第0.5話 悪いことじゃない 2
「そろそろ泣き終わった?」
「…うん、ありがとう」
「じゃ、帰ろっか」
◇◆◇◆◇
「あれ、桐島君もこっち方面?」
「そう」
「…一緒に歩く?」
「え、あ、ああ」
強かった風が落ち着き、夕焼けもオレンジから赤々とした色に変わった頃、俺は桜瀬さんと家へと向かう道を歩いていた。
2人とも学校の近くで、同じ方面に家がある。
家同士の距離は近い、らしい。
「そうだ、涼珠から自己紹介のこと聞いたよ。けっこう面白いじゃん、桐島君」
「あ、聞いたんだ…」
「……なに?そんな不安そうな顔して。決して悪くは言われてないよ」
「…それでさ」
「ジュー・ウツヤーツ、好きなの?」
「え?」
俺、そんな物知りません。
「…あ、知らないのか。じゃあ、銃撃つゲームで何が好き?」
今なら、言える。
◇◆◇◆◇
帰宅後。
家の前の道路でゲットした桜瀬さんのLINEから挨拶が来ている。
『桜瀬さん)よろしくおねがいします』
『桐島)よろしく』
『桜瀬さん)フレンドID:nagi_0000』
『桜瀬さん)実はそれ前からやってたんだよね』
『桐島)おお』
『桜瀬さん)タイマンすっか』
『桐島)了解』
『どうも。聞こえてる?』
「あ、うん」
いきなりボイチャ。やっぱり、けっこう大胆だな。
『あ!ずるい』
「怪しいところは索敵しないと」
『…チーターめ』
「そんな見やすいコスチュームだと遠くからでも見え見えっすよ」
『可愛い女の子相手にひどい』
「ローなら回復優先でしょ」
案外タイマンしながら教えるのも楽しい。血の気の多いランクマッチで染まった頭をリラックスできるし、日頃のプレイの振り返りもできる。
『タイマンじゃなくて、バトロワやろ』
「いいよ」
『痛い…』
「ほら、回復」
『あ、レア宝箱!』
「扉の裏に敵いる、ここでしゃがんでて」
『罠だったのか…!』
「そういう戦法もあるからね」
『敵だ!』
「そんな見えるように動くから…ほら倒したよ」
『やった!!ソロ以外で初めて1位とれた!やっぱ私強すぎ』
「ほとんど俺が助けてたけどね…」
桜瀬さんは、下手ではないが自信がありすぎて、負け確盤面でも突っ込んでいく。助けるの、結構難しいんだぞ。
『ふふ、冗談。ありがと』
あざとい。
『ご飯だから抜けるね、ありがと』
「ありがとう、バイバイ」
『また明日ね』
『システム:nagiが退出しました』
━━━女の子、しかも桜瀬さんとゲーム。
1人でチームに残った俺は、椅子を回転させながらしみじみ思う。
あの時泣いたのも悪いことじゃなかった、と心のどこかで考えてしまう。
「『また明日ね』か……」
たった半日でずいぶんと仲良くなった気がする。
間違いなく桜瀬さんは、俺にとってたった1人の友達になった。
と思う。