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運命  作者: 葉っぱ
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新しい話を書いていきます!

5年間刑務所にいた。人を殺しかけてまったからだ。

今でもあの日のことは後悔しているが、悔やんでもしかたがない。

久しぶりに外の世界に出たが、自分の知っていた世の中から少し違った世界に変化していた。

コーヒーを買って飲んでみる。久しぶりに飲むその味はまさに至高だった。

辛く、長かった刑務所の生活、今日からまた、表の世界で生きるのだ。生まれ変わって、今日からまた良い人生を送るために頑張るのだと意気込んだ。


久しぶりに実家に着いたが、実家は変わっていなかった。強いて言うなら、庭に見たことのない花が植えられていた。両親は自分を快く迎えてくれるだろうか。自分の部屋はどうなっているだろうか。飼っていた犬は元気だろうか。さまざまな疑問が浮かぶ中、玄関のチャイムを鳴らした。


「はい。」

「はじめです。帰ってきました。」

「…そうか。今行くよ。」

久しぶりに聞く父の声は懐かしかった。両親は一度も面会には来なかったのだ。

玄関が開き、その先には父と思われる人物がいた。恐らく父ではあるが、なんというか、痩せた。別人のように痩せこけてしまっていた。

「父さん。どうしたの。そんなにやせちゃって。」

父は黙っていた。

「ごめん、父さん、やっぱり怒っているよね。本当にごめん。」

「お前のせいだ。」

「え。」

「お前のせいで俺の人生はダメになった。」

父は今まで自分に見せたことのないほど怖い顔をして俺に言った。

「お前のせいで、母さんは出ていった。俺も職を失ったんだ。今日食うものさえ困ってるんだ。全部お前のせいだ。お前さえいなければ。お前の顔なんて見たくない。帰ってこないでくれ。」

俺はなにも言い返せなかった。


帰る家がなくなってしまったから歩いた。

久しぶりにみる地元の雰囲気が懐かしかった。

そういえば小学生のころによく来た、中学校のころはここへ通った。今頃同級生達は何をしているのだろうか。まさか彼らは僕が刑務所に居たとは思わないだろう。そう思うと悔しくて笑えてきた。


夜になった。

とりあえず今晩を過ごすためにビジネスホテルを予約した。そのホテルは安価ではあったが、陰気臭くとても居心地の良いとは言えない場所だった。まぁ、刑務所よりかは良いが。1人で寝られるだけで幸せなことだ!俺にとっては城そのもの!

ロビーで寛いでいると一人の男がこちらをずっと見ていることに気がついた。なんだろう。自分になにか用があるのだろうか。はたまたどこかで出会ったことがあるとか。いや、あんなに身なりを整えている人と知り合いになった覚えはない。しばらくすると男は近づいてきた。

「あの、俺になにか用ですか。」

「あなた、不幸せそうですね。」

初対面で言われるには不自然すぎて腹が立った。

「あなたにはそう見えるんですか。」

「ええ。」

「失礼な方ですね。それを言いに来たのですか。」

「申し遅れました。私は幸福研究会という集団の会員です。本名は申し上げませんが、時の思想家と周囲からは言われております。どうぞよろしく。」

「なんですかその怪しい集団は、名前を言わないことも怪しい。もしや詐欺か。生憎俺今手持ちないですよ。」

「詐欺だなんてとんでもない。私たちはただ幸福について研究しているだけです。単刀直入に言うとね、あなた、うちの会員になりません?」

「お断りします。なんでそんな怪しいものに入会しなきゃいけないんですか。」

「最後まで話を聞いてくださいよ。悪いことばかりではありません。うちはね、寮完備なんです。入会したら寮に入ってもらいます。寮費はないです。食事も付いてきます。ただ、日中は会員のみなさんにはお仕事をしてもらいます。9時から17時まで、間1時間休憩です。ね、悪くないでしょう?」

「はぁ。」

はっきり言って悪くない条件ではあった。自分は今まさに住み込みで働ける職場が欲しかったのだ。しかし怪しい。それだけが心残りではあるが、この条件を了承してしまいそうな気持ちになった。

「なんだか気が向いてないって表情ですね。」

「ええ、まぁ。」

「怪しい。とか思ってるでしょう。」

「はい、正直に言うと怪しいと思っています。」

「私は今日出張でここにきました。明日の朝8時にタクシーを呼んでいます。今晩はどうするか考えてもらって、そして気が向いたら明日の朝、私の元へ来てください。あ、部屋の番号も伝えておきますね。204号室です。」

「わかりました。」


入会事態は決して悪い条件ではない。問題はその怪しさである。しかし、この話を見送ったとして、俺はこの先どうしていくのだろうか。刑務所から出てきたばかりの23歳を受け入れてくれる職場が果たしてあるのだろうか。あったとしても、それはまともな職場なのだろうか。どうせまともではないのならば、この話に乗るのもありだ。そもそも、俺は今、なにか職を選べる立場にないのかもしれない。それに、もしかしたら、本当に幸福について研究していて、俺も幸福になれるかもしれないじゃないか!

既に散々な人生を変えられるチャンスだと思いたい。

そう、考え至った。

そして俺は入会を決めた。

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