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最初で最後の


...


......!


...........「琳!」

「うあっ!」


目が覚めたと同時に、肺の中にあった空気が全て口から出ていく。


「はぁ...はぁ...」


まるで悪夢から目が覚める様な、生きた心地を感じない目覚めの最初に見えた光景は、元々パッチリな二重瞼を更に大きく見開いた妹が顔を覗き込んでいる景色のみだった。


「ちょっと急に驚かさないでよー」


冷たい廊下を背中に感じながら、ゆっくりと上半身だけを起こし、意識がなくなる直前までの記憶を辿る。


「俺...覚醒できないのか?」


「....」


最初に手繰り寄せた記憶の中から、一瞬にして1番鮮明に刻印された、莉乃の口から放たれた覚醒者資格の剥奪という言葉に、全身が重くなったような感覚に陥った。


「冗談なんかじゃないよな?本当にそう書いてあったのか莉乃?」


「...ごめん」


念の為の確認だったが、返された謝罪の言葉に再び心に穴が空いたような喪失感に陥る。


「...そっか、でもまぁ覚醒者資格が無くなったってだけで何もできないわけではないからな、装備品は身に付けられるし、色んな事はできるっちゃできる...プレイヤーって事はまだ認められているから、それが分かっただけでもいいや」


「...本当に大丈夫?」


「大丈夫ではないけど、今は落ち込んでる場合でもない、良いか莉乃?お前はこれから持てる力を全て使ってダンジョンを無理のない形で攻略していくんだ。今世界はゲートのせいで混乱しているから、お前みたいなダンジョンを攻略した経験のある覚醒者はかなり貴重な人材として重宝されるから絶対にそのチャンスは逃すなよ?」


「うん...わかったけど、琳はどうするの?」


「俺は当分何もできないし、やれる事がない。だから俺に構わずお前は自分の事に集中するんだ良いな?」


「わかった...」


そう言って琳は莉乃を置いてその場を後にした。



ーーそれから初めてのダンジョン攻略から1ヶ月が経った頃。


琳は自身の住んでいる隣町のショッピングモールに出現したダンジョンに入った。


ピロン

【ダンジョン:海辺の森への侵入を確認しました】


目の前視界に長方形の白くボヤやけた背景に黒色の文字で書かれたウィンドウが現れた。


「なるほどコレがみんなが言ってたシステムウインドウか」


【プレイヤー資格を確認しました。ステータスと叫び、自身のステータスを確認してください。】


初めて出現したポップアップが消えると次にステータスウィンドウの表示方法が記されたポップアップが現れ、その指示通りに声を上げた。


「ステータス」


ピロンッ


目の前には自身の名前と赤いHPバーと青いMPバーの様な物があり、続いて筋力や俊敏などと言った自身の身体能力値を数値化した欄もあった。そして画面の右上には莉乃から受けた説明と同じ種類のタブが幾つかあった。


そして何より目に入ったのは、自身のステータスの画面の名前の下に薄い灰色の文字で書かれていた非覚醒者の文字だった。


「非覚醒者...やっぱり無理なのか...」


わかってはいたものの、人から聞くのといざ自分で確認した時ではその言葉には違った重みがあり、気分は落ちたものの、両頬を強く叩いた琳。


結局覚醒者には慣れていないので、身体能力や魔法の様な物は特別な何かは何一つなく、一般人と何も変わっていなかった。


「まぁでも事前にトレーニングはいっぱいしたし、動体視力も鍛えてきた。後はどう言ったモンスターがでるかだ、へこたれるのはまだ早い、今日ようやく俺はスタート地点に立てたんだ...絶対にやりきって見せる...ふぅ」


深呼吸を何度かした後、ポケットに入れた持ち物と右手に握っていた長剣を確認し、刀身を鞘から出し、剣を構えながら目の前に広がる草原を歩き出す。


【警告:ダンジョン内モンスターがプレイヤーの侵入に気がつきました】


目の前に現れた赤いポップアップの警告と共に前方から現れたのは、亀の様な甲羅を背中に背負った頭がナメクジの様な四足歩行の生き物だった。


段々と距離を詰めていくと、微かに頭の上に何かが表示されているのが見えた琳は更にモンスターへと自分から近づいていくと、頭上に表示されていたのは黄色い文字で書かれたモンスターの名前だった。


『ヌジュガラ』と表記されたモンスターは、自身の頭上に集中している琳を見て、その見た目からは想像もつかない程の速度で、琳へと走り出した。


ザシュッ


がしかし真っ直ぐ走ってきたヌジュガラを琳は、軽く横に体をずらして避け、背にしたこちらに振り向こうとしたタイミングで後頭部に長剣を突き刺し、見事倒した。


「身体は問題なく動くし、剣の切れ味も悪くない」


それから徐々にヌジュガラの行動パターンを見極めていき、慣れる頃には2体を同時相手する事もできていった。


最初は草原だった場所から徐々に森へと変わっていき、最終的には大きめの池を見つけたところで足を止める琳。


【警告:前方強烈なマナによるの地盤の乱れを確認】


「警告?...ふぅ、一旦息を整えとこう」


表示された警告に対し、すぐ側の木陰に腰を下ろして休憩しつつ辺りを見渡していると。


【確認:隠し報酬クエストを確認】


「ん?隠し報酬?なんも見えないけど...」


【ユニークモンスター:隠れモリトを討伐せよ】


「隠れモリト...んー?あっちか?隠れって言うくらいだからどこかに身を潜んでるか、もしくは姿を消してるとかなのか?」


「まぁでもどちらにせよボスを先に倒さないとな」


そう言って討伐対象がいそうな場所の手前で警告が鳴った池の側を見渡す。


「特におかしな点はなさそうだな、地中からか、もしくは水中から来るって考えといた方がいい...」


木陰からゆっくりと前後左右どちらの方向へでも飛んでいけるように腰を落としながら池の方に向かって進んでいく。


そして歩き始めからわずか1分も経たないうちに、水面に泡沫が浮かび上がり、それが次第に大きくなりやがて水を被ったまま状態でそれは姿を現した。


【ボスモンスター:ラアルガラが姿を現しました】


見た目はナメクジだが、本来ないはずの腕の様な物が6本胴体の横から僅かにはみ出させ、ヌメヌメした体液を足元から出しながら、クネクネと岸に上がると、半透明色だった見た目が瞬く間に、黒と緑が絵の具の様に混ざった色合いとなった。


「見た目は少しナメクジで、大きさは1メートル程で...大きくはないのがかえって不気味を醸し出してる...さぁ、まずはどうくる?」


腰を落とし臨戦体制に入る琳を見て、ラアルガラは、口と思わしき物を大きく開けて、胸を膨張させた後、頭を下ろすと同時に琳に向けて液体を吐き出した。


ブベェッ!!


深緑色したその液体に、琳は見た目だけで毒だと決めつけ、咄嗟に体の重心を左側に寄せて、大きく左に跳んで液体を避けた。


受け身を取り即座に目線をボスに向けると再び口を大きく開いてた。


「受けに回ってたまるか!」


最初に吐いた液体は口を開いてからざっと体感3秒程で吐いていたので、口を開いた動作を見るや否やボスに向かって即座に走り出す。


ベェッ!!


「早っ!」

タンッ


3秒経過せずに吐かれた液体を見て、咄嗟に跳んで避けようとしたが、僅かに液体がかかっていたのか、足に猛烈な痛みを感じる琳。


「くっ!ズボンが溶けてるっ...」


ズボンと靴の間の隙間にかかった液体は皮膚を真っ赤に染め上げるほどで、その毒素の強さは履いていたズボンの穴を見てとれた。


そして足にかかった毒に気を取られている中、モゾモゾと動くラアルガラが視界に入り、よく見ると次の攻撃の準備していた。


「いっつ!...っ!」


火傷後の様な痛みを伴う足で必死に立ち上がったものの、立ち上がったと同時に放たれた液体に、再び倒れ込む様に横へと飛び込む。


ザザッ!

「ひとまず撤退!」


そういって強引に痛む足を引きずりながら、木々を上手い事使いラアルガラの液体攻撃をかわし続ける。


『インベントリ』


ギリギリラアルガラを視認できる距離まで逃げて隠れたのち、木の上に登ってインベントリを開く。


目当ての物を見つけると、真っ直ぐにウィンドウに手を突っ込み、中からコルク栓のついた試験管の様なガラス容器に緑色の液体の入った下級ポーションを取り、容器の蓋を開けて半分飲んで、半分は足の傷口にかける。


ジュゥッ!!


「んっ...ちょっと痛気持ちいな」


甘い果実の様な飲みごたえに全身がイキイキとし始め、傷口にかけたポーションは傷口と触れあった途端に蒸発する様に煙を立てて消え、同時に傷口も一つ残らず消していた。


「これで莉乃からもらったポーションも残り1つ...」


そういって空になった容器を丁度真下まで来ていたラアルガラの背後に向けて投げる。


パリンッ

ズズッ!ペシンッ!


ガラス瓶が破片になった音にラアルガラは即座に反応し、振り向くと同時に自身の首を破片に向けて叩きつけた。


ザスッ!!

グサッ!


「へっ!奇襲成功!」


そんな一瞬の隙に琳は木から飛び降り、頭上から背中と、胸のあたりを突き刺し、距離を取った。


ウプッ

ブシャッ


「討ち取ったりぃ!」


見慣れた液体を吐き出くモーションに、琳は右斜めに走り出し、吐き出そうとした瞬間に右にステップすると見せかけると、まんまと騙されたラアルガラは飛び込むであろう位置を先読みして液体を吐きかけたが、琳に反対側に避けられ、懐まで入り込まれる。


腰を深く落としながら懐に入り込み、腹胸頭の順番で剣を突き刺し、距離を再びとる。


「ダメージ食らってんのか、食らってないのかだけ分かりやすくしてくんないかね...」


都度5回の突きを放ったものの、切り口はあるが流血もなければ、動きからキレがなくなってる訳でもないため、少し心配になりはじめる。


「覚醒してたらこんな奴ちょちょいのちょいなんだろうな〜」


覚醒できない事を知ったと同時に、しないと誓った筈の無いものねだりを思わず口にしてしまうが、すぐさま目の前の敵の動きに全神経を研ぎ澄ませる。


ググググッ


胸をパンパンに膨らませ、それを徐々に喉元まで込み上げさせているのを見ていると、いきなり顔を左に向けた。


ブシュウウウ!!

「あぶねっ!」


薙ぎ払うように顔を払うと同時に、液体を今までのように無造作に吐くのではなく、ジェット噴射の様に細長ぐ勢いのある吐き方に、驚きながら屈んで避ける。


回避して喜ぶ暇もなく、2回目のジョット噴射が今度は上から下へと縦に振り下ろされた。


「ふんぐっ!」

ドサッ


それもギリギリで避け、再び攻撃が来るであろうと予測し、すぐに起き上がり距離を詰めていくとーー


ズズズズズッ


琳を正面に見据えて、後退しながら背中から2本の黒色の触手を伸ばした。


シュインッ

ストンッ


まるで距離を取ろうとしてる様に見えた琳は更に速度を走りからダッシュに速度を変え、加えて伸ばされた一本の触手を斬り落とすと。


ブシュッ!

「うおっ!」


触手を切り落とした直後に放たれた液体を見て、寸前の所で真横にあった木に隠れ身を守った。


「やべぇ、ナメクジの癖にバック走早ぇー、ふぅ、なんとかして距離を縮めないと」


そう言いながら琳はいまだに噴出を続ける液体のかかっている木の方を見やると。


ミシミシッバキィッ!!


液体がかかっていた木の幹の部分が徐々に溶けていき、最終的には横幅80cm程の木が音を立てて倒れて行った。


その一連の瞬間を見て、琳は何かを思いついたのか卑しい笑みを浮かべた。


ブシャッ!


ブシュウッ!!


プシュンッ!!


拡散、一点集中、連続と様々なバリエーションで液体を吐き続けるも、全て木の後ろに隠れる事で回避し続けられ、それでも尚吐き続けること数分。


(そろそろだな...)


「おいノロマ!こっちだ!」


液体をチャージしてる隙に隠れて潜んでいた琳は、身を隠していた木の後ろから身体を出すと、そのままラアルガラに向かって走り出した。


そんなこちらに気が付くやいなや、大量の液体を連続で小分けにして吐いてくるも、全て木々を使いこなし全て避け、やがて目の鼻の先までの距離まで近付いた辺りで剣を構える。


バシャッ!!!


腕を伸ばすと当たる程の距離まで近づいてラアルガラがとった行動は、自分を中心とした半径1メートルの周りに液体を振り撒いた。


「ここに来てそんな事するとは思ってなかったけど...残念っ!」


そう言って琳は液体を振り撒こうとする寸前の動きを見て、急ブレーキで止まり、後ろへとバックステップした。


そして液体が地面へに四散した瞬間に、今度は更に今まで隠していた更に早いスピードで懐へと距離を詰めーー


ザスッ!!

ジュシュッ!!


「これでどうだっ...」

グッ!


一撃二撃目と流れる動作で斬りかかり、とどめと言わんばかりに勢いで三撃目を放とうと、二撃目で体を貫いた剣を引き抜こうとすると、まるで中から刀身を持たれているかの様に、ラアルガラの体から剣を抜け出せなくなってしまった。


「くそっ、剣がねぇと...」


剣を引き抜こうとする琳を見て、表情などは一切ないがまるでチェックメイトとでも言わんばかりに口の中に膨大な量の液体を溜め、一気に放出しようとした瞬間。


グッ!バキバキバキバキッ

ドォスンッ!!!


琳の背後の頭上から突如降りかかってきた巨大な衝撃に吐き出そうした液体が思わぬ形で口から溢れながら、降りかかってきた衝撃の正体によって地面に倒れるラアルガラ。


そしてそれを見て、琳は先ほどの衝撃で胴体から飛び抜けた剣を拾い上げながら、卑しい笑みを再び表情に浮かべた。


「作戦大成功〜、そしてもういっぱーつ!」

ドスンッ!!!


まるで琳の言葉に反応する様に、左側に立っていた4メートル程の高さもある木が音を立てて、それも丁度ラアルガラのいる位置へと倒れ、最初に倒れた木とクロスになって重なり合った。


「念には念っだ!」

グッ...ドスンッ!


そのまま近くにある深緑色の液体がかかった木の幹を見つけ剣で軽く叩くと、まるで豆腐を切っている様にするりと刀身が木の幹を通り過ぎ、少し力を入れて押すと瞬く間にラアルガラの方へと木が倒れて行った。


そして同じ動作をもう一度行い、琳は最初にボスを確認した位置へと急足で向かって行った。


(急げ急げ〜、ダンジョンの崩壊が始まる前にユニークモンスターをたおさないと!)


最初にユニークモンスターのポップアップが出てきた所に到着し、浜辺の近くを歩き回りながら探索していると...


「ん?なんだあれ?」


海と森の真ん中に位置する砂浜の50メートル先にリスぐらいの大きさの青い毛むくじゃらの生物が見え、じっくり目を凝らす。


【ユニークモンスター:隠れモリト】


「おぉっ!あいつがモリトって奴か!」


静かに森の方へと歩き出し、草むらや木々を利用しながら徐々にモリトへと近づく琳。


(隠れモリトって名前だから隠れてるもんだと思ってたけど、なんだか油断してるみたいだな)


浜辺に落ちている赤い果実の様なものをほうばるのに必死で、背後から徐々に近づいている琳には気づいていない様子にいよいよ腕を伸ばすと捕まえられる位置まで近づき、一呼吸入れて腕を素早く伸ばした。


「ビィ!!」

甲高い声と共に、その場でジャンプして琳の不意打ちを躱したモリト。


そして着地して直ぐに両膝を砂浜についていた琳の頭を台にし、ジャンプしてそのまま森の中へと毛むくじゃらの胴体から細長い鳥の様な2本脚を剥き出しにして物凄い速度で走り出した。


「くそっ!まてっ!」


逃すまいと即座に立ち上がり後を追いかけるも、犬の全力疾走とほぼ同じレベルの足の速さで森の中へと消えていき、直ぐに姿を見失った。


「ひぇ〜、早すぎるでしょさすがに...どうやってあの速度に追いつくんだよ〜」


それから森の中にいるヌジュガラを倒しつつ、モリトを捜索していると、木の枝の上にある青いモジャモジャに視線に入り、凝視する。


【ユニークモンスター:モリト】


「あんなとこに隠れてたのか...周りがほとんど緑と茶色しかないから目に入ったけど、あれは見落とすぞ普通だったら...」


そう文句を言いつつも、今度は逃げられない様に思考を張りめぐらせて捕縛する方法を考える。


そして思いついたのが、枝の部分を叩き切って、身動きの取れない空中を落下してきた所を鷲掴みで捕縛するといった、10秒あれば思いつく至極シンプルな技だった。


「っし、これであとは息を殺して」

ジュゥゥゥゥッ


「ん?」


まさにモリトが隠れているつもりの木の枝に向かってジャンプしようと膝を曲げると、突然木の幹から何かが溶けるような音、まるで熱したフライパンに食材を入れた時の音が聞こえ、音のなっている方へと目をやると、深緑色の液体が幹全体にかかっていた。


それを見た琳はすぐさま液体がかかった位置の対面方向に目を向けると、見慣れた姿がそこにはあった。


「ビビッ!ビィ!!」


「なっ...ちっ、空気読めよクソボス」


溶ける木の幹の音に反応して起き上がってしまったモリトが逃げていき、代わりにラアルガラがこちらへと体をうねらせながら歩いてきた。


「見た感じよろよろと歩いてるからダメージは通ってるな...」


辺りを見渡し、木を倒し当て易そうな場所を探す。


「あそこ辺りの木が1番いい感じに密集しているな」


少しだけ開けた場所に少し太めの木が4本くらい各方向に立っている場所を目視で発見し、すぐさまそちらへと誘導しようと試みる。


そしてすぐさま木を遮蔽物として利用しながら、真っ直ぐ走り出すと瞬く間に液体を吐きかけられるも、少し違和感を感じた琳は木の後ろに隠れてラアルガラの様子を見た。


「追いかけてこない...もしかして誘われてるって学習したのか?」


そんな琳の予想は見事的中し、いくら姿を見せて挑発してもその場から動くことはなくなり、液体も一定の範囲まで近づかない限りは放つ事も無くなった。


(あーちくしょー、あいつ自分のこと理解し過ぎだろ...ボスを討伐したいのはあくまで俺側だから、俺から仕掛けない限り自分から動く事もないってか...女を落としにいってるわけじゃねぇのに、感覚はそれなのが気にくわねぇ...けど逆にそれが燃えるな)


ああ見えて、一丁前に知能がある事に少しばかりの理不尽を感じながらも、長年培ってきたゲーマー魂に若干火が灯り、攻略の手立てを考える。


「じゃあ〜、攻めてこないならどこまで攻めてこないんだ?」


そう言って琳は真っ直ぐとラアルガラがいた方向とは逆の方向、モリトが逃げていった方向に走り出した。


「一生そこにいてろばーか!」


中指を立てながら煽りプレイをかましても、姿が見えなくなるまで結局動かなかったラアルガラをおいて、緊張の糸は解さずモリトの捜索を再開する。


「全然見つかんねー、そもそもこの空間自体何処まで広がってんだって話だよ...」


ブンッ

「うぉっ、なんだ!」


突然何かに頭をぶつけた後、優しく跳ね返され前を見るとそこには何もなく今まで変わらない森の景色が広がっていた。


「もしかして...」


そう言って右手を前に出すと、見えない何かに触れている感触がして、少し押すと優しい力で押し返された。


「無限に広がってるってわけじゃないんだな...どれどれ?」


今度は先程のように優しく手を前に出すのではなく、殴る勢いで手を勢いよく突き出すとーー


バチンッ!!

「痛ぁ!!!」


今までの様に優しく跳ね返すでもなく、その先に触れられたでもなく、与えた衝撃の強さ分の力で押し返されただけでなく、触れた先に電流を流し込まれ、痛みのあまり尻もちをついた琳。


「文字通りバチが当たるんだな...ははっ、もう辞めとこ」


ダンジョン内も無限にエリアが広がっていないという事が分かり、おまけにモリトがいない事が分かった上に完全に見失った為、来た道を戻る事にし、モリトの討伐は諦め、ラアルガラの討伐に気持ちを切り替える事にした琳。


「さぁさぁさぁ、どうやって倒せば良いのかしらねぇ」


50メートル離れたラアルガラを木の後ろから見据え、徐々に距離を詰めていく。


(向こうからは攻めてこない上に、近づいたら液体を吐きかけてくる、吐液のバリエーションはこれ以上ないと考えて、吐く前のモーションは全て完璧、拡散は上半身を捻り、レーザーの様な切れ味のある一点集中は深い溜め、連続での吐液は切り分ける様に溜めて、自分を取り囲んで吐く時は上を向く...良し。後は実践だけ!)


「すぅーーーーっふぅ」


肩には力を入れず、ゆっくりと心臓の音に合わせて深呼吸をし、もたれ掛かっていた木から背中を離してラアルガラを見据えるとーー


ダッ!

ザッザッザッザッ!


柔らかい土の上に落ちている枯れ葉を踏みつける音に、ラアルガラも反応して琳を正面に見据え、上半身を上下に揺らし始める。


(液体を生成してるのか?とりあえず今は回避に全集中だ)


そして距離も40m、30m、20mと近づくに連れ、互いの緊張感が最高にまで達した瞬間ーー


ブシャッ!!


真っ直ぐ飛ばされた最初の液体を避け、木の後ろに隠れてポケットに手を入れる琳。


そして液体による攻撃が止んだ後、再び走り出すとーー


グッ


拡散攻撃をする前の上半身を捻る動作を確認した後、琳は前にではなくラアルガラが捻った上半身の逆方法に向かって真っ直ぐ走り出した。


(軟体生物だから捻れる範囲に限界はないと思うけど、今までの拡散を見た感じここの位置ぐらいで液体が切れる...)


ブヘッ!!


そして液体が吐かれると、見事予想通りの範囲内に液体を吐きかけ、ちょうどのタイミングで範囲の外にいた琳はギリギリ液体が届かなかった。


そのまま勢いは殺さず、引き続き真っ直ぐ走り続け距離を残り10mほどの位置にまで縮める。


ゥグッ!


(上向き)

バッ!


自身の周りに液体を吐こうと上を向いたラアルガラに、足を止め後ろへとステップバックする琳に対し、ラアルガラは頭上に吐きながら顔を下ろした。


(まずい!俺の動作を見てから咄嗟の判断で前に吐いてきやがった!)


幸いステップで後ろに跳んでいた為、こちら側に吐いてきたと認識してから、すぐに真左へとステップできる余裕があった為難なく躱す。


ブヘェッ!


避けて終わりだと思っていた液体は、止まる事なく流れ続けており、次の瞬間更に勢いよくラアルガラの口から液体が放出されると同時に、口を琳のいる方向へと向けてきた。


「なっ!吐き続けたままかよ!」


右から迫ってくる液体を見るなり、腰にあったロープを力強く自分の位置に引きくと、ロープを放り捨てて迫ってくる液体から逃げ始める。


やがてラアルガラが元いた位置より180度後ろ側まで逃げ続けた所で、琳は迫ってくる影に気が付き、足を止める。


「おいっ!日本語通じるからわかんないけど、頭、危ないよ」

ドスンッ!


琳の言葉の直後、ラアルガラの頭上に本日4本目の木が倒れ落ちた。


(まさかここで唯一ポッケに入れてあったロープが役に立つなんて最高だぜ)


液体が迫ってきた際、琳はラアルガラへと距離を縮めた際に、液体攻撃から盾に使っていた木に絡めていたロープを力強く引っ張り、木が倒れてくるのをずっと待っていた。


作戦は見事成功し、木の下に埋もれて倒れているラアルガラの元へと駆け寄る。


「お願いだから倒れてくれよ...」


うつ伏せになっている後頭部目掛け、剣を突き刺し様子を見る。


「すまないけど、念には念を」


そう言って突き刺した剣を引き抜き、力いっぱい後頭部目掛けて叩き切った。


ピロンッ

【ボスモンスター:ラアルガラの討伐に成功】


ピロンッ

【10分後にダンジョンが崩壊します、プレイヤーは速やかにダンジョン内から離脱してください】


「はっ...やったぁああああ!!」


手に持っていた剣を突き上げ、込み上げてくる達成感と共に声高らかに喜びを叫ぶ。


「よぉし!!覚醒してなくてもダンジョンは攻略できる事が証明できた!!やっぱ希望はまだあったんだな!アイテムと装備品があれば多分なんとかできるぞこれは!」


そして喜んでいるのも束の間、ダンジョン内の空にヒビが入り、地面が揺れ、崩壊の合図と共に琳は足早にダンジョンの出口を探しているとーー


「んあ!アイツは!」


もはや見慣れた青色の毛むくじゃらのモンスター、モリトが崩壊するダンジョン内をバタバタとしながら逃げていたのを背後から見つけた琳。


「ん?あれはダンジョンの出口...まさかアイツダンジョンの外に逃げようとしてんのか!?」


モリトの逃げていく方向を予測した琳はフルスピードでダンジョンの外に向かって逃げいているモリトの背中を追いかける。


(全速力で逃げてない事が幸い、後もうちょっとで追いつく...)


そして後もう少しで剣で斬れる範囲内の間合いまで距離を詰めた時、モリトは突如琳のちょうど目線と同じ高さまでジャンプし、その直後ーー


ブォッ!!

「ビビビ!!!」


モリトの毛むくじゃらの全身が突如発火し、次の瞬間炎が更に吹き荒れた後、真っ黒焦げになった見るも無惨なモリトが地面に倒れた。


*「ダンジョンがあるって聞いたから遊びに来たけど、まさか攻略の直前だったとはな...相変わらずついてねーし、意味のわからんモンスターには急に襲われるし、なんだってんだ?」


獲物を突如横槍で取られ、普段なら思いっきりブチギレている所だった琳であったが、出口から現れた人影の声に、聞き覚えがあり、頭の中に浮かび上がったその人物ではない事を祈ったがーー


「あぁ?」


「くそっ」


坊主頭に、がっしりとした体格、耳には校則で禁止されているはずのピアスと、口にはタバコを咥えながら、ガラの悪い態度で制服を着たまま現れたのはクラスメイトの石丸丈だった。


「なんで覚醒してねぇテメェがダンジョンなんかにいんだ?」


「...暇で遊びに来ただけ」


そのまま丈の横を通り抜けようとした瞬間、腕を掴まれた。


「まだ話の途中だろ?ここで何してたって聞いてんだよ」


「は?俺が何してようがお前に関係あんのか?」


「....ちっ」

ドスッ!!


「ぐはぁっ!!」


琳の言葉に口に咥えていたタバコを地面に投げ捨て、舌打ちと共に拳を琳の腹部に減り込ませる丈。


(見えなかったし...おっも....なんだ息がしにくい...)

「ぅぐっ...くっ...」


「いちいちイラつく喋り方だなお前?俺の事煽んねぇと気がすまねぇのか?」


「くっ...お前こそ...俺に構わねぇと気が済まねぇのか?」


琳の言葉に目を見開き、再び殴ろうとするも、動きを止めて、なんとか堪えた丈は、四つん這いに倒れて丈を見上げている琳の髪を掴んだ。


「まぁ正直別に非覚醒者のお前に用はねぇ、用があんのは報酬だ、ここクリアしたのお前だろ?さっさと報酬出せ」


「ふっ...高三にもなってカツアゲかよ...つくづくダサいよな..お前って...ははっ...だから柔道も中途半端な結果な..んだよ」


必死に力を振り絞って出した言葉は見事、丈の沸点を振り切り、今度は2発の拳が顔にめり込んだ。


(やっば...流石にこれ以上は死ぬ...)

「ぶふっ...こ..れ以上は..死..ぬ」


「だったらさっさとクリア報酬寄越せカス」


「ダンジョン..から..でないと...貰えない..から..せめて」


「あぁ?ダンジョンからでねぇと貰えないだと?...テメェ嘘ついたら本気で殺すぞ?」


「...ほんと..だ」


片方の目はほとんど見えなく、鼻から下の感覚も麻痺しているのかなくなっており、ただ血の味と、腹部の激痛だけを感じながら、死に物狂いで言葉を口にする琳に、丈は琳の髪を掴んで地面に引きずり始める。


そしてそろそろ出口に出ようとした時だったーー


「なぁ、やっぱお前死んだ方がいいわ」


「...は?....報酬..は」


「報酬?ははっ、よくよく考えたらダンジョンの報酬より、お前が死んだ方が俺ぁ何倍嬉しいってのに気がつけよ?ダンジョン内だったら誰がどうやって殺されても、証拠は残んねぇだろ?」


そう言って薄気味悪い笑みを浮かべた後、琳の右腕を軽々と持ち上げて、まるで人形の様に易々と琳を出口がある草原とは逆の森に投げ飛ばした。


「じゃあな、生きて出られる様に祈っとくぜ?」


「ゲホッ...くそ..が」


地面這いつくばりながら、なんとか出口へと向かおうとするも、それを嬉々とした表情で見ていた丈は腕を前に出した。


「もう少し俺が脚色してやるよ」


そう言って丈は手のひらから噴き出た炎を琳の側にあった木々に飛ばし発火させ、瞬く間に琳を中心にした火の海を作り出した。


「ど...こまでも、腐ってんな...へっ」


「あん?何笑ってんだ?」


「お前ってほんっと...惨めだよな....佑衣の事が好きだからって..仲のいい俺に嫉妬してよぉ....マジで...ダセェ....だから佑衣に..はぁ...見向きもされねぇんだよ...ははっ...唯一できることは弱いものいじめって...」


「...」

ボォウッ


片目は真っ青に腫れ上がり、前歯は折れ、両方の穴からは鼻血が、息を深く吸おうとするとあばらが針で刺されたような痛みを伴う、重傷とも言える状態でも尚、辞めない口撃、それも丈にとって1番触れては触れて欲しくないだろうと、一応気を使って長年黙っていた秘密をバラした上に、コケにした琳に対し、額に血管を浮かべ表情を殺しながら手に先程より強力な炎を作り出した丈。


「...ゴミよりひでぇよオメェの人生...ゴミですら...ゴミになるまえは誰かの役に...グアアッ!!!」


そんな見せつける様に宿した炎に琳は臆することなく引き続き口撃をしている最中、丈の放った炎がうつ伏せで倒れている琳の真横に立っていた木にカーブを描いた状態で側面にぶつけ、ちょうどぶつけた側面の反対側にいた琳の両足を下敷きに燃え盛った木が倒れてきた。


激痛が足元から全身を襲い掛かるも、のたうち回る事すら許されない程に両足を固定したままの木は、両足をへし折った。


それに加え赤く燃え上がっていた木は、下敷きになっている箇所から徐々に体を燃やし始めていた。


「ガァアアアッ...んぐふっ...ふー!...ふんぐっ!」


そんな危機が瀕している中で、顔やあばらの痛みなど忘れて、無我夢中で木を足元からどかそうと、ひたすら力いっぱい押すと、運が良かったのか倒れた際の衝撃で木の幹が途中で分裂したため、なんとか木を退かすことに成功し、急いでインベントリから残った最後のポーションを取り出し、脚と顔に掛ける。


そして視界の左上に位置するHPバーを見ると、10分の1しかなかった赤い部分が10分の2程まで回復したものの、怪我と肋の痛み、火傷の後は消えず気持ち少し楽になった程度だった。


「ポーションを持ってやがったか」


「ふぐっ...」


ゆっくりと立ちあがろうとするも、両脚に力は入らずまたすぐに這いつくばる形で前進もうとする琳に対し、丈はただただ黙って見ていた。


「そんなに見てて楽しいか?」


「お前さ、何をそんなに死に急いでんだ?」


「...は?」


突然の丈の言葉に理解が追いつかず、最初に思いついた言葉がつい口から溢れる。


「こういう死にそうな時って普通命乞いするもんだろ?の癖にテメェはずっと俺の事煽ってばっかでよぉ?そんなに早く死にぇのか?」


「...ぷっ、はははっ!馬鹿だろお前!はははっ!」


「狂ったか?」


「狂ってない狂ってない!いやいやぁ、そこまで底辺にいたなんて思わなくてつい...笑ってしまったわ...あー、んでなんだっけ?なんで命乞いしないかって?」


「...」


絶体絶命、虫の息、風前の灯などの言葉でも表現できる状況下で、丈の疑問に声を出して笑い出し始めた琳は、呆れを通り越し、哀れみを通り越し、もはや愛おしさすらも感じてしまう程の感情になり、目の前で自分を見下す者に対し、慈しむような眼差しを向け口を開いた。


「お前そんなに俺に負けを認めて欲しかったのか?そんなに小さい人間だったのか?そんなにして俺に勝ち誇りたいのか?覚醒者と非覚醒者の強さなんて努力でどうにもならない程の差があるってのに、なんでお前はそんなに得意げいられるんだ?お前は道で見つけたアリに対して、本気で威張るのか?やってる事それと一緒だぜ?」


「何言ってんだ?テメェ自身がアリ見たいにか弱いとでもいいてぇのか?」


「はぁ...覚醒してない俺と、覚醒してるお前、どっちが強いかなんて一目瞭然、それなのにお前はその自分の実力でもねぇ、突如湧いて出てきたその力をあたかも自分の実力に換算して強くなった気分でいる。まぁそこまではいいけど、その力を使って明らかに格下を狙って、優越感に浸ってる奴に沸く感情は愛おしさや憐れみ以外ないんだよ、お前が誇示している強さはただの暴力で1番人間として位の低い生き物がする事なんだよ」


「お前自身が劣等感の塊だから、何も持ってないと勝手に思い込んでいる俺に対して怒りを覚えて、俺よりも優れていると思い込もうとして暴力でしか自分の方が位が上だという風に証明できないでいる。現に今のこの状況が何よりも、お前が俺に劣等感を感じている証拠だ。そんな奴に対して命乞い?お前に何1つ人として負けてない俺がなんでお前なんかに命乞いを?寧ろ今のこの一連の話を聞いてお前こそ俺に懺悔するべきだと思わないのか?」


「うるせぇ!!知った風な口で俺を語るな!!」


「はっ!大声で叫ぶって事は図星でもつかれたか!?」


「テメェみたいな雑魚に俺が劣等感を抱くわけねぇだろうが死に損ないぃいい!!!」


そう叫びながら丈は両手から炎を吹き出し、空中に高く飛び、手のひらの炎の火力を更に上げて勢いをつけて落下してきた。


ドガァンッ!!!


そんな丈の落下しただけの動きは、丈から半径10メートル程の広さのクレーターを作り出し、落下の衝撃で琳を数十メートル後ろへと吹き飛ばした。


「お前に俺は殺せねぇよ丈!!!俺が死んだとしてもお前は俺に負けたまま死ぬ事になるんだからなぁ!!!一生消えねぇ劣等感の中で苦しんでろぉ!カスッ!!!」


「俺が殺せねぇとしても、お前の人生はここで終わんだよ!!何かも終わりだ!!それだけで良い!健も佑衣も一花もお前を大事に思ってる奴とお前は何も関係がなくなんだよ!俺に負けてねぇって、それはテメェの勝負論だろぉが、今この瞬間もテメェ的に勝ってたとしても、俺的には何も負けてねぇんだよ!お前が死ねば俺の勝ち!!以上だ負け犬!!」


そう捨て台詞を口にした後、丈はまる琳が次に返す言葉から逃げる様に出口へとひとっ飛びで向かい、そのまま出口のゲートの中へと消えていった。


「...はぁ、まぁあんなしょうもねぇどうでも良い...さっさとここからーー」


これで邪魔もいなくなり、ようやく出口へと向かう事ができると思い、力いっぱい出口に向かって匍匐で前に進む。


ピロン

【ダンジョンの崩壊まで残り3分】


「ぐっ!...間に合うのかこれ」


赤い文字の警告が画面中央に現れ、カウントダウンが開始された。


ただの草原ならまだしも、出口までの道は全て丈の燃やした道しかなく、火傷による我慢を必死に耐えながら、前にひたすら進む。


そして残り数メートル、カウントダウンも残り1分を切ったところ、思わぬ事態が発生した。


ゴゴゴゴッ


カウントダウンが3分程あたりで僅かに感じでいた地面の揺れが強くなっていき、やがて残り1分の所でそれが背後からの振動だと気が付いた琳は、一瞬背後を振り向いたーー


「はっ!?やばい!本格的に!!」


背後を見ると地面が崩落しており、木々や植物などが悉く崩壊した地面から見える薄暗い虚無の中へと吸い込まれていき、それがどんどんこちら側に近づいてきていた。


そんな危機迫る状況に疲れていた腕も火事場の馬鹿力でなんとか動かし前に進むことだけを考えた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


【ダンジョン崩壊まで残り:10秒】


9...8...7...6...5

「うわっ!」


手を伸ばせば届く距離までに到達し、残り時間はまだあったものの、足下の地面が崩落し、それに身体も持っていかれそうになった所で最後の力を振り絞った。


ガシッ


全ての地面が崩壊していった中、空中に浮かぶゲートに両手を引っ掛けている琳。


「あとは上がるだけっ!」


鉄棒の上に上がるイメージで勢いをつけ、上にあがろうとした途端ーー


グワッ

「っ!」


突如ゲートの奥の地面に掴んでいた手が上に上げられ、そのまま放り出された。


【ダンジョンが崩壊しました。崩壊による回避に失敗した為、プレイヤーは無限に続く異空間へと放り出されます】


【異空間移動スキルを検出します...検索結果なし。スキル以外での異空間は脱出は不可能とされています】


【よってプレイヤー資...?&¥.....不必要となった為...@://90....剥ダツ..サれまSU】


【@」つかれ裟間デ子tA】


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