入試はやっぱり不安です
三学期に入った。
中学三年生のオレ達にとって、愈々、高校受験が目前と迫ってきたと言える。
と言うか、推薦である美咲ちゃんの入試は、オレ達の一般入試と違って一月近く早い1月に行なわれ、そしてそれは、もう翌日となっていた。
「う〜ん、明日ちゃんと出来るかどうか、やっぱり、どうしても不安だよ〜」
まあ、美咲ちゃんの不安は解らないわけじゃない。
「なに言ってんだか。
オレ達と違って、学力試験無しで、作文と面接だけなんだろ」
しかも、多分、それは形だけ。
なんてたって、推薦の合格率は、ほぼ100%って聞くしな。
要するに、こないだの願書受け付けが通った時点で、合格したようなものなのだ。
だから、当日は、ただ試験を受けるだけの簡単な話と言うわけだ。
一般の受験生にとっては羨望の的ってこと解って……ないんだろうなぁ…。
「だから、その作文が問題なんだよっ。
私、そういうのって苦手なのに〜」
はは…、そう言や、提出用の作文は、随分と相談教師に手直しさせられてたみたいだからなぁ…。
実際、誤字の添削だらけで、用紙が真っ赤になってたし…。
「大丈夫よ、きっと。
そもそも、問われてることは、学識じゃなくて、やる気のはずだから、むしろ美咲ちゃんにとっては向いてるんじゃない?」
由希の言うとおりで間違いないだろう。
もし学識を問うんなら、普通に学力試験を受けさせればいいんだから、その必要性は無いはずだ。
「それでも心配ってんなら、そうだな…。
推薦の前に、学校同士での事前相談ってのがあるんだけど知ってるか?
この時点での合否の可能性を話し合うってものなんだけど、つまり、そこで推薦が通るってことは、合格の可能性が高いって、両方の学校から太鼓判を押されたようなもんだってことだ。
推薦の合格率が高いってのは、要するにそういうこと。選ばれた時点で、ほぼ合格ってことだな。
つまり、合格をもらってから試験を受けるようなもんだ」
それだけに、推薦を受けるのは大変なんだけど、美咲ちゃんはそれを突破してきたんだ、何も心配は無いはずだ。
「えぇ…? で、でも…」
「まぁ、どっちかって言うと、忘れ物をして試験にならないってことにならないかの方が心配だな。
一般受験でも、そういうのって結構あるみたいだしな」
「確かにな。筆記用具無しじゃ、作文も書けないし。でも、問題点がそれだけって、やっぱり羨ましいぜ」
「もう、真彦くんったらっ」
どうやら、オレと真彦の冗談に、美咲ちゃんもすっかり不安を忘れて……くれてたらいいなぁ…。




