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帰宅

 蹂躙しろ、その一言で行われた虐殺はものの数分で決着した。


「私としては女性くらいは全員捕虜として拘束してもよかったと思うんですよね~さすがに全員皆殺しは勿体なかったのでは?」

「だから一人は残したろ」

「そうですけど……」


 今この村で生き残っている人間は先ほどのこの村の希望だった人間、魔法使いのミミと今もゴブリンチャンピオンと鍔迫り合いを続け動けないでいる冒険者のマクスだけだった。


「俺だって時間があるなら残してもいいとは思ったがあの強制クエストまで時間がない。はっきり言ってこれが今できる最善の一手だ」

「まあそうですね!」


 いつでも開ける画面からレフィー・アドラスのクエスト画面を開き見る。


 そこには残り時間の表示で十八時間ともうすでに二十四時間を過ぎてしまっていた。


「ここから拠点に帰るまでに七時間ちょい、そう考えると準備時間も含めて時間はあまりないですね」

「だろ?だから早く帰るためにも―――」

「あれを始末しないとですよね!」

「ああ」


 後ろで守るべき者たちが死んでいってなお助けることも動くこともできずにいる哀れな冒険者の元へ歩みを進める。


「さて、と―――悪いな、こちらも時間がないんだ、無粋なのは承知の上だがお前を殺す。お前に残された選択肢は二つ、その状況下で一か八かの大勝負にでるかもしくはこのまま背中を刺されるか、好きな方を選ばせてやる」


 近くにいたゴブリンからナイフを貰うとそれをマクスの背中へと突き立てる。

 

「クソ野郎ォッ!!絶対にぶっ殺してやるっ!!」


 目からは涙を流し、睨みつけるだけで人を殺してしまいそうなほどの鋭い眼光を直人なおとへ飛ばしながら苦虫を嚙み潰したよう顔をしているマクスに対し直人は淡々と一言――――……


「そうか」


 相手の返事を聞く間もなく直人はナイフに体重を乗せてマクスの背中へと深々と突き刺した。


「ぐふっ―――!!」


 マクスの口からどす黒い血があふれ出し剣を持つ両手の力も段々と抜けていく。


「終わりだ、とっとと死ね」


 誰が見ても致命傷、明らかに決着はついていた。


 ただ勝利の女神とは時としていたずらに微笑むもので……。


「……ま、まだだ……まだ、俺は!!」

「――――ッ!まじか……」


 ゆっくりと、ただ確実にゴブリンチャンピオンを押し返すマクス。どこにそのような力を隠していたのか、明らかな致命傷を受けているにも関わらずチャンピオンを押し返しながら立ち上がる。


「ぐううぅぅぅ――――……オラッ!!」

「グオォッ!!」


 そのままチャンピオンを押し返すと肩で息をしながらも直人へ鋭い剣先を突き立てる。


「ふぅ……ふぅ……お前だけは……刺し違えてでも!!」

「化け物め……」


 お互いが武器を構えなおし間合いを図る。


 直人の武器はリーチの短い鉄製のナイフ、それに比べマクスが持つ武器は瀕死の重傷とはいえ当たればただでは済まないロングソード、リーチも長く少しでもタイミングを見誤れば死んでしまうだろう状況だ。


 普通に戦えば負けることは確実だろうが今は状況的にも圧倒的にこちらが有利だ。ただただ時間を稼ぐだけで相手は死ぬだろうこの状況を利用しない手はない。


「死ねえええぇぇぇっ――――!!!」


 マクスの突進に合わせてこちらも距離を取るため後ろに飛んだその時だった。


「直人様ダメです!!!」


 レイシスの叫び声と共にマクスの足元に一つの魔法陣が浮かび上がる。


「なっ―――!?」

「直人様、すぐにその人間を殺してください!!」


 レイシスの話を聞いてすぐに手に持つナイフをマクスへと投げ飛ばしたがマクスの目の前に見えない壁でもあるかのように何もない空中ではじき返される。


「くっ!」


 次の瞬間には魔法陣が眩い光を放ち、マクスの姿はその場からは跡形もなく消え去っていた。


「直人様ごめんなさい~!!」


 そう言って謝りながらレイシスがこちらに飛んでくる。


「どういうことだ?」

「申し訳ございません。捕捉されちゃいました」

「誰に?」

「この世界を奪った神にです」

「―――ッ!」


 その話を聞いた直人はすぐに行動に移した。


 まず全軍に撤退命令と死体の回収を命令しすぐにこの場から離れるための準備を始めた。


「なあレイシス、向こうがこちらを捕捉した場合、どういう行動に出ると思う?」

「神は基本下界には干渉することはできません。がお告げや祝福といった形で仲介をすることはできます。私ならまず自分を信仰する国々の巫女的存在にここに脅威がいると告げ刺客を差し向けるでしょうね」

「だろうな、俺でもそうする。……とりあえずここにある死体全部を持って帰ることは無理か、残念だが今は優先すべきことが多すぎる、持てるだけ持って退却するぞ」


 せっかく殺した死体が勿体なくはあるが今刺客が送り込まれれば確実に不利な戦いになることはわかりきっているので死体の大半を諦めこの場から離れようとしているとレイシスが慌てて呼び止める。


「ちょちょちょっ、ちょっと待ってください、直人様!!」

「どうしたレイシス?今すぐ来るとは考えられないがそれでもここに長居はできないぞ」

「わ、わかってます!そうではなくてですね、ここにある宝の山、持って帰らないつもりですか?」


 レイシスは死体で築かれた山を指さしそう告げる。


「仕方ないだろう、ゴブリンもそこまで残ってはいないしこの数の死体を持って帰るのはさすがに骨が折れるぞ」

「わかってます。別に私は何も歩いて持って帰ろうって言いたいのではありません」

「じゃあ何だっていうんだよ」

「今直人様のステータス、見てもらえませんか?」

「――?わかった」


 言われるがままステータス画面を開いてみると見知らぬ項目がいくつか増えていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 名前:目黒直人 種族:ゴブリン? 年齢:エラー 職業:なし 状態:エ*ー

 称号:異世界の人間、女神の契約者、未来の王、蹂躙者、虐殺者


 存在レベル:6 SP:213


 HP(体力):6 MP(魔力) :0 STR(攻撃力):3

 DEF(防御力):1 INT(知力):30 DEX(器用):8

 AGI(素早さ):2 LUK(幸運):60


 スキル:精力増強 魅惑の瞳 感情鑑定 異種交配 剣客抜刀術


獲得可能スキル:身体能力強化Lv1 SP:15、ステータスアップLv1 SP:24、素早さ上昇(アジリティーアップ)Lv1 SP:12、亜空間倉庫Lv1 SP:100、存在変化メタモルフォーゼLv1 SP:50、 蒼穹探知スカイラーナーLvMAX SP:35、覇王覇気LvMAX SP:300


存在レベルが5を超えたため存在進化が可能 実行しますか Y/N

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「こりゃまた随分と色々増えているな……」


 SPだったり称号だったり存在レベルだってり、確認しなければならないことが山ほどあるがそれよりも時間もないためレイシスの考えを聞いてみる。


「それで?ステータスを見たがこれからどうすればいいんだ?」

「はい、まずSPを消費して獲得可能スキルから亜空間倉庫のスキルを獲得してくれませんか?」

「わかった」


 レイシスの言われるがまま亜空間倉庫のスキルをSPを消費して獲得すると毎回聞いている獲得通知が頭の中に流れる。


【目黒直人はスキル亜空間倉庫を獲得しました】


 獲得通知と同時にスキルの使用方法が頭の中に流れ込んでくる。


【亜空間倉庫:直径10M四方の円の範囲内にあるスキル使用者が指定したものを亜空間にしまい込む。亜空間内は時間が止まっており生き物は指定できない。また取り出すときも直径5M四方の円の範囲内に好きなように出し入れができる。容量は約四十畳である】


「こりゃまた便利なスキルだな……。それに四十畳ってことはツインルームのホテルの一室くらいか、Lv1表記だが結構な大きさだな」

「はい!さっそくそのスキルを使用してここにある死体をすべて回収しちゃいましょう!」


 右手を死体がある方に掲げてスキル発動を念じると死体の山の真下にブラックホールのような真っ黒な円が出来たかと思うとそのまま死体をすべて消し去ってしまった。


【亜空間に死体×634を獲得しました】


「634、結構いたんだな」

「そうですね~あ、あと外に持ち出した精兵だろう兵士たちの死体もあるはずなのでそれも回収しちゃいましょう!」

「そうだな、まあ何はともあれそれじゃあ今度こそ本当に撤退だ」

『ギギッ!!』


 激しく炎を上げながら燃え広がる村を背に直人たちはダンジョンへの帰路につくのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。評価の方はお任せいたしますので、よければもう一話見ていただければ幸いです。

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