プロローグ
「本当に行くのかい、アダム?」
長老は、体が弱いにもかかわらず、杖をつきながらも孤児院の子供たちと共に出迎えに来てくれた。
「ええ、今まで本当にお世話になりました」
アダム・セイオンは丁寧な礼を返し、柔和な笑みに自信を乗せて、
「ですが、この恩は一生かかっても返せるような軽いものではないので、必ず帰ってきます!!」
自分にも言い聞かせるようにそう宣言した。
「ほんと~、アダムにぃ?」
「ぜったいだよ、ゆびきりゆびきり!!」
「ぼうけんのおはなし、かならずきかせてね~」
子供たちの無邪気な声援に一つ一つ答えてから、
「わかっておるとは思うが、ここのところ天使様と悪魔たちの争いがさらに激化しておるようじゃから……」
「わかってますよ。『無神論者です、は禁句』、『相手が天使様でも悪魔でも、自分が信じたものだけを信じて行動する』でしょう?耳にたこが出来るほど聞かされたので、体が知ってますよ」
そうして
まだ見ぬ世界に想いをはせ、期待と不安を胸に
「それじゃぁ、いってきま~~す!!」
青年の旅は幕を開ける。
このときはまだ、彼女らと出会うことなど、想像だにしていなかったのだが……