えぇっ? もしかしてフラグが起ってる?
「ちょっと、花房咲。
なんであなたが彼と一緒に居るの?
彼とはどういう関係なのよ⁈」
ヤンキーっぽい男達に絡まれていた女子生徒を助けたのはよかったのだけど、どうやらこの子、芸能関係の子だったらしい。
で、何故かオレのことを知ってるらしい。
というか、オレに執着してるっぽい?
天堂じゃなくってか?
なんでオレなわけ?
「へ? 彼?」
「なんだ、そりゃ?
てか、誰だ、この子? 純の知り合いかなにかか?
純、お前、今度は何やらかしたんだ?」
倉敷さんや鬼塚さんじゃないけど、そんなのオレが訊きたいっての。
てか、最後のはなんだよ鬼塚さん。
全く、酷い言い掛かりだ。
「それはアタシも訊きたいわね」
おい、由希、お前もかよ。
はぁ…、まいったな…。
なんか、面倒な予感しかしないんだけど…。
「そんなこと言われても、オレにも心当たりが無いんだけどなあ…。
大体、この子が誰かも知らないし、オレの方が訊きたいくらいだ」
本当、いったい何がどうなってんだか。
「えぇ〜っ、加藤香織ちゃんだよっ。
『月霊天使エンジェルムーン』の主題歌『ムーンライトロマンス』を歌ってた」
この子のことを知ってるっぽい、美咲ちゃんの説明が入るけど、何それ?
まあ一応、芸能関係の子ってことは判ってた。
でも今のじゃ、名前と、この歳でアニメ主題歌を任される程の実力派シンガーだってことくらいしか解らない。
それはそれで重要な情報なんだけど、今オレが知りたいのはそんな情報なんかじゃない。
それがなんでオレなんかと関係するのか、そこが問題なんだ。
「そんなこと言われてもなぁ…。
まあ、名前は解ったけど、なんでそんな子がオレなんかのこと知ってるんだ?
全く心当たりが無いんだけど」
「なんだい、本当に何も心当たりが無いのかい?
せっかくの美人が相手だってのに、全く覚えてないなんて」
「お前と一緒にすんなよ、天堂。
大体、こっちはアイドルなんて疾っくにもう間に合ってるってのに一々覚えてねえっての」
……って、あれ?
なんか以前にも、こんなこと言ったことがあったような気が…。
でも、どこで?
全く、覚えが無い。
「はぁ……、やっぱりあなたは相変わらずね。
せっかくここまでがんばって、人気ランキングでも漸く10位にまで伸し上がったってのに、まるっきり思い出してももらえないなんて…」
やっぱり、オレと面識が有るのか…。
とは言ってもなぁ…。
「ちょっと、純。幾らなんでも酷いんじゃない?
ちょっとくらい思い出してあげなさいよ。
可哀そうじゃないっ」
「そうよっ、幾らなんでもあんまりだわ」
「本当、相変わらずの朴念仁。
少しは天堂くんを見習えば良いのに」
おい、急にこの子の味方かよ。
由希に朝日奈、日向も。
「はぁ…、こんなんだから純ちゃんも苦労するんだよねぇ…。
でも、純ちゃんには良かったのかな。
これってなんか、ライバル登場イベントっぽいし、純ちゃんにも教えてあげないとね」
美咲ちゃんなんか、変な溜息を吐いているし。
何だよ、ライバル登場イベントって。
そんなこと言われても、どう反応すればいいんだか…。
「それもこれも、花房咲っ!
みんな、あなたのせいだったのねっ!
覚えてなさいっ、必ず彼のこと、振り向かせてあげるんだからっ!」
そして、香織ちゃん(?)はそんな捨て台詞を残して、その場を逃げるかのように去っていったのだった。
「ええ〜っ⁈ わ、私〜⁈
それ、相手が違うよ〜っ。
待ってよ、香織ちゃ〜んっ」
そんなこと言っても、その香織ちゃんはもうこの場には居ない。
ヤラれ役ってのは大抵逃げ足が速いものだからな…。
否、実際には違うんだけど、言動が如何にもそれっぽいんでつい…。
「まさか、こんなことになってるなんてね。
本当、アンタいったいあの子に何したのよ?」
「知るかよ、こっちが訊きたいくらいだ。
結局そこんところは訊き逸びれたけどな」
それより問題なのは、美咲ちゃんに対して変な敵愾心を持たせてしまったことなんだよな。
変なことにならなきゃいいんだけど。
「でもあれって、やっぱりあれだよね」
「だから、男鹿くんは朴念仁」
てか早速、朝日奈と日向がわけの解らないこと言ってるし…。
「なんだよあれって。
オレが何かしたってんのかよ?」
「ああ、なんとなくだけど俺にも判った。
確かに男鹿は朴念仁に違いねえ」
えぇ⁈ 倉敷さんも?
「ちょっと、どういうことだよ?」
え⁈ 何⁈
なんでみんなして呆れたような顔してるんだよ⁈
「悪いけど、それに答えてやる程、俺は野暮じゃねえよ。自分で考えな」
「それにしても、純も厄介そうなのに見込まれたな」
全く、鬼塚さんの言うとおりだ。
変なフラグが起ってなきゃいいけど…。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




