第百五話……腐敗貴族情報!
次の日の午前。ようやく私達は、城内をゆっくり見回ることができた。
昨日は午後になって王室に行き、『モンスターと人間の共存社会実現方針』が無事承認されたことを確認。その後、私達は深夜残業の疲れを癒やすため、例のごとく昼寝をして、心と体を休めた。
サーズさんの命令で、すぐに方針の複製が始まり、城内に通知されると、みんな驚いた様子だった、とさっき会ったコーディーさんに聞いた。
披露イベントの関係者達も当然慌ただしくなり、それぞれの部署で夜遅くまで計画を練ったそうだ。
城内を散策する際、一番気になっていた広間の窓はすでに修繕工事が終わり、綺麗に元通りになっていた。結局、いくらかかったんだろう。
私達が通る度に、城内従事者が敬礼をしてくるのは、誇らしいのか恥ずかしいのか、何とも言えない気持ちになった。
午後は街に出て、色々な通りを歩いたり、店を見て回ったりした。
この際、たすくの剣も鎧も売り払っていいんじゃないかと思ったが、セレナによると、冒険者以外の格好では、商人とそれに準ずる職業以外、セントラルに入れないということで泣く泣くそのままになった。
せっかく、たすくを女装男の格好にしてやろうと思ったのに。
南門にも行き、簡易牢の様子も伺ったが、相変わらずアイツらは『死刑』ランクだった。
街中では、首都民がリズを振り返りながら見てきたり、気軽に話しかけてきたりもした。子どもにはリズが『よしよし』してあげていたが、大人にやると行列になりかねないので控えてもらった。
時には実現方針についての質問を受けたりもしたが、たすくが誠実に答えて、みんな納得して帰って行った。
そして、私達もそろそろ帰ろうかと思っていたところ、女性一人とその息子であろう子どもが手を繋いでこちらに近づいてきた。
「あ、あの……おせっかいパーティーの皆様、主人がいつもお世話になっております。ビル・クライツの妻でございます」
「あ、ビルさんの⁉️ こ、こちらこそ、お世話になってます! みかです!」
「どうも、たすくです」
私が戸惑ったのもそのはず、前国王妃にもユアさんにも負けず劣らずの超絶清楚系美人が、ビルさんの奥さんだったからだ。限りなく『純粋』ランクに近いと言っていいだろう。
清楚多すぎない?
「ビルさん、めちゃくちゃ忙しいから、この前一度帰ったきり、全然家に帰れてないですよね。ガチのマジで忙しいんですよ。まぁ、半分私達のせいなんですけどね」
「皆様が近々ご出発なさることは耳にしております。それまでにできるだけ仕事を進めたいと主人は申しておりました。しかし、それは私達家族にとっても本望です。
門兵に異動して以降、いつも愚痴ばかり言っていた主人が、あの時は本当に嬉しそうに熱く未来を語っていたのです。
国家に身を捧げる主人を支えることで、私達も国家に奉仕できる。それを誇らしく思います。
そのために、私達も城に住まわせていただくよう改めて志願し、明後日にも実現する運びとなったことで、偶然見かけた皆様にご挨拶に参った次第です」
「ご丁寧にありがとうございます。公開処刑もご覧になったようで」
「やっぱり、『責任』ですか?」
「はい。しかし、それは国民としての責任です。それだけで十分に観る理由足り得ますから」
「それにしても、すごい覚悟ですよ。国のために死んでくれとビルに言われたら、死ぬ覚悟なんですから。だから、王への直談判の時も問答無用で受け入れた。むしろ、『絶対にやり遂げてください』と言うほどに」
「そうなんだ……。どこからその気持ちが湧いてくるんですか? あ、単なる質問です。興味があるもので」
「私の家は国に一度救われたのです。私は没落下級貴族の生まれですが、我が領地はサウズ首都とセントラルの間に位置していたため、前国王時代に指定重要地域に定められ、多額の補助金を得ることができ、再興を果たせました。
しかし、そのことがまた驕りになり、我が一族の腐敗を再度招いてしまったのです。
私の意見だけでなく、主人の正論も全く聞く耳を持たなかったため、私が絶縁宣言をして今に至ります。
つまり、我が国に救済していただいた恩と、我が家がしでかした罪滅ぼし……でしょうか。絶縁したので、我が家等は不適当ですが……」
「……。ビルは、そこを粛清する予定だと話したみたいですが、本当にそれでいいんですか?」
「……」
「もちろんです。私からすれば、一族郎党公開処刑レベルだと思っていますから。そもそも、なぜ没落したのかを全く理解していないのです。一度失った領民の信頼は、二度と返ってこないのですから」
「……。それは一理ある。でも、二度と返ってこないとも限らない。今回の国家持続方針と公開処刑を堺に、もしかしたら何か変わろうとしているかもしれない。このサウズ首都と同じように。
よし、どうせ俺達がそこを通るんだ。挽回可能かどうか確かめてみるよ」
「そうだね。一度失った首都民の信頼は、今どうなっているかってことだからね」
「し、しかし……。皆様の手を煩わせるなど、お恥ずかしいことこの上が……。それに、主人も粛清を決め、話を進めているはずです」
「まぁ、そこはビルと俺達との仲で何とかしてもらうさ。一度決まった判断を覆すことは容易じゃないが、サーズとビルならそれができる。
権限の問題じゃない。十分な情報と条件が揃った時に、過去の判断が間違っていた、あるいは早計だったことを修正できる知能と勇気、何より責任を持っているからだ」
「なんていう領地?」
「セントミディ領です……。流石、おせっかいパーティーですね……。主人のお話し以上に感じました……。
それでは……申し遅れましたが、私『サラ・セントミディ』の愚かな実家『セントミディ家』を、どうかお救いください!」
「ああ、任せてくれ!」
サラさんは目の端に涙を浮かべながら、私達にお辞儀をした。
「あ、ありがとうございます! 僕も皆様のような立派な成人になりたいと思います!」
ビルさんの息子が、年齢以上の立派な宣言をして、姿勢を正した。
「大丈夫、サーズとビルを見ていれば自然となれるよ。俺は、おせっかいすぎるからなぁ。あんまり参考にしない方が良いよ。絶対苦労するから」
「そうそう。サイコパスも入ってるからね。あと、憧れだけじゃダメだから、色々な人を参考にして、自分で考えて、自分のやるべきことが何かを明確にして、進んだ方が良いんだよね。そうじゃないと、私みたいに後悔することになるから。今はしてないけど」
「は、はい! 参考にします!」
この子はきっと優秀な大人に育つ。そう思いながら、私達は手を振って別れた。
「あんな美人がこの辺をうろついて大丈夫なのかな? 今は大丈夫だと思うけど」
「どうやら、ビルの巡回のおかげで、サラさんも顔が広いみたいだから、何か不審なことが起こりそうなら、いつでも助けを呼べる状態になってるようだ。
念のため、俺も家まで監視しておくよ」
「あ、人妻属性に惹かれたでしょ!」
「そんなわけないだろ! 純粋な気持ちだよ!」
「人妻もののエロ漫画読んでたクセに!」
「そりゃあ読んでたけども! でも、それは人妻を籠絡させる手口を学んでいただけだから! もちろん、俺が使うわけじゃないぞ!」
「私もエロ漫画を読んでみたくなりました。一体、どんなことが描かれているのか……」
「たすくお兄ちゃんに描いてもらえばいいんだよ! 漫画描いたことあるって言ってたんだから!」
「わしも人間を勉強する上では必ず役に立つと思うし、たすくに対しても役立てられると思うぞ」
「……たすく、描いて……」
ここぞとばかりに性欲四天王が参戦してきて、いつもの流れになった。
たすくは、漫画を描くには一ページでもかなりの時間がかかるから、セントラルの変革が終わったら、と真面目に答えていた。
え、ホントに描くの……?
まぁ、たすくらしいか。
「面白かった!」「つまらん……」
「続きが気になる!」「次回作に期待!」
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