雨と慕情とRainy Blue
今回の話で気づいたのですが、純って結構現実逃避癖があるキャラになってるようです。というか、精神面が若干弱いような…。否、完璧主義って想定外に弱いっていうし、その表れかもしれないですけど。
他にも作者の初期設定から外れてきたキャラって結構、在たりします。中には、使い捨てのモブから準レギュラーくらいにまでなったキャラまで。
これからもいろいろな変化をしていくのでしょうけど、それが良きものになってくれるよう期待してます。いや、自分がさせることなんですけどね…。
※86話で重大ミス発見。修正しました。
まさか、自分で話の内容を忘れていたとは…。
今日は朝から雨だった。
五月雨は緑色なんて謂うけど、今のオレ心中の憂鬱さを表現するのに、正にぴったりといった感じだ。
ああ、みずいろの雨って謂いたくなるところだけど、喩えとしては少し違う。
確かに水色は寒色系だけど、冷静や孤独って感じじゃない。増してや自由や純粋なんて気分でもない。
じゃあ、曇然陰鬱だから黒かっていうとそれも違う。黒雨ってのは、激しい土砂降りだからな。オレは別に落胆しているってわけじゃないし。
白なら近いかもしれない。
白雨。にわか雨のことだ。
空は明るいし、通り過ぎれば綺麗な虹も懸かるだろう。
でも、オレの気持ちはそんな晴れやかなものじゃない。
端から見ればそんな状況かもしれないけど、オレとしては認めたくない。
じゃあ何故緑色かというと…。
緑色には、若々しさ・未熟・保守的というイメージがあるらしく、今のオレの悩みはそれが原因となっているからだ。
……要するに、初めての女の子からの告白にどう応じて克いか、解らずに悩んでるってわけだ。
つまり、思春期の青春くんってわけだよ。
哂いたければ哂えってんだ、ちくしょう。
抑の発端は香織ちゃん……否、美咲ちゃんだ。
この前、美咲ちゃんが口を滑らせたせいで、香織ちゃんにオレがJUNだってことがバレちまったからな。
一応、香織ちゃんの口止めはできたんだけど、その代わり無償でってわけじゃなく、その対価ってのが……。
「ねえ、純くん、どうしたの?
なにか悩み事?」
オレに問い掛けてきたのは美咲ちゃんだった。
全く、誰のせいでこんなことになってると思ってんだよ。
否、美咲ちゃんに悪気が無いのは解っている。
だって香織ちゃんの要求については、なにも知らないんだろうからな……。
まあ、相手が香織ちゃんだけにその要求ってのも納得なんだけど、それでも…。
それでも、依然り……。
はぁ…、デートか……。
本当、どうすりゃ宜いってんだよ。
正直言って、こんなのどうすりゃ克いのか索然りだ。
かといって、他人に訊くってのもなぁ…。
抑、成功させて更り好意を持たれるのは面倒だ。
かといって為挫って変に失望されれば、依然り厄介なことになりそうだし。
…いや、それ以前にデートって何をするのか知らないんだけどな。
大事なことなんで二度どころか、三度も言ってるわけなんだけど……。
……って、現実逃避してないで、真面目に考えないとな…。
でも、本当にどうしよう……。
▼
下校時には雨は止んでいた。
夕映えはあんず色、帰り道一人口笛吹いて……なんて余裕は無かった。
これだけ時間を掛けてはみたけど、依然り索然りで残念無念。
考えてみたら、オレって初恋なんてまだだもんなぁ…。
そんな恋愛偏差値零のオレが、どうしてこんなことに…。
だからといってもなぁ…。
答えを出さずに いつまでも暮らせない。
バス通り裏の路地……じゃなくって普通にそのバス通りをバス停まで歩いているわけだけど。
でも、オレの気分は行き止まりと謂うか行き詰まり、今にも息が詰まりそうだ。
「ちょっと、呆っとしてんじゃないわよ。
バスが来たわよ」
由希の声に正気に戻る。
……ああ、どうやらまた現実逃避してたようだ。
こんな馬鹿なこと言ってないで、本当になんとかしないとな…。
一旦車内に乗り込み、そこで再び考えることにする。
う〜ん、駄目だ。良案が欠片も出ない。
こうなりゃ仕方がない。
取り敢えず誰かに相談することにするか。
……………………。
在ないじゃねえか。
更く克く考えたらオレの周りって、そういう奴って殆ど在ねえ。
由希や兄貴は問題外だし、鬼塚さんや倉敷さんも同様だ。
美咲ちゃんだって恐らくオレと同じで、そういう経験が有るとは思えない。
もし有るんなら、真彦もあんなフラれ方してないだろうしな。
で、その真彦だけど……。
うん、あれも駄目だな。
あれが頼りになるようなら、あんな結果にはなってないだろうしな。
天堂は……。
うん、こいつも駄目だ。
誑しなんかじゃ参考にならない。というか参考にするわけにはいかない。
じゃあ、その親衛隊の朝日奈、日向だけど……。
こいつらも駄目だ。
天堂相手の妄想しか頭の中には無いだろう。
他には…。
恭さんと葉さんだけど、このふたりは……。
うん、除外だ。
ふたり揃って真当者じゃなくって変人だ。
真当者と言えば……。
ああっ、武士だっ。武士が在たっ!
こいつならきっと、参考に……。
……駄目だ。
そう言やこのカップルも、その成り立ちが真当物じゃなかった。
武士はともかく、相手の方がヤバかった。
これじゃ恐らく参考にならない。
……………………。
はぁ…。オレの周りって、熟々真当者な奴って在ねえんだな。
バスが駅へと着いたので降車する。
気づけば外は再び雨が降っていた。
※作中で雨の色云々と出てきましたので、Googleで調べたところ、次のような感じでした。
【白雨】
夏の季語。夕立などのにわか雨。
【黒雨】
夏の季語。空を暗くするばかりに降る大雨。
【緑雨】
夏の季語。新緑のころに降る雨。『翠雨』と書くことも。
【青雨】
青葉に降る雨。緑雨と意味は同じ。
【紅雨】
春に花に降る雨。赤色の花が雨のように散る様子を表す。
因みにインド南部のケーララ州では、本当に赤い色の雨が降ったことがあるらしいです。
と、ここまでは季語。ついでとばかりにこんなものまで載ってました。
【みずいろの雨】
70年代歌謡曲。八神純子の大ヒットナンバー。実は彼女の曲には…。
【Purple rain】
アメリカのロックミュージシャン・プリンスの曲。ミュージカル映画としても有名。
※作中の『依然り』ですが、『依然』は『相変わらず』という意味です。
また『索然り』の『索然』は『空虚な』『趣がない』という意味です。どちらもちゃんとした熟語だったりします。
※作中の『熟々(つくづく)』ですが『熟』一文字だけでも『熟』と読むようです。というか、漢字変換ではこちらでした。『熟々』の方がよく見掛けられるんですけど、これってどういうことなんでしょうかね…。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




