①ゴティエは諦めない。
初心者やらかし案件でスミマセン。
漫画描きだったので小説とは全く違う土俵入りです、いつかキャラも画像として挟めたらいいなぁ。
我が名は、悪魔世界である五大貴族の男爵『シュヴァドラネベルド・デ・ゴティエ』である。
己が命を賭してお仕えしている偉大なる御方は「アスモダイ様」
あの崇高なる御方の御姿が忽然と消えたのはもう300年前にも遡る。
どの世界におられるのか側近の者や大公爵等が血眼になって探し回っているがまだ見つからない。
「ふん、愚鈍で胡乱な愚民共に彼の方が御尊顔を見せるものか!!」
カウチに寝そべり乍悪態を一人ごちるとおもむろに使い魔であるゴブリンのフッティがその顔にそぐわない陽気な声を出した。
「シュバ様、私め噂では大悪魔様は人間界に降りたと聞いておりますが事実なのでしょうか?」
「フッティ!馬鹿も休み休み言え!あの様な矮小で穢れた世界に見目麗しき我が御方があらせられるなぞ考えたくもない!!」ゴティエはブルリと体を震わせ小さな自分の肩を抱いた。
『シュヴァドラネベルド・デ・ゴティエ』
五大貴族の内の一人、最年少ながらその裁量で男爵を襲爵した。
つぶらな黒目に漆黒の髪が耳元でクルクルと巻いて庇護欲をより一層搔き立てる見た目であるが、
その毒舌でメンタリティーをゴリゴリ削り完膚なきまで相手を闇に叩き込むのを好む実に厭らしい
趣味を持つのが特徴である。
「で、ですが大悪魔様はいつも予想だにしていない事象にも対応をし柔軟なお考えの方でしたので・・・やはり大公爵様方でも検討のつかない場所におられるのでは?と考えてしまうのです。」
「ふん、フッティのくせに核心をつくではないか!もし人間界にあの御方が相見えなければ、
お前の耳と口を引き裂き門扉に飾り立ててやるからな!」
「ひ・・・ひょぇ」
「さっさと行くぞ!付いてこい!!」
ゴティエはフットワークが物凄く軽い、気が向けば使い魔や従者をも伴わず深層の海溝にさえ一人で赴いてゆく・・・いわゆる馬鹿なのである。
「死ぬかと思った。」
小さな体が凄く縦長に伸びて熨斗紙みたいな姿でその時は戻って来た。
後に男爵家の従事者達を腹筋崩壊させフッティの鼻の穴が2倍になった要因となったという伝説となったのはご愛嬌である。
しかし今回はそんな生易しいモノでは済まないだろう、人間界は因縁の地であり悪魔達には決して踏み入れてはならない箝口令が敷かれて長きにわたって禁猟区なのである。
*****************************************
「おい!汚いではないか!フッティ!!」
「え?そうですか?私めはそんなに汚く感じませんが?」
「どの様な菌が我が身を蝕むか分からない色をしているではないかっ!!」
「お尻にお砂が付くだけですよ、潔癖症なんだからシュバ様は~」
「おい押すな!これ本当に椅子なのか?ぐわぁぁ!!!」
ゴティエは象を模った滑り台を綺麗に頭から下った。
悪魔達は小さな市営住宅団地の公園に降り立ったのだった。
「うぉぉぉ!!!!おでこが燃えたかと思っただろうが!!フッティ貴様の頭を消しゴムの様にこそぎ落としてやる!!そこに居直れ!!!」
怒髪天をついたゴティエはおもむろに象の鼻の滑り台を逆走しだすと声が掛かった。
「あの・・・君?危ないわよ?・・・さっき頭打ったでしょ?大丈夫?」
耳を擽る様な優しい声が脇の下から聞こえて来る。
「誰だ貴様ぁっ!む・・・後ろが見えん。」
「あ、ごめんね勝手に。」ゴティエの足は宙にあり滑り台から離れていた。
「フッティ!貴様何を笑っておるのだ!!助けろ!」
宙ぶらりんの足と体は誰かが後ろで自分を抱えているのに気付いたがすぐに地面に着地した。
「でもダメだよ?滑り台で暴れたり押したらケガするでしょ?気をつけてね。」
声の主はゴティエの目線へと直ぐに降りて来た。
「人間め!!何を偉そうに!!すぐ様後悔させてや・・・る・・・・から・・・・・・な・・・。」
「んん?人間?」
首を傾げながらその声の主はゴティエの目と交差した、柔らかな茶色の瞳の中にある優しい色は
秋の公園に溶け込む様に揺れ姿を現した。
「あ、あ、あ、あ、アスモダイ様っ!!!!!」
一瞬にしてゴティエは五体投地をした、フッティは象の頭頂部で土下座したまま微動だにしなかった顏を上げる事さえ使い魔には不敬となる。
「え?アスモ?何なに?誰?AIロボット?」
(何でやねん。)
「アスモダイ様!お会い出来僥倖にございます!シュヴァドラネベルド・デ・ゴティエにございます!」
「え?誰?人違いじゃないですか?」
五体投地したままゴティエは滂沱の涙を流し声の主の足元に跪く。
「アスモダイ様、アスモダイ様、この500年一瞬たりとも忘れた事等ございません!あなた様の力、魂、魔力、御姿、全て、全てアスモダイ様にお間違えございません!!」
涙で前が見えずゴティエは顏面一杯に落ち葉を付けたままようやく顏を上げた。
「お姉ちゃん、警察呼ぼうよ?この子変だよ?」
「鈴菜、大丈夫よ悪い子じゃないみたいだし、ほら親御さんも象の滑り台にいらっしゃるし?」
「えぇ?この子のお父さん顔色悪いねピッ●ロ大魔王みたいだよ?」
「コラ、失礼な事言ってはダメよ?」
「は~いゴメンなさい。」
「・・・・・・・お姉ちゃん?・・・だと?」
「え?」
ゴティエは首をグリンと小さな人間へと向け目をこれでもかというくらいにかっ開いた。
「う・・・・うん?わたしのお姉ちゃんだよ?」
「どうしたの?鈴菜?あなたのお友達だったの?」
「アスモダイ様・・・・・何故・・・・・・・」ゴティエは無念でならなかった。
眼前に現れたこの小人と共に居る御方はアスモダイ様に違いないのに自分は疎か全てを忘却されておられる事に体中の血液が流れ出てしまうくらいに狂おしく辛辣であった。
「もう日が暮れるから帰ろお姉ちゃん。」不穏な空気を感じた鈴菜は姉の手を握り引っ張た。
「そうね帰りましょ、君も気を付けてね。」
ゴティエは2人の人間が姿を消す迄公園の出口を恨めしく睨んでいた。
実はこれ自作オリジナル漫画のスピンオフなので次作の内容とちょっと時空列が被ります。
ちびキャラ小僧を男爵にしたかっただけなのですが思ったほど良く動く子で字に起こしても面白かったわ。