『フェアリーテイル』 -実はFairyとFateは語源が同じらしい-
「ねえ、純くん、この前に言ってた『フェアリーテイル』ってどういう意味だったの?」
美咲ちゃんがオレに尋ねてきた。
でも時と場所は考えてほしい。
ここは学校で、今は昼休憩で昼食中。
つまり、周りにはクラスの奴らが居るし、いつものように香織ちゃんがオレの直ぐ隣に居るのだ。
「え? なに? なんの話?」
オレの目の前で止まる卵焼き。
最早恒例となってしまった、香織ちゃんからの差し入れだ。
そしてやはり、恒例となってしまった、香織ちゃんのあ〜んである。
ただそれも、今の美咲ちゃんの一言で、香織ちゃんの箸が止まったわけで、オレは卵焼きと睨合というわけだ。
ああ、男どもの視線が痛い。
それに加えて女子達までもだ。
男どものそれとは正反対のベクトルで、オレが香織ちゃんを拒絶しないようにと、圧力を掛けてきているのだ。
なんでも香織ちゃんを見ていると、哀憐しく思えて、つい応援したくなるということらしい。
そんな理由で、どちらにしても反感を買うことには変わりないわけだ。
だったらオレの好きにすれば縦いじゃないかってことになるんだけど…。
男どもに嫌われるのはまだしも、女性に嫌われるのは、どうにも不馴れで居心地が悪いんだから、これは仕方がないことだろう。
決してオレのスケベ心が理由ではない。
単に女性が、そういうことに長けているというだけなのだ。
そんな理由で、オレはこの状況を受け入れているというわけだ。
諦めただけとも謂うんだけどな…。
話を元に戻そう。
フェアリーテイルに就いてだったよな。
香織ちゃんがオレを見ている。
他の連中も、何のことかと興味をもってるみたいだ。
天堂が皆に説明をする。
「ああ、この前の中学校で会ったあの子達のことだけど、この度名前がフェアリーテイルに決まったんだ」
「えぇっ、聞いてないぞそんな話。
この間のあれって、そういう話だったのかよっ。
くそっ、そうと知っていれば俺も緒いて行くんだったのに」
河合が悔しがっている。
お前は部外者なんだから連れて行くわけないだろうに…。
「へぇ〜、あの子達、そういう名前になったんだ」
それに対して香織ちゃんは、オレ達に緒いて来てたため、と言ういうか尾行いて来てたため、オレ達の話に附いてきていた。
反応が違うのはそれ故だ。
「『FAIRYTAIL』かぁ。
確か『妖精の尻尾』って意味よね。
こんな可愛いらしい名前、あの子達にはちょっともつたいなくない?」
まあ、朝日奈じゃないけど、普通はそう思うよな。
「でも、フェアリーってイタズラ好きな妖精よね。
案外似合っているかもよ」
お? なにげに日向は解ってるのか?
でもそれだけの意味合いじゃないんだけどな。
「流石にそんな意味合いじゃないと思うけど、でも確かにそれは評えてるかもね」
否、そういう意味合いなんだけど。
あの場に居たのにこの台詞って、由希も案外解ってないな。
……否、JUNの事情を知らないんだから、これが当然の反応か。
「え? そういう意味だったんだ。
千鶴さんは『御伽噺』って意味じゃないかって言ってたから、そうだとばかり思ってたのに」
うん、そっちの意味合いも正解だ。
『フェアリーテイル』にはいろいろと意味を宛行ってるからな。
ってか美咲ちゃん、オレの顔を見るなよっ。
変に疑われたらどうするんだよっ。
「ああ、そういえばそんなこと言ってたね。
でもその場合、テイルの綴りが違うんだけどね」
流石は天堂。その手のことには耳聡い。
もしかして、JUNの正体も知っている?
で、今の御伽噺の綴りなんだけど『fairy tail』じゃなくて『fairy tale』。
『fairy』の出てくる『tale』ってわけだ。
天堂が皆に、というか美咲ちゃんに説明している。
内容は今オレが述べたとおりのものだ。
いや、オレと違ってもう少し丁寧なんだけどな。
この際だから、なんで『フェアリーテイル』なんて名付けたのか説明しておこう。
まず、『フェアリーテイル』だけど、先程にも述べたように『fairytail』と『fairytale』の両方が有る。
だが『フェアリー』にも『fairy』と『fairly』のふたつの意味合いを持たせている。
『fairy』は言わずと知れた『妖精』で、その性格は悪戯好き。
つまり、お前らは他人を困らせる『悪戯な者』との揶揄である。
一方『fairly』は『公正な』という意味だ。
つまり、お前らは『fairly』じゃなくて『fairy』だと暗に謂ってるわけである。
続いて『fairytale』だが、『御伽噺』『夢物語』という意味だ。
つまり、お前らの願望は『現実味の無い妄想』であり『戯言』に過ぎないと扱き下ろしてやったというわけだ。
一方『fairytail』はそのまんま『妖精の尻尾』。
但し『妖精』の『尻尾』という意味合いである。
実は同名のデビュー曲の中に、こんなフレーズを用意していたりする。
夢をつかもう、Fairytail
短い尻尾につかまって
希望溢れる未来
つれていってよ、夢の世界へ
一見、良さそうに思える詞だが、実はいろいろと毒を含んでいたりする。
まずは『短い尻尾につかまって』の部分。
掴まる相手は妖精で、これは『アイドル』という仕事を擬人化したものである。
で、『連れていって』なんて言っているけど、実は一方的で、半ば強引とも謂える。
相手にその気が有るのなら『手をとって』と、手を差し伸べられるところだからだ。
それを『尻尾に掴まって』とあれば、少なくとも背を向けられているわけだ。
見方よっては、厭がって逃げる妖精を、無理遣り捕まえ掴んでと、そう受け取ることも出来る。というか、オレとしてはそのつもりだ。
尻尾が短いのもその辺を助長したつもりである。
そしてなによりも『夢をつかもう』なんて言ってるわりに『つれていって』と他力本願の妖精頼りなのである。
だというのに、あのふたりは『妖精』が自分達に友好的と信じて疑うこともなく、その世界を甘く見てナメきっている。
確かにその世界で得られるものは、嘗めたくなる程な甘美だろう。
だが、その世界や住人達を侮て掛かるのは間違いだ。
いずれその洗礼を受けることになるだろう。
というか、オレがその洗礼を与えたい。
だってあいつら、くそ生意気にも散々侮た口を叩いてくれたからな。
どれだけオレが忌み嫌ってるかは、その名が示すとおりである。
抑前にも述べたけど『fairy』という時点で、悪さをして人を困らせる者ということなのだ。
その本人にその自覚が無いというのも、正に『fairy』と同じなのかもしれない。
否、案外『fairy』と謂うよりも、語源『Fata』の『運命を告げる者』なのかもしれないな。
ただ、こいつらの場合、その運命は『fortune』じゃなく『fate』だろうけど。
出来ればその運命が齎されるのは、あいつらだけにしてほしいところだ。
で、ここまで倩と述べきて、何が言いたいのかと言うと…。
あのくそガキどもが、くそ生意気だということだ。
自分達の置かれた立場を考えろということだ。
いい加減、謙虚という言葉を覚えるべきである。
大人気ない?
そんなこと知るものか。
道理を弁えないくそガキには、それなりの教育が必要だろ。
だったら、文句を言われることはないはずだ。
「それで、本当のところはどうなのかなぁ?
ねえ、純くんはどう思う?」
おっと、そうだった。
そういや話の途中だった。
というかこの言い回し、一応、美咲ちゃんも場所柄は弁えていたんだな。
「さあな。別にどうでも縦いんじゃねえの。
そんなことよりも、大事なのはこれからどうがんばるかだろ。
まあ、あいつらがどこまで遣れるかが見ものだな」
とはいえ、任せられたからには責任が有るからな…。
仕方がない、今度一遍言い諭かせて、否、言い聆かせてやろう。
※今回のサブタイトル『フェアリーテイル』に因み、それに纏わる言葉を幾つか調べてみました。
いつものようにGoogle参考です。
【fairy,faery】
ファンタジー作品でお馴染みの妖精。性格は、悪戯好き。
真夏の夜の夢のオベロン、タイタニアや、アーサー王伝説のモルガンが有名。
語源は古期フランス語の『fae』で、場所を意味する『erie』を付けた『faerie』は『妖精の国』を意味するそうです。
そして、そこから『Fata(運命を司る女神)』⇒ 『fatum(運命)』⇒ 『fatus(告げられた)』⇒ 『for(話す)』といった感じでこれらの言葉が出来ていったようです。
ラテン語の『Fata』はギリシャ神話の三女神モイラや、その派生であるローマ神話の三女神パルカに該当するそうです。
つまりフェアリーとは、元々は『神託を齎す女神』だったわけです。
因みに『fate』の語源も『fatum』なのですが、特に『避けられない天命』と、負の意味合いが強く『死』等の意味でよく使われているようです。
【fairly】
作中で挙げた『公正な』の他に、何故か『まあまあ』『かなり』という意味が有ります。
もしfairyと同じ語源だとすると、『天意に則った』『運命的』となりそうで納得がいくんですが、でも『夢のような』は嫌ですね。
なお、語源は『faeger』という古い英語で、『美しい』という意味です。
【fairytale】
意味は『妖精の出てくる作り話』つまり『御伽噺』となります。また『夢のような』と出来事を喩える場合にも使われたりする言葉です。
【fairly tale】
作者がでっちあげました。(笑)
意味は『公正伝説』です。出来れば『夢のような話』であってほしくないですね。
※作中の『哀憐しい』ですが、よく見るものでは『可憐しい』となっています。『意地らしい』とも書くようです。
意味は『子どもや力の弱い者による振る舞いや、苦悩をみて心が動かされること』となっていました。[Google 参考]
つまり『いじらしい』とは『弱者の憐れな意地に感動すること』という意味のようで、それが『愛おしい』というのが『可憐』の語源らしいです。
ですが『可愛い』とか『意地を張る』とかだとどうにも『憐れ』という気になれなかったので、同じ『哀れ』の『哀憐』を当てて『哀憐しい』としてみました。
※作中に『不馴れ』という言葉が出てきたので、気になって『なれる』について調べてみました。
【馴れる】人や動物と親密になる。
【慣れる】物や行動になじむ。人が主観的に体験したできごとについて使われる。
【狎れる】親しみのあまり無遠慮になる。
【熟れる】食物等が発酵、熟成する。熟れる。
[Google 参考]
あまり見掛けない『狎』には『狎どる』等、相手を『ナメる』的な意味が有るようです。
※作中に『評う』という当て字が出てきますが、本来の読み方は『評う』です。ご注意ください。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意ください。




