せようかと思ってるけど、手が付けられないようなら俺も協力する」
「では、その点も次第の注意事項に記載しておこう。他に質問を受けたら、たすくの判断で答えてかまわないが、懸念点が生じた際は報告してくれ」
「いよいよ最後のハードルだね。壁なのかもしれないけど」
「越えられるさ。破壊したっていい。小さい穴でもいいんだ。お互いが見えて、手を繋げれば」
サーズさんの相変わらずの素晴らしい言葉に、みんなは『うんうん』と頷いて、間もなく解散した。
国賓部屋に戻り、たすくが明日のことをTくんに音声で伝えると、モンスター達にも気合いが入ったようだ。
当初は、モンスターと共存などできるのだろうかと誰しもが思っていたはずだ。もちろん、私もその一人だが、それを信じて止まないプレアとたすくが、みんなを引っ張ったからこその今だろう。
明日はどんな結果になるのか。
いや、答えはもう分かっているか。
みんなぐっすり眠れていたから……。
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