率先垂範? -やっぱり最初が肝心だろ-
サブタイトルを少し変更しました。[2023/04/06]
「ほう、本当にそれで良いのか?
まさか君が、こんな子達に侮られたままで、好しとするとは思わなかったな」
織部さんのこの言葉が決定打だった。
「解りましたよ。
聖さんと織部さん、ふたりの顔を立てて引き受けますよ。
但し、期待しないでくださいよ。
所詮こいつらじゃ、結果も高が知れてるんだから」
そのせいで、結局後輩ふたりの面倒を看る羽目に。
思う壺だとは解ってた。
解ってたんだけど、どうしても無視出来なかったんだから仕方がないだろ。
「そうか。引き受けてくれるか」
ちっ、聖さんはそんなこと言ってるけど、どうせ決定事項だったんだろうに。
もし、それでも嫌だと断わってたら、恐らく業務命令とか言ってたんだろうしな。
「ええ、但しこいつら次第ですけどね」
とはいえ、一応断わりを入れおかないとな。
……と、そうだ。
「それじゃ、ちょっと待ってくださいよ。
早速、一仕事しますんで」
と、そういうわけで、オレはその場で即興で曲を作り始めた。
うん、今まで何度も作ってきて思うんだけど、こういうのはその場のインスピレーションが大事なんだよな。
興が乗るとでも謂うのだろう。
単にその場の勢い任せとも謂うけど。
今回のオレの場合は後者だな。不満を打撞けてるだけだから。
要するに、その時の熱意を以ってってことだな。
『鉄は熱い内に打て』と謂うやつだ。
オレのこの作業に就いてだが、見ていた者達の反応はそれぞれだ。
「ふむ、相変わらず大したものだな」
これは聖さん台詞だ。
オレがライターとして師事しているのがこの人であり、それだけにこの好評価は少し嬉しい。
高評価ならなおのこと好しなんだけど、これはちょっと難しいかな。今回作ってるのは、そういった感じのものだし。
「そうですね。
こうして目の前で見ると、改めて驚かされますね」
それに織部さんが相槌を打つ。
確かに他人の目の前でってのは初めてだもんな。
…否、謝恩会用の曲とか、結構人前で作業してたか。
でも、織部さんの前では初めてだ。
「わぁ、凄い。
本当に純くんがJUNさんだったんだ」
今の台詞は美咲ちゃんだ。
いつも思うけど、傍で聞いている人間にとっては意味不明というか、やたらおかしなことを言ってるように思えるんじゃないだろうか。
『おかしな』だけど『可怪しな』か『可笑しな』か迷うところだろうし。
でも、別称なんてこんなものだろ。
変に気取って付けるとあとで後悔するだけだからな。
それこそ羞恥で悶絶死しかねない。
絶対に黒歴史案件だ。
「ところで純くん、先程言ってたヒボウってどういう意味?」
うん、そういや美咲ちゃんって、こういう子だったな。
このタイミングでこんなこと訊いてくるなんて。
余り、物事に頓着しないと謂うか、マイペースと謂うか…。
「嘘……、信じられない」
「ど、どうせハッタリよ。
単に引っ込みが着かなくなっただけよっ」
で、最後に後輩ふたりだが…。
ふっ…、流石に目の前で物事をして見せれば、動揺もするってわけだ。
ざまをみろってんだ、くそガキどもめ。
「宜し、こんなものだな」
暫くして漸く曲が出来上がった。
「これがお前らのデビュー曲だ。
あと、ユニット名も曲と同じな。
嫌だってんなら、聖さんには悪いけど、この話は無かったことにさせてもらうからな。
可いですよね?聖さん」
くそガキふたりに言い聞かせた後、聖さんの言質を取りにいく。
「『FAIRYTAIL』?
つまりユニット名は『フェアリーテイル』か。
ふむ、悪くはないな」
どうやら聖さんには、否とするところは無いようだ。
「へぇ〜、可愛いらしくって良い名前じゃない」
美咲ちゃんの受けも好い。
「なんか思ったより、歌詞も名前も真当物じゃない。的切変なものとばかり思ってたのに」
「流石にそれはないでしょ。
まあ、私も同じこと思ったけど」
一方、このふたりは拍子抜けって感じだけど、言ってることが普通に酷い。
全く、そんなわけないだろ。
少なくとも表立ってそんなことはしねえよ。
「それじゃあ、ふたりとも、これで決まりで可いかい?」
「はい、可いです」
「私もこれで構いません」
聖さんの確認にふたりが了承をしたことにより、これよりふたりのユニット名は『フェアリーテイル』に決定した。
「おめでとう、ふたりとも。
でも、これからが結構大変だからがんばってね」
「ありがとうございます」
「改めて、これからもよろしくお願いします」
美咲ちゃんの励ましに、嬉しそうに応えるふたり。
もう、すっかり一人前のつもりってか?
こいつら、『フェアリーテイル』がどういう意味か、恐らく解ってないんだろうな……。
※サブタイトルの『率先垂範』は、『人を率いる前に、先ず模範を垂れる』、つまり自分が手本を示してからという意味なのですが…、今回の純の行動ってそれに当たるんでしょうかね? 単なる示威行為な気がするのですが…。
そういう理由で、?付きとなっています。
因みに『率先垂範』とよく似たこんな格言が…、
『遣って見せ、言って聞かせて……………』これは太平洋戦争時の連合艦隊司令長官・山本五十六の言葉だそうです。
但し、こちらは人材育成の格言らしいです。[Google 参考]
当時の軍人にも尊敬できる偉い人は在たということですね。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




