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ゴティエ男爵は悪魔である。  作者: 大鎌マニア
3/4

③ゴティエにしつこいは誉め言葉。

スイッチにハマっているゴティエはMHを満喫しております。

時々有名な赤い帽子の配管工事オジサンのゲームもやっております。「ヤッフー!!」

我が名は、悪魔世界である五大貴族の男爵『シュヴァドラネベルド・デ・ゴティエ』である。








「フッティ・・・妖精の種とは何だ?」




 うららかな午後の花が咲き乱れている。

シュヴァドラネベルド邸の庭園は悪魔貴族社会の中でも屈指の花庭園でありゴティエの先々代、つまり祖父が祖母の為だけに作り上げたイングリッシュガーデンに倣う誰もが溜息を零すくらいの眺望であり、悪魔とて1度は訪れたい場所であった。




「妖精の種?・・・はて?お聞きしたこともございませんね?」

春の庭園にそぐわない2人は怪訝な顔をして四阿で頭を抱えている。


「明日菜がこないだ『妖精の種』が欲しいと言っていたのだ。」

「悪魔世界にフェアリーは存在しませんからね拐かしますか?」

「馬鹿な!妖精王と争う気か?面倒くさい」

「では邪悪なピクシーならどうでしょうか?」

「・・・そもそも種から生まれるのか?」

「・・・はて?聞いた事もございませんね。」堂々巡りである。


 あれからゴティエは夕刻になると住宅団地の公園に姿を現し明日菜姉妹の下に足繫く通っていた。

市営住宅団地界隈の若いお母さん達やジョギング中の高齢者達とも親しくなり、従来よりコミュニケーション能力の高い悪魔である事を自負している為遺憾なくその力を発揮していた。

ゴティエの生業は基本、数多の生物を魅了し魂を摘むのが本来の姿であるから当然ではある。


「よぉ坊主、宿題はしたのか?」

「塾から戻ったとこだよ!爺さんその先のコンビニ前工事中だから気をつけな!」

「あいよ!有難うな!」

「ゴっちゃん遊ぼう!今日は崖のモンスター討伐だよ!」

「いいぞ、その代わりそれが終わったら翔の母上の約束事をキチンと守れよ?」

「了解~みんな呼んで来るから象の滑り台で待ってて~!!」

ゴティエは最初からここの住民だったかの様な馴染み方をしている。


「ゴっちゃんて・・・」

「何だ小娘!お前も遊びに来たのか?」

「ううん、友達の玲ちゃんと学童保育から帰った所だよ」

小さな勉強鞄を下げて鈴菜は帰宅後に友達と公園迄歩いて戻って来ていた。


「ゴティエはどこの小学校?」

「お前にそれを教えて俺に何の得があるんだ?」

「ううん、ちょっと聞いただけだよ。」

鈴菜は勘が鋭い猫の様な子供でゴティエとは線を引いたかの様に1歩離れた対応をしている。

明日菜とは似ても似つかない雰囲気の子供だった。


「お姉ちゃんは今日は遅くなるから会えないと思うよ?」

ゴティエの企みは鈴菜には丸わかりであった。

「何故だ?!ブラック企業の押し付けか!!」

「ブラック企業かは知らないよ、でも今日は遅くなるってお姉ちゃん言ってた。」

「何だと!その企業を脅せば良いのか!?教えろ何処にある!」

「脅しちゃダメだよ、逮捕されるよ?」

「俺がそんなヘマをする訳がないだろう!小娘。」

「ゴティエが捕まっても良いけどお姉ちゃんに迷惑かかるもん馬鹿なの?」

フッティは2人の会話を静かに聞いていた、どこで終わるのか面白過ぎて鼻が2倍になった。


「じゃあ、帰るからねバイバイ。」

「ちょ・・・・小娘!」

「私は鈴菜だよ!忙しいんだから邪魔しないで。」

小さいながら不穏を感じていた、自分なりに家庭を心配し守ろうとしていた上に警戒心を全開させる程にこの少年からは只ならぬ底の見えない得体の知れなさを感じていた。

きっと普通の子供にならこの様な態度は見せなかったであろう賢しい人間の類ではあった。


「ちっ!」ゴティエは小さくイラついた。

簡単に小娘と引き離せる方法などいくらでもあるがそれを良しとしなかったのには、

自分なりに矜持があったからである。

アスモダイ様と血を分けているやも知れない娘をこの手で屠るのも気が乗らなかった。


「妖精の種の事を聞いてみたかったのだがな・・・。」珍しく一つ溜息が漏れた。

「ゴっちゃんスイッチもってきたよ~!」

「んん?あぁ・・・何人連れて来てるんだ多いな!」

「ヨシヤ、ともちゃん、リアム、ようた、こうちゃん、幻の銀侍!」

「・・・・所々にキラネーム入ってるな、まぁいいが。」

男児8人各々滑り台に座り込み顏突き合わせながらゲームのファンファーレが高らかに鳴り響くと

討伐を開始する。


「そう言えばさっき鈴菜ちゃんいたよね?」

「ああ、小娘は忙しいから帰ったぞ?」

「明日菜姉ちゃんのお仕事遅いから夕飯作って待ってるんだよ。」

「へぇ~?小娘は料理できるのか。」10歳そこそこの癖にやるなとゴティエは感心していた。

「でも明日菜お姉ちゃん結婚するかも知れないって言ってたよね?」

「じゃあ鈴菜ちゃん一人どうするんだろう?」

「・・・・・・・・何・・・だと?」ゴティエはゲーム画面から顏を上げた。

「え?鈴菜ちゃん一人どうするんだろう?」

「違う!その前だ!!」

「明日菜姉ちゃん結婚するかも知れない?」

「アスモダ・・・・明日菜様には結婚を約束しておられる方がいるのか!?」

「うん、時々お家に遊びに来てるって言ってたよ?」


ゴティエにとって晴天の霹靂であった。

我が身にとってアスモダイ様が命であるならばその半身となられる方がこの世界に居て、知らない内に結ばれていた等、到底納得のいく話ではなくゴティエだけの話ではない悪魔大公爵さえも知り得ない所でこの様な世界の住人達とひっそりアスモダイ様が誰かと生涯を共にしていく事が我慢ならなかった。


「おのれ!人間め!我らからアスモダイ様を奪うだけでは飽き足らず心までをも奪う気か!!」

スイッチをフッティが受け取った。

「え?ゴっちゃんどうしたの?どこ行くの?」

「翔!俺はキチンと見極めなければならない!討伐はそこのフッティが代役する!またな!」

「大変申し訳ございません、主の代わりに私めが!」

「えぇ~~~???フッティ弱いんだもんなぁ。」


ゴティエは明日菜のオーラを辿って行った、簡単に探れば判明するが自分なりの行動が明日菜や鈴菜にとって人間界にどう影響をするのか配慮をして関与しているつもりだった。

影の潜む暗い光の射さない道は悪魔にとっては好都合なのだが明日菜が今望んでいる事とは違う様な気がしていた為人間に寄せてゴティエにとっての屈辱さえも問題ではなかった。

明日菜が望んでいる事を叶えたい、知りたい、受け止めたい、曲がりなりにも悪魔男爵として生涯仕えたいとさえ思っていた。




明日菜を見つける数分前迄は。



明日菜が欲しいと言ってたのはフェアリーテイルという細長く可愛い花の名前でした。

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