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ゴティエ男爵は悪魔である。  作者: 大鎌マニア
4/4

④ゴティエの愛はしつこい。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

初心者で小説すら書いたことのないヘッポコでキャラ設定ブレブレでもう五体投地致します。

スミマセン。

それは賑やかな大通りの地下鉄へと続く道にいる3人の男女がいた。



(明日菜様・・・)


 ゴティエはすぐさま彼女を見つける事が出来た。

明日菜は背を向けているため表情は見えなかったが近寄って話し掛けるのをゴティエは躊躇った。


何故なら少し離れた場所で妙に陽気にはしゃぐ男女がいたから。

目を凝らして見れば女は男に縋り付いて何かグネグネとした動きのまま男に語っている。

男はその女と知り合いなのであろうと予測されるが脂下がった顏でお互い目を合わせながらニタニタと

くっちゃべっているのだ。


(明日菜様の知り合いだろうか?それにしては顏に品が・・・)


その男女から少し離れた所に対面して対照的に明日菜は微動だにしない。

ゴティエは眉間に皺を寄せた、出会って短い期間ではあるが明日菜が憔悴している姿など見せた事はない、

今まさに諦念の様な気配を彼女から感じたのだ。

その空気を無視するかの様な甲高い媚びた声が耳に障る。


「明日菜先輩・・・本当にスミマセンでしたぁ。」

「・・・え?」

「いや、唯ちゃん君が謝る必要は無いよ俺と明日菜との問題だから・・・ね?」

「でもぉ、私のせいで今日だってぇ遅くなっちゃったし。」

「仕事だからいいんだよ・・・唯ちゃんも悪気があった訳じゃないだろ?」

「もぉ、杉崎さん優し過ぎる・・・迷惑かけちゃったのに。」

女は目に涙を溜め「グスン」と鼻をすすった。


「明日菜、お前先輩なんだからキチンと指導しろよ!何故連絡が来なかったんだ!」

さっきの女に言ったセリフとは打って変わり咎める様に言葉を突き付けた。

「・・・申し訳ありません。」

「また!謝れば済むと思ってる!?甘く考えすぎだろ!?何回目だよコレ。」

「杉崎さぁん、止めてあげて?私が忘れてたんです!悪いのは私なのぉ」

この会話中でも男女は目と目を絡ませ腕を組み合って離れなかった。

明日菜を呼び捨てている杉崎との距離は随分離れていて会社での上下関係であろうかとも推測できるが

ゴティエの背中かからゾワゾワとせり上がる嫌悪感が彼らの縮図を瞬時に読み取れ吐き気を催した。


(まさかアレが明日菜様の望まれる半身となられる方だというのか?)


「明日菜さん!」

「は・・・い????うえっ!?ゴティエ君??」

「遅いので迎えに上がりました!今日は一体どうしたんですか?」

いつものニヒルな風体ではなく颯爽とした好青年を装い明日菜より背の高い姿で現れ、

その他の人物が見えていないかの様に無邪気に笑顔を振舞った。

「明日菜さん帰りましょう!鈴菜ちゃんが手料理をして待ってますよ?」

「あ、そう、だよね・・・ゴメンナサイ。」

重たい空気を打ち消す様に明日菜は顏を上げると、ゴティエはさり気なく手を繋いでその場を去ろうとしたがいやに突っかかる様な声で男は前を遮った。


「明日菜!誰だその男は!?」

「やだ~明日菜先輩浮気ぃ?!杉崎さんて恰好良いカレシがいる癖に!てかイケメンじゃないですかぁー!油断も隅もないですね~。」歪んだ口元の女の声が杉崎の横でひと際大きくきこえると揃って明日菜を糾弾する気満々で近寄って来ようとした。


「戯けが・・・。」明日菜の肩を掴もうとした瞬間にゴティエは杉崎の手を払い除けた。



「お前が糾弾するのはそちらの唯と言う女の方だ。」

「なっ!何だお前は?!見ず知らずの相手に対し失礼だぞ!」

「失礼なのはお前だ、そいつはサキュバスの様に狡猾な女だ・・・明日菜に失敗を押し付け毎回報告をわざと怠ってお前からの関心を寄せようとしている。矮小な脳味噌では判断もつかないのだな。」

「ち・・・・違うわよ!!私そんな事してない!嘘言わないでよっ」

「女・・・悪魔に誓って言えるのか?」

「はぁ?・・・何それキモっ!悪魔って。」女は醜悪な顔を歪めた。

「部外者は黙れ!!警察を呼ぶぞ!」

「警察?・・・悪魔に何の意味がある?呼んでみろ。」

寸分たりとも動かない感情に底知れぬ恐怖に男女はたじろいでしまう。


「ゴ・・・ゴティエ君・・・も、もういいよ帰りましょ。」

「なにが良いんです?この手の輩は視界が狭い上に己が正義を振り翳す下衆共ときた、ちゃんと言って聞かせないと後々明日菜さんに迷惑が掛かります悪魔より質悪い。」

『悪魔を人間如きが呼び止める』というのは厄介な事なのだとその身をもって体感すればいいとゴティエが嗤えば誰もが気圧される、本能的に逃げろと体が警鐘を鳴らしていた。


「い、い、言わせておけば!!明日菜もチャラチャラ若い男と浮気とは何だ!とんだ尻軽な女だった訳だなっ!!何度遊びに行っても妹が付いてくるし、ヤラセてもくれない糞ツマラナイ女なんかこっちから願い下げだ!!清々する!!」


「もう1度、言ってみろ人間。」

「な、何だよ・・・本当の事だろうが?」

「もう、1度、言え・・・人間。」

杉崎の眼前に差し迫ったゴティエの瞳が金色に鈍く光るのを見た瞬間であった。

初めて体から這い上がる恐怖にやっと気付いた。

「ひ!!!ヒィィャ~・・・バケモノェ・・・。」

「杉崎さん?どぉしたんですかぁ?えぇ~~~???」

杉崎はその場に腰を抜かし震えだした。

「あぁぁぁやめてくれぇ!!!ヒィィ虫!!虫がっ!!!」手で自分の身体をバンバンと叩きだす。

まるで幾千もの虫が見えているかの様にその手で何度も忙しなく頭を掻き毟り転がる。

「す、杉崎さんどうしちゃったの~!?きゃぁ!!」女は杉崎に激しく突き飛ばされ尻餅をついた。

「虫が!!!虫がぁぁぁ!!!ギャー!!!止めてくれぇぇえ!!!」

そのまま国道沿いを勢いよく走りだした。


「・・・あの人どうしたんだろう急にね?」


ゴティエは落ち着き払った顏でにこやかに明日菜の方を向いた、さも何もなかったかの様に・・・。

あっけにとられていた明日菜がやっと自分の置かれていた状況に気がついた。

「ご・・・ゴメンねゴティエ君、変な事に巻き込んで嫌な思いさせちゃったね。」

「いえ、気にしていませんよ。」

ニコリと口角だけを上げると先程のやり取りは何だったのかと思うくらいの温度差に驚くほど冷静だった。


杉崎はその夜、車道に飛び出し交通事故を引き起こしそのまま精神科へ引き渡される事になった。

彼は何を言っても「悪魔が、悪魔が!!」と呟き、小さな羽虫をみる度怯えて追い払うのだ。

会社の同僚は彼の精神状態が一夜で激変してしまった事に驚き、不可解な事件はストレスから来たのだろうかと噂していた。

後日談になるが同じくアルバイトをしていた明日菜の後輩の唯も急激に大人しくなり明日菜には全く近づかなくなった。

杉崎への恋慕があからさま過ぎたのもあり周囲と馴染めないまま居辛くなりその後退社した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ゴティエ君、背が急に伸びたね。」

「成長期なんです。」

(そんな訳あるか。)

夕刻まで賑やかだった公園は子供たちの声もなく今は静まり返っていた。

時折コツコツと帰宅を急ぐサラリーマンの姿だけが網越しに薄暗く見えるくらいだった。

「遅くなっちゃった鈴菜心配してるよね。」

「聡い娘御の事、連絡ぐらいしてくるでしょう。」

キィキィと揺れるブランコの影が街灯で砂場迄伸びていた。


(やはりアスモダイ様とは似て非なるな。)

彼女はあまりにも弱かった、体も心も何もかもが弱過ぎた・・・。

俯いたまま言葉が続かない姿をゴティエはアスモダイ様から程遠い彼女に失望と苛立ちを覚える。


(誰もが恐れ畏怖の念を抱かずにはいられなかった彼の御方は彼女の中にはもう・・・)


「いつも、こう!なんだよね、上手く立ち回れなくてぶつかって・・・みっともなくて。」

「・・・・・。」(そうですね、その通りです。)

「全然解決出来なくて・・・ゴティエ君に助けて貰っちゃう大人なんて、恥ずかしい。」

「・・・・・。」(確かにそうですね、俺が割って入って正解です。)

「情けなくて・・・自分で笑っちゃう・・・本当に嫌い・・・。」

両手で顏を覆うと明日菜の肩が静かに揺れた。

(彼女はこんな風に泣くのか、たった一人で、それでも誰にも助けを求めずに、ぶつかりながら。)

ゴティエは胸の奥底に沈み込む1枚の若葉を掬い上げる様に明日菜を抱いた。


「明日菜さん、俺はあなたを傷つけるあらゆるものからあなたを守れる自信があります。」

「ゴティエ・・・君?」

「俺は強いです、きっとこの世界の誰よりも、でもあなたにだけは弱い・・・弱くなってしまうんです。」

「な、・・・んで?」

顏を上げた明日菜は涙と鼻水と血流が顏に集まっていてグシャグシャだった。


「好きだからです。」

「えっ?」

「明日菜さんが好きです。」

「えええっ!?」

「そんな驚く所ですかね?」


ゴティエはハンカチを取り出し明日菜のぐちゃぐちゃなった顏を丁寧に拭き取ると、自分に向き直す様に確かめる様にゆっくりともう1度囁く、告げるだけの、明日菜に答えは求めていないかの様に。


「俺は、明日菜さんを愛しています。」


黒い瞳には煌々と月の色が浮かんでいる、真っ直ぐに明日菜を捉えた。

「あわ、情けない大人だし、頼りないし、好かれる要素がないよ??」

(俺の方が遥かに年上だが)

「それで?」

「あなた程の熱量で、同じ気持ちを返せないよ・・・。」

「だから・・・?」

「近い未来もっとゴティエ君に相応しい子が見つかるよ。」

「何故決めつけているのです?」

「そ、それは・・・。」

「未来も過去も俺の想いが全部貴女に向かうのが怖いのですか?」

「そんな・・・。」戸惑う明日菜の顏は闇に照らす赤い花の様に染まっている。

「それならここで俺をキチンと振って下さい、それでなければ俺はいつまでも貴女を待ってしまう。」


まさかこんな情熱的な告白を小さな彼(今は背が伸びて高いけれど)から受けるとはおもわなかった。

彼はどこか飄々としたニヒルな毒舌家、一途過ぎて行動は常軌を逸するがストイックな彼が真摯に向き合って思いを伝えてくれている。


受け取るにはそれ相応のものを返せれば良いのにと明日菜は憂いた。


「今まで相手を好きになる事が分かっていなかったかも知れないの。」

「杉崎という男性の事?」

「会社で告白されたまま返事がキチンと出来なくて・・・。」

(それでよくもあんな彼氏気取りが出来たものだ・・・馬鹿なのか?)

「家を教えてないのに遊びに来たり、食事に行こうって鈴菜も連れらて数回行ったんだけど。」

(あの男ストーカー候補たる素質があったか・・・鈴菜の機転で色々回避出来ていたんだろな。)

「お付き合いとか慣れなくて・・・会社で2人きりになるのも怖かったから。」

(煮え切らない態度に硬化していった勘違い男という訳か、やはり息の根を止めておくべきか。)

段々ゴティエの笑顔がペ●ーワイズみたいな顏になり散歩中の犬が一斉にギャン鳴きしだした。


「ゴティエ君、もし叶うなら・・・私があなたの気持ちに追いつけるまで待っててくれる?」


(あぁ・・・あなたはズルい人だ・・・追いかけて、追いかけてずっと背中を見ていたあの御方と同じ。)


「望む所だ。」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


追記


「ゴティエ、杉崎を退治してくれてありがとう。」

「おぉ小娘もやはり奴を危険視しておったのだな!どうだ?俺の素晴らしさに気付いたか?」

「どうかな~?でもお姉ちゃんには手を出さないでね?あなた邪悪過ぎるから!」

「んな!何とシュバ様のご本質を見抜かれるとは!この娘やはり侮れん!!」

クワっと使い魔のフッティが開眼する。

「フッティ五月蠅いな黙れ!・・・だがそれは明日菜の気持ち次第だな。」フフンと鼻で笑って見せているがシュヴァドラネベルド邸の花庭園にて長閑なアフタヌーンティーをしながら幸せそうに花を眺める明日菜達をそれはそれはゴティエ男爵は愛でていた。

明日菜の好きな花しか植えていないという溺愛ぶりに男爵邸の使用人達が皆先々代を思い返していた。










男爵邸の使用人達が明日菜の顏をみて皆ひれ伏すのはデフォなのですが、ゆくゆくは大騒ぎになって

悪魔大公爵及び5大貴族にまで話が及ぶのはまだ先の話として締めくくらせて頂きます。

ご拝読どうもアリ(´・ω・)(´_ _)ガト♪ございました

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