こいつ絶対サドだわ -あぁ、辛口な言葉が辛い-
今回は、前回にフェアリーテイルと命名されたふたり組のうちのひとり、口数の多かった方の子の視点となっております。
因みにこのふたり、作者としては、それぞれ純と咲の劣化版というイメージで設定しているのですが、どうなっていくかは、この後の展開次第です。
片方の台詞が多いせいで相方の影が薄くなっていくのを、如何になんとかするかが悩みどころとなっています。
う〜ん、どうしよう…。
「ちょっと、なんであんたがここに居るのよ⁈」
思わずそう叫んでしまった。
だって今、私達の目の前に居るのは、この前、学校で咲さんに逢った時に、一緒に付いて来てた人達の中の一人だったのだから。
確か、……名前は想い出せないけど、やたらと偉そうにしていた奴。
そう、あの中で一番ちっこかったのに、一番偉そうにしてたのよね。
親衛隊幹部の一人って話だけど、その中じゃ下っ端らしいのに。
そのくせ、ライバル事務所の加藤香織とイチャイチャしてたりして。
いったい何なのよ、この男。
「おや? 面識が有ったのかい?
確かにふたりとも、君と同じ学校の後輩に当たるわけだけど、でもふたりは新学期からの転入だろう?」
プロデューサーの聖さんが男に問い掛けた。
そう、私達ふたりは咲さん達リトルキッスに憧れて、その母校へと転校して来たのだけど…、まさかこんな先輩が在たとは思わなかった。
流石に御堂さんみたいな人達ばかりだとは思ってはいなかったけど…。
否、本当は少しだけ期待は有った。
だって、あの御堂玲の母校でもあるんだから、それなら他の男子だってと期待していたとしても、別に可怪しくはないでしょう。
だというのに……。
ああ、今の状況を説明すると…。
まず、今日は土曜日の午後。
場所は、私達の所属する星プロ事務所の会議室。
ここの事務所からアイドルとしてデビューすることになっている私、秋山麗奈は、相方の若山美奈子…、ああ、面倒だからこの先は愛称のミナでいかせてもらうわね。
で、そのミナとともにソングライターのJUNさんと会わせてもらえることになっていた。
この場には、尊敬するリトルキッスの咲さんと、そのマネージャーらしきひとが一緒に居る。
純さんは私用があるらしくて今日はお休みらしい。
せっかく会えると思ってたのに…。
JUNさんというのは、私達憧れのリトルキッスに、数々の曲を提供し、ここまでの存在に育て上げた伝説のソングライターね。
他にも幾人かにも曲を提供しているけど、その殆どが大ヒットしている新進気鋭の実力者。
ただ、人前に姿を現すことは極めて少なく、その正体は謎に包まれているという。
なのに、せっかくそのJUNさんと会わせてもらえることになったというのに、そこに居たのはJUNさんでなくてこの男。
なんで? JUNさんはどこ⁈
純さんが休みで代わりがこいつって、まるで悪い冗談みたい。なんて巡り合わせが悪いのかしら。
「ええ、まあ。
それよりも、こいつら勝手に他人を呼び付けておいて、何をわけ解らないこと言ってんだか」
男が呆れたように言う。
でもねえ、わけが解らないって、当たり前でしょ。
本当にわけが解らないんだから。
いったい何がどうなってるのよ?
「あんたなんか呼んでないわよっ。
抑、私達とJUNさんとの顔合わせの場になんであんたが居るのよっ?」
そう、本当にわけが解らない。
いったい何がどうなってるのか、是非とも知りたいものだわ、全く。
「そうよ、咲さんはともかく、なんであんたが居るのか、理由が解らないのはこっちの方よっ」
ミナも私と同じみたいって、そんなの当たり前よね、本当。
「ええっと、私もなんで純くんが居るのか聞いてないんだけど…。
もしかして純ちゃんの代理か何か?」
えっ? 咲さんにも知らされてないの?
てよりも、こいつが純さんの代理?
どういうこと?
「否、そういうんじゃなくって、オレがJUN本人ってだけだよ」
……………………。
え?
「「ええ〜〜〜っ⁈」」
冗談でしょ?
私の聞き間違いか何かよね?
「もう、それならそうと明ってくれたら宜かったのに」
ええ⁈ 美咲さん、疑わしいって思わないの?
どうして素成り受け入れられるの?
信じられないっ!
「ちょっと、冗談ですよね? 聖さん」
「冗談だと言ってくださいよっ」
うん、そうよね。ミナだってそうだよね。
信じられないし、信じたくない。
「君達、いったい何をやらかしたんだい?」
え? それって、聖さん、本当にそうなの?
咲さんのマネージャーらしき人が、呆れたように額を押さえているし…。
嘘? 本当なの?
私、悪い夢でも見てるんじゃないの?
「でも嘘でしょ? 私達とそんなに歳が変わらないんですよ?」
ミナが聖さんに訊き直してる。
うん、お願い、嘘だと言って。
「否、本当だよ。彼がライターのJUNくんだ」
そんな…、本当なんだ……。
「それで、前にも言ってたリトルキッスの後輩ってのがこの子達なんだけど、この子達強っての希望でね、君にこの子達の面倒を看てほしいんだ」
私達を余所に話が進んでいく。
確かにそれは、私達が望んだことなんだけど…。
「厭ですよ。お断わりします。
抑、オレじゃ力不足ですよ。
こいつらだってそう言ってるでしょう。
なのでこいつらは聖さんにお任せします。
オレはリトルだけにしておいてください」
そんなこと言ってないわよっ。
確かに疑いはしたけど…。
…ううん、本当はまだ半信半疑だけど……。
「ええ〜、純くんなら大丈夫だよ。
私達や千鶴さんの曲でも実績も有るんだし」
私とは対照的に、咲さんは彼を信頼しきっているみたい。
え? なんで?
「そんな風に言っても無理なものは無理だって。
美咲ちゃんだってこの間、見てただろう。
こいつら、他力本願で、まだ何も為してもないし、成せてもねえ。
そのくせ非望だけは一人前の、ろくでなしどもだ。
否、他人に難癖を付けるのも一人前か?
そんな奴らの面倒なんて、荷が勝ち過ぎてやってられないっての」
彼の拒絶の言葉が続く。
私達への批難まで織り混ぜて。
た、確かにそう言われると、反論なんて出来ないけど…。
でも、そこまで言う⁈
これでもこっちは女の子なのよっ。
だというのに彼の言葉は辛辣だ。
ハバネロなんて目じゃないくらいに辛口だ。
キャロライナ・リーパーも、
ドラゴンズ・ブレスも、
ペッパーXやリル・ニトロでさえ及ばない。
いったい何百万スコヴィルなのよ。
ううぅっ…、なんて非道い。
なんで咲さんは、こんなのをここまで信頼出来るんだろう?
そう言えば、加藤香織もそうだ。
何故、彼女はああまで彼に言い寄れるのだろうか…?
もしかして、彼女も正体を知っている?
彼女の人気の急上昇もそれが原因?
そう言えばあの時、あの中の一人が言ってたわよね、二股掛けって…。
なによっ、それって裏切りじゃないっ!
つまり、こうやって女の子を誑し込んでるってことなのね。
そうじゃなきゃ、加藤香織があんなに言い依ってくる理由がない。
なによっ、最っ低っ!
まさかこんな奴が、あのJUNの正体だったなんて。
でも、咲さんはそのことに気づいているのかしら?
ううん、今先程まで、彼がJUNだと咲さんは知らなかったわけだし、つまりまだ咲さんはこいつの毒牙には掛かってないってことか…。
でも、純さんはどうなんだろう…?
もしかして純さん…。
否、純さんに限ってそんなことは……。
うん、純さんに限ってそんなことはないわよね。
下手に何かしようものなら、却って返り討ちだろうしね。
「そうか。引き受けてくれるか」
気づいたら、なんだか話が進んでいたみたい。
「ええ、但しこいつら次第ですけどね」
ちょっと、どういう意味よ。
「それじゃ、ちょっと待ってくださいよ。
早速、一仕事しますんで」
え? 一仕事?
そう言うや否や、この男は、早速なにやらの作業を始めたんだけど。
なによ? いったい何する気なのよ?
※作中にいろいろと辛いものが出てきたので、それがどういった物かを簡単に説明してみます。
[リル・ニトロ](900万 SHU)
世界一辛いグミ。頭の可怪しなお菓子です
[ペッパーX](318万SHU)
世界一辛い唐辛子。新品種。誰かがフ◯ーザ様まであと一歩なんてこと言っていました
[ドラゴンズ・ブレス](248万SHU)
世界で二番目に辛い唐辛子。新品種。ギネス記録を前にペッパーXに敗れる
[キャロライナ・リーパー](156万9000~223万SHU)
世界的辛さの唐辛子。嘗ては辛さ世界一だった
[ハバネロ](10万~35万SHU)
世界的に有名な唐辛子。これも嘗ては辛さ世界一だった。タバスコの10倍辛い
他にも、もっと凄いのが…
[レシニフェラトキシン(RTX)](160億SHU)
サボテンから作られた化学物質。流石に他とは桁違い
[ブレアの午前6時]【ブレア社】(約1600万SHU)
世界一辛いデスソース。限定販売品
恐らく死にます
[ブレア1600万の蓄え]【ブレア社】(約1600万SHU)
世界一辛いデスソース。限定販売品
自己責任で…
[ザ・ソース](710万SHU)
【オリジナル・フアン・スペシャルティ・フーヅ社】
世界一辛いホットソース。常時販売中
なお、単位のSHUは唐辛子系の辛さ『カプサイシン』を測る指標です。
……とあったのですが、詳しいことは解りませんでした。ごめんなさい。
そんな理由で、代わりにもう少し身近な例を追加します。責めて参考になれば良いのですが…。
[鷹の爪](5万SHU)
日本原産の唐辛子。国産の中ではもっともポピュラー。形が鷹のかぎづめと似ている
[タバスコソース]【マキルヘニー社】(5000SHU)
アメリカの企業が考案した調味料。現在も同社が商標権を持つ。でも主原料は、メキシコ・タバスコ州原産のキダチトウガラシの品種、チレ・タバスコだったりする
[Google 参考]
試すのは自由ですけど、物によっては危険です。
冗談ではなく命に関わる代物です。
触るだけでもヤバいです。
痔を患う程度ですめば儲けもの?
ともかく作者は、いつさい責任をもちませんので悪しからず。
あと、イタズラ等に使わないようにお願いします。
警察や軍隊が、武器に転用するくらいにヤバいんです。本当に止めてくださいね。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




