OH! MY GODDESS! -私の女神が何故か塩っ⁈-
今回も前回に続き、麗奈視点です。
「それじゃ、ちょっと待ってくださいよ。
早速、一仕事しますんで」
そう言うや否や、早速なにやらの作業を始めたんだけど、この男。
一仕事?
なによ? いったい何をする気なの?
ノートを取り出し、なにやらを書き込んで……。
まさか…。
これって…、もしかして…。
この、見ていて恥ずかしくなるような、妄想丸出しの文章って…。
作…詞…なの…、これ?
すらすらと流れるかのように綴られていく文章。
つらつらと迷いさえなくそれは続いていく。
「ふむ、相変わらず大したものだな」
聖さんが感嘆している。
「そうですね。
こうして目の前で見ると、改めて驚かされますね」
咲さんのマネージャーらしき人も相槌を打ってるし…。
「わぁ、凄い。
本当に純くんがJUNさんだったんだ」
咲さんも素直に認めてる。
「嘘……、信じられない」
ああ、終にミナまでも。
「ど、どうせハッタリよ。
単に引っ込みが着かなくなっただけよっ」
こうは言ってみたけど…。
でも、認めるしかなさそう。
でも、認めたくない。
でも…、でも……。
「宜し、こんなものだな」
暫くして曲が出来上がった。
出来上がってしまった。
詞だけでなく、曲の方さえも作り上げてしまったのだ。
「これがお前らのデビュー曲だ。
あと、ユニット名も曲と同じな。
嫌だってんなら、聖さんには悪いけど、この話は無かったことにさせてもらうからな。
可いですよね?聖さん」
最早、否定は出来そうにない。
こうして目の前で実力を示されたんだから、嫌でも受け入れるしかない。
否、まだ内容が伴っているとは限らない。
だってあんなに簡単そうに作ってたんだもの、いい加減で適当なものかもしれないし、どこかで破綻しているかもしれない。
「『FAIRYTAIL』?
つまりユニット名は『フェアリーテイル』か。
ふむ、悪くはないな」
聖さんの受けは良いみたい。
つまり、変な物が出来上がったってわけじゃないみたいね。
「へぇ〜、可愛いらしくって良い名前じゃない」
そして咲さんの受けも良い。
私も曲を確認してみた。
と言っても、楽譜の方は解らないけど。
でも、詞の方ぐらいならまだ解る。
「なんか思ったより、歌詞も名前も真当物じゃない。的切変なものとばかり思ってたのに」
至って真当物で安心した。
変な曲じゃなくって本当に良かった。
「流石にそれはないでしょ。
まあ、私も同じこと思ったけど」
ああ、ミナも私と同じらしい。
明らかに放っとしているようだ。
「それじゃあ、ふたりとも、これで決まりで可いかい?」
聖さんが私達に問い掛ける。
「はい、可いです」
「私もこれで構いません」
流石にこれじゃ、もう否定なんて出来ない。
私達の完敗だ。
結果、私達のユニット名は『フェアリーテイル』に決定したのだった。
「おめでとう、ふたりとも。
でも、これからが結構大変だからがんばってね」
咲さんの励ましの言葉がとても嬉しい。
「ありがとうございます」
「これからもよろしくお願いします」
こんな決まり方だけど、それでもやっぱり嬉しいものは嬉しい。
この気持ちには嘘が付けない。
ミナも私と同じ気持ちのようで、浮かれているのがよく判る。
ああ、これで私達も晴れてアイドルの仲間入りなのね。
こうして私達の夢への扉が開いたのだった。
▼
翌日の日曜日、私達フェアリーテイルとリトルキッスの純さんとの初顔合わせとなった。
私憧れのあの早乙女純さんである。
ああ、感激に全身が震えてる。
「フェアリーテイルの赤坂レナです。よろしくお願いします」
「同じく、青山ミナです。こうしてお会い出来て感激です」
『赤坂レナ』というのは私の芸名ね。
因みに本名は、秋山麗奈。
で、相方の芸名が『青山ミナ』。
本名は、若山美奈子ね。
実はこの芸名の由来って、私達がスカウトされた場所がそのまま名字で、下の名前は本名を省略しただけのもの。
命名はJUNさん。
なんとも捻りの無い名前だけど、彼だって同じようなもの。
彼の本名は男鹿純というらしく『JUN』というのは正に本名そのまんま。
因みに咲さんの『花房咲』というのは、純さんが付けたものらしく、本名は花村美咲というそうだ。
あと、御堂さんの『御堂玲』も純さんによるもので、本名は天堂玲というらしい。
結構、芸名って適当なのね。知らなかったわ。
話を戻すけど、私達に対する純さんの対応は実に素っ気ないものだった。
「あ、そ」
……………………。
え? なに?
なんなの、ただ一言って?
というか、たったの2文字。否、3文字?
いや、そんなのどうでもいいわ。
それよりも…。
私達、何か純さんの気に障るようなことをした?
なんでこんな、つれない態度なの?
余りにも冷淡過ぎる対応に、私は戸惑うばかりだった。
ミナも私と同じで、ただただ呆然としている。
「ちょっと、純ちゃん。そんな挨拶ってないんじゃない」
咲さんが注意してくれたけど、純さんの態度は変わらなかった。
「そうは言うけど、これから消えてくかもしれない奴のこと、一々相手にしててもしょうがないだろ。
一応、話には聞いてるけど『フェアリーテイル』なんて名付けられてる時点で高が知れてるしな」
純さんも…彼も辛辣だったけど、純さん…早乙女さんも彼に負けずに手厳しい。
ああ、もうっ。
そういえばふたりとも、純って名前なのよね。
この機会だし、私も早乙女純さんを、咲さんみたいに純ちゃんって呼ぶことにしよう。
同様に咲さんも、ちゃんで呼ぶことにさせてもらおう。
片方だけさんじゃアンバランスだし、ちょうどいいわよね。
で、話が逸れたけど、彼から話を聞いているって、いったい何を言ったのよ。
…彼のことだから、相当に辛辣なことを云ったのでしょうね。
だから純ちゃんもこんな反応なんだわ。
でも、『フェアリーテイル』が、高が知れてる?
どういうこと?
「あの…、それってどういうことなんですか?」
ミナも疑問に思ったようで、その意味合いに就いて尋ねている。
「そんなの自分達で考えろよ。
まあ、なんでそんなのを宛行われたのか、それが解らないようじゃ、所詮はお前らはその程度ってことだ」
▼
あれからミナと一緒にいろいろと考えてみた。
いろいろと人にも相談いてもみた。
「純くんと純ちゃん、ふたりがそう言うからには、恐らくそれなりに隠れた意味が有るんだと思う」(咲さん談)
「fairytaleって『御伽噺』って意味でしょう。
つまり、少なくとも、夢見がちなだけで現実味の無い妄想だって意味合いが有るんじゃないかしら?
まあ、あの子のことだし、もっと深い意味が隠れてるかもしれないけど。
何が起ったか知らないけど、あなた達随分と嫌われたものね。ご愁傷さま」(千鶴さん談)
咲さんと事務所の先輩の長谷川千鶴さんの意見だとこんなな感じだった。
なによそれ、あの人の辛辣さは理解したつもりだったけど、ここまでなの⁈
然も、彼だけじゃなく、純ちゃんにまで嫌われただなんて……。
「まあ、それも仕方がないわよねぇ。
純はあの子と好い仲みたいだから」
「うん、純ちゃんって結構純くんのこと信頼しているからねぇ」
「あれは殆ど依存ね。純がそこまで気を縦してる相手なんて他にはそう在ないはずよ」
「「ええぇ〜〜っ⁈」」
…つ、つまり、今の千鶴さんと咲さんの話からすると、あのふたりってデキてるってこと?
それって、まず間違いなく、純ちゃんに嫌われてるってこと?
それって結構…ってか、私達、かなりヤバいんじゃ…。
「まあ、早いところ謝っておくことね。
あの子、結構粘着濃いから」
ああ、千鶴さんの言葉で、余計に不安が加速してしまったじゃない。
もうっ、どうしたら良いのよ?
※今回のサブタイとに関連してですが、『Oh my god!』という台詞は、実はあまり好ましくないようです。
というのも、宗教的なことに拘る人達からすると、『不信心な者に神様を軽視されている』と、不快感を覚えてしまうかららしいです。砕けた表現だと『俄のくせに生意気だ』といったところでしょうか。
もしくは『神はお前ごときに関わることは無い』なのかも。こういう人達の一部は独占的で排他的だったりしますからね。
また、旧約聖書の十戒に『主の名をみだりに口にしてはならない』とあるのも原因かもしれません。
まぁ、本当は『神の名を勝手に騙るな』という意味合いなんでしょうけど…。
そんな理由で、代わりに『Oh my goodness!』や『Oh my gosh!』等という『god』を避けた言い方がされるようです。
もちろん素直に『I’m shook!』と言ったり、『No way!』と嘆いたりするのもありでしょう。
同様に『Goddamn!』もアウト。
語源は『God damn it!』といわれ、『god(神)』と『damn(呪い)』を合わせた俗語で、つまり『天罰よ降れ!』という意味となります。[Google 参考]
『god』とあるだけで不謹慎というわけです。
なお、もしも語源が『God’s damn!(神の呪いだ!)』だったりすると一層悪く、誰だったかが言ってましたが『I damn god!(呪うぞ神め!)』なんて余計に罰当たりなことに…。
当然『Jesus!(神め!)』も同様です。
※作中の『すらすら』と『つらつら』ですが、意味を間違い易いため、敢えて説明をしておきます。
【すらすら】物事が円滑に進むさま
【つらつら】物事を念入りに行なうさま
[Google 参考]
つい、当て字をしたくなるのですが、対比が面白そうなので平仮名のままにしてみました。
※作中の『放っとする』ですが、安心して一息ということで『安息』の『安』を当てようかと迷ったのですが、音を合わせて『放心』の『放』を採用してみました。
※作中で咲の励ましに「これからもよろしくお願いします」なんてミナが応えてる場面があります。でも、「これから“も”」なんていう程の付き合いは無いんですよね。
一応、作中にもあるように浮かれているからってことなので、拘らずにいてもらえるようお願いします。
※作中に『宛行う』というコトが出てきますが、これは当て字らしいです。
『宛』には『宛て』『ずつ』『宛も』『「宛ら」』という読み方が有るようです。
で、その意味は『送り先・届け先 (日本のみ)』『一定の量を繰り返す』『曲がる』『非常によく似ている様』となっています。[Google 参考]
察するに『宛』は『融通が利く』という意味合いの漢字なのでしょうか?
もし、中国の歴史で出てくる『宛』という地名の由来が『よきに計らえ』という王命だとすると、実に可怪しく可笑しいですよね。否、王の器量ともいえますけど。
話が逸れましたが、つまり『宛行う』とは『それっぽいものに行なわせる』という意味合いで『宛』の字を宛行ったというわけなのでしょうね。
因みに『婉』という似た漢字が有るのですが、その読みは『婉しい』『婉やか』『 婉がう』となっておりました。[Google参考]
『女』と『宛』、つまり『美女』と『従順』という組合せですね。当時の男性の価値観がよく解ります。
理想は理解は出来ますけど、それを無理強いする世の中ではあってほしくはないですよね。
※作中の『気を縦す』ですが、普通は『気を許す』と書くようです。
ただ『縦』にも『ゆるす』という読み方が有り、意味は『ほしいまま』でした。
他にも『縦』『縦つ』『縦める』『縦し』等という読み方が有ります。もちろん『縦』も。
[Google 参考]
つまり、『自由自在』『好き勝手』という意味のようなので、『気をゆるす』には『縦す』が相応しいと『気を縦す』を採用しました。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




