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レフィー・アドラス(1)

 レイシスが満足するまで撫で続ける直人なおとはとりあえず空いた片方の手でまだ確認できていない機能などを確認し始めた。


「とりあえずダンジョンを広げてみたが一マス広めるごとに縦横二十メートルずつ好きな形で地形を増やせるようだな。こりゃあ自由度が高すぎてゲーマーの血が騒ぎそうだ」


 直人の発言通り一マス解放するごとにその地形を好きな形、大きさに弄ることができアリの巣状にも迷路設計にもでき工夫一つでダンジョンを大きく変えることができる。


「さっそく弄ってみますか?」

「まあそうだな、いつ次の侵入者が来るかもわかんねぇしな」


 そうして直人はしばらく建築ゲームでもやるかのように画面と向き合い地形を弄ったりDPを消費して罠や生活家具などを置くなど次の襲撃に備えるための準備をし始めた。


 それから数時間後……。


「まあこんなもんかね」


 そう言って直人は辺りを見渡してみた。


 直人のいる場所はもう先ほどまでの暗いジメジメとした洞窟などではなく新築の一軒家張りの木目調の綺麗な地面にテーブルにソファーと家具一式、さらにはキッチンや銭湯並みの大浴場を完備したリビング空間が出来上がっていた。


 どこからか某テレビ番組のビフォーアフターな音楽が聞こえてくるようだ。


「流石ですね、直人様!」


 直人の長時間の愛撫でに満足したのかホクホク顔で新しく出来上がった新居を飛び回っている。


「ダンジョンにこの部屋は似つかわしくはないがまあ機能性重視ってことでいいだろう。それにどうせここには俺ら以外立ち入ることはできないしな」

「そうですね!でも流石に驚きましたね~ダンジョン管理室の便利機能には!」

「まあそうだなぁ……」


 ダンジョン管理室とはこのダンジョンの心臓ともいえる場所、ダンジョンマスターを倒すかダンジョンマスターの許可を得た者だけが出入りすることができ、ここにいたるための壁や通路は破壊不能オブジェクトとなっており侵入などを防ぐことができる。 


 その他にも調べる内にわかったことだがどうもこのダンジョン内創造スキルの中にある王冠マークがダンジョン管理室と呼ばれる場所でダンジョンマスターの許可を得ずに侵入した場合侵入者の肉体が四散するようだ。


 なぜそんなことを知っているのかというと直人がダンジョン内創造で地形を弄っているとき罠の確認も兼ねてゴブリンを一匹王冠マークのある空間で魔物創造を使って召喚した。


 すると出てきた瞬間ゴブリンは四散し肉片となって弾け飛んでしまった。


「あれはびっくりしましたね……」

「あぁそうだな……」


 直人はそれがどういった経緯でそうなるのかを確認するためさらにそれを何度か試してみたが結果は同様、すべてせいを受けた瞬間に皆内側から爆発して死んでしまった。


 どうもダンジョンを侵入者から守るための救済処置のようだ。


 魔物創造スキルで出てきたゴブリンも一応直人が召喚したものだがどうも許可のプロセスを通さないと四散してしまうらしい。


「はあ……侵入不可エリアなのに侵入された時用の処置トラップなんていらんだろ……。まあこの王冠マークがダンジョン管理室を指すマークだったことを早めに気づけてよかったよ」

「そうですね。死んでいってゴブリンさんたちにはお礼を言わないといけないですね……」


 そういってレイシスは両手を合わせて合掌する。


「まあ唯一の救いは元々この空間にいた者は必然的に許可された状態になっているということか」

「そうですね、私もレーナさんもダンジョン化した瞬間四散していたら目も当てられないですからね……」

「まじでそれだ、ほんとそうなったら笑えなかったぞ……」


 本当にそうならなくてよかったと直人は深くため息をつく。


「まあ許可のやり方が単純で外の空間にいる者に直人様が許可の意思を示せば入ってこれるってシステムなだけよかったじゃないですか」

「まあそうだな……。―――ふぅ……さてと、嘆いていても仕方ねぇしとりあえずこれからのことを考えるか。ダンジョンの初期構成は完了したし次はやっぱり仲間の確保を優先すべきだよな」

「そうですね~魔物創造スキルは便利ではありますが数があってもあれじゃあ圧倒的な個が現れてしまったら一掃されちゃいますからね―――……」


 レイシスの発言通り魔物創造スキルで出てきたゴブリンはステータスは貧弱も貧弱、ステータスは驚異のオール一……。どうも魔物創造ではガチャ産とは違いステータスは十分の一となるようだ。その代わりDP一ポイントで五匹のゴブリンを召喚することができる。


 効率はいいが如何せんステータスが貧弱なため肉盾程度にしか使えない。


「やっぱガチャを引かないとだよな」

「そうですね~まあ一度召喚石が手に入れば量産可能ということだけでも知れたので良いとしましょう!」


 どうも魔物創造スキルは直人が獲得した召喚石を基準に創造することができ今の解放されているものはゴブリン、アーチャー、チャンピオンと三体の召喚が可能となっている。ただどれもステータスは召喚石の十分の一と低くなるため数は増やせても質が劣ってしまう。


「それで?ガチャは今何回引けるんだ?」

「あ、えっとちょっと待ってくださいね……」


 言ってレイシスは直人のスキルのような半透明の画面を目の前に出すとスワイプしながら確認を始めた。


「えっと確認した感じですと……――――そうですね、五回ほど引けますよ!」

「五回、か……。―――まあ引くか」

「了解です!ではガチャ台まで向かいましょう!」


 ガチャ台はダンジョン管理室のすぐ横の空間に設置されるように移動させた。もし召喚石ではなくそのままモンスターが出てきた時のための対応も兼ねているのと後は単純に邪魔だった。ガチャ台は実際とても大きく大人が五人横に並んでも眠れるほどのキングベットサイズなためとても場所を取ってしまい邪魔っだったので利便性も考えて横のエリアへと設置したのだ。


「さてと、じゃあさっそくガチャ引きますか」

「はいです!それじゃあ~いきますよ~!!」


 台座の周りを五個の光が回りだす。


 回るたびにルーレットのごとく光が発する色がころころと変わり一種のイルミネーションを見ているようだ。


 そうこうしているうちに排出されたレア度が決まったのか台座の回転がゆっくりと止まり色が固定される。


「白が一枚に赤が二枚、緑が一枚それと金が一枚、か。やっぱり運はいい方らしいな」

「そりゃあそうですよ!なんてったって直人様の幸運値は六十、この世界では圧倒的な数値なんですから!!」


 ふんすーという擬音が聞こえてきそうなほど息を荒げて興奮しているレイシス。どうもレイシスが言うように幸運値”だけ”はいいようだ。


「だけ、といいますが幸運値が高いとこのようにガチャの結果が良くなるだけでなく今直人様が欲しているものが出やすくなるんです!そう悲観しないでください!」

「あ~まあ別に悲観はしてねぇよ。無い能力を悲観するよりもある能力をどう活用するかを考える方が効率的ってもんだろ?」

「さすが直人様ですね!ではさっそく開封しちゃいましょう!」

「了解、じゃあまずは―――やっぱり白か」


 直人が白い光に触れると小さく輝き次に機械音声の獲得通知が聞こえてくる。


【目黒直人はゴブリン召喚石を×3獲得しました】


 なんとなく想像はついていたがやはり白色の光はゴブリン召喚石限定らしい。今のところすべてゴブリン召喚石しか排出されていないのを見るにあながち間違ってはいないのかもしれない。


「次は赤色、Dランクですね!はやくはやく!!」

「そう急かすなって……」


 レイシスに急かされ赤色の光を二つ連続で触ると再び眩い光と共に獲得通知が脳内に聞こえてくる。


【目黒直人はゴブリンチャンピオン召喚石を×2獲得しました】

【目黒直人はゴブリンマジシャン召喚石を×1獲得しました】

 

「うわぁ~!!マジシャン、マジシャンですよ直人様!!ついに魔法使いゲットですね!!」

「あ、ああ」


 なんでレイシスがこんなにゴブリンマジシャンに興奮しているのかわからないがとりあえず遠距離手段が増えたことは大きい、堀を作り魔法で迎撃するなどすれば大きな戦力になれるだろう。


「はあ~!!直人様~ぜひぜひ今、今すぐマジシャン、召喚しませんか!?」

「あ~いやとりあえず先にガチャの結果を見ないか?」

「あ、そ、そうですね!わかりました、私も好きなものは後に取っておく派ですしとりあえずガチャ結果、気になりますし確認しましょうか」


 なぜレイシスがこんなにもゴブリンマジシャンに執着しているのかはわからないがその件は置いといて残りのガチャ結果を確認する。


 Cランクである緑の光に触れると獲得通知が聞こえてきた。


【目黒直人はCランクスキル:剣客抜刀術を獲得しました】


「剣客、抜刀術……か」


 名前からして中二心をくすぐられるかっこいいスキルなのだが剣客”抜刀”術、抜刀……なんだよな……。


「これはまた……何と言いますか、えぇ――……」


 どうやらレイシスも直人と同じ考えらしい。


 抜刀はその名の通り刀を抜いて斬る居合術と呼ばれるものだ。つまり日本刀が無いと発動しないスキルと言いかえるべきだ。スキルの詳細説明を見ても―――


【剣客抜刀術:剣術が初心者であっても使用可能なスキル。剣客のごとく素早い抜刀術で敵を切り伏せる。クールタイム:五分、使用制限:スキル使用者が刀を持っている場合に限る】


「はあ……くそっ、ついてねぇな」

「死にスキル、ですね……で、ですがまだ落ち込む時じゃないですよ!まだ、まだAランク確定が残ってます!気を取り直してAランクのガチャ結果を確認しましょう!」

「はあ……そうだな、見てみるか」


 初の攻撃系スキルに喜んだのも束の間それが死にスキルだとわかってしまったため直人の気分は絶不調だ。


 肩を大きく竦め明らかに落ち込んでいる直人、萎え萎えで気乗りしないが最後に残ったAランク以上確定の金色に輝く光にあまり期待せずに触れてみる。


 するといきなり萎えた気分など吹き飛ばすほどの脳内に聞き覚えのある嫌なノイズ音が警報器でも鳴っているかのようにけたたましい音をあげて鳴り響く。


「うぐっ……!!」

「直人様!?――――ッ!?」


 ノイズ音が聞こえてきた次の瞬間、ガチャ台からより一層強い光を放ち視界を覆いつくす。


「わわっ――……!?」

「くっ……!」


 分にも満たない時が流れ辺りを確認しようと目を開けるよりも先にレイシスの声が耳に届いてきた。


「な、直人様、大丈夫ですか!?」


 いつの間にかノイズ音は聞こえなくなりその代わりにレイシスの心配する声が聞こえてくる。


 直人はゆっくり瞳を開けると目の前に見たこともない人物が立ち尽くしていた。


「な、直人様、この人は……」


 レイシスも気づいたようだ。目の前に佇む人物に警戒心を見せている。


「誰だ、お前……」


 目の前に立っている人物は長い金髪に両の目を布で覆っているにも関わらず女神であるレイシスにも劣らないと思えるほどの美貌と雪のように真っ白な肉体を持つ女性が立っていた。


 直人が彼女に何者なのかを問うと彼女ゆっくりと口を開く。


「私は―――レフィー、レフィー・アドラス」


 そう彼女が告げたとき直人の目の前に一つのウィンドウが起動する。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【レフィー・アドラス解放クエスト】

難易度:A 

クエスト内容:レフィー・アドラス、彼女が堕ちた理由を探りその原因を排除又は妨害する。

クエスト成功時:報酬としてレフィー・アドラスが《状態:忠誠》で味方になる。

クエスト失敗時:レフィー・アドラスが堕天、《状態:狂暴化(バーサク)》状態に陥り自身が死ぬまで殺戮の限りを尽くす。


 このクエストを完了するまでレフィー・アドラスは中立状態になります。また彼女のいる範囲内に堕天の神秘を放ち続けます。堕天の神秘を十分間浴びるごとに様々なバットステータスに陥りますので速やかな攻略をおススメします。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 こうして直人はレフィー・アドラスの強制クエストを始めることとなった。 

ここまで読んでくださりありがとうございます。評価の方はお任せいたしますので、よければもう一話見ていただければ幸いです。

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