やっぱり、苦労は実ってくれなきゃ
12月になった。
気づけば今年も、あと半月と少し。
高校受験も、もうすぐだ。
私立は2月初旬から、公立は2月後半頃だ。
因みに、美咲ちゃんは、無事、推薦を受けられるらしく、1月後半頃に試験となるらしい。
一時は、生徒会選挙の件により、学校側の心証を損なって、推薦取り消しになったんじゃないかと思ってたんだけど、意外にもそんなことはなく、真当な(?)評価をしてくれたようだ。
…いや、もしかすると、学校側の方が美咲ちゃんに忖度したのかも…?
二学期に入ってからの美咲ちゃんは、その成績をより一層上げており、前回の中間試験では全教科赤点無し、そして今回の期末試験に於いては、遂に全教科で平均点を上回った。
もしかすると、生徒会選挙の時の件の影響があったのかもしれない。
うん、あの時の台詞、今思い出してみてもかっこよかったからなぁ…。
そんなわけで、この分なら試験の方も十分に見込みがあると言えるだろう。
学業の方は問題ないとして、それじゃ仕事の方はどうだろうか……。
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期末試験を終えたオレ達が星プロ事務所に辿り着いてみれば、場が高揚感で満ち溢あふれていた。
聖さんも織部さんも、そして周りの人達も。
うん、この状況、見覚えがあるぞ。
「あの、いったい何かあったのですか?」
美咲ちゃんが問い掛ける。
けど、なんとなく、判ってるんじゃないかな。
「ああ、来たか、ふたりとも。
朗報だ。
去年に引き続き、今年もタレント人気ランキング上位に、ふたり揃ってランクインだ。
よくやってくれた」
聖さんの話によると、オレ達リトルキッスの人気が、去年を上回る結果となっていたということらしい。
「ほら、見てみろ。
ふたりとも、きっと驚くぞ」
上機嫌な織部さんに促され、美咲ちゃんと共に、調査データを覗き込む。
う〜ん、どれどれ。
じゃあ、早速、女性部門…と。
まずは、やっぱり下からだよな…。
……って、えぇっ⁈
「あ、皐月さんが98位に入ってる」
え? 驚かないの、美咲ちゃん。
いや、嘘? 皐月さん? マジで?
確かに演ドルって、言葉だけなら聞いたことあったけど、皐月さんってそのジャンルなの?
正直言って、男性グループの○烈ぐらいしか知らなかったんだけど…。
他には…。
う〜ん…、あまり、知ってる名前が見当たらないなぁ。
まあ、下位の方だし、そんなものか…。
「あっ、香織ちゃんだ。
すごいっ。去年は100位近くだったのに、今年は10位にまでなってる」
美咲ちゃんが、また誰か見つけたようだ。
でも、誰だ、それ?
……あっ、そう言や、なんか美咲ちゃんの好きなアニメの主題歌を歌ってるのが、そんな名前の奴だったかな?
……それ以外でも、どこかで聞いたような名前の気がするけど……、やっぱり気のせいか…。
「あっ、純ちゃんが7位だっ」
「そう言う美咲ちゃんは6位か。
結構順位が上がったな。
今年はあんまり派手な活動してないってのに」
本当、殆どCMとかばっかりで、テレビ番組とかには出演してないんだけどなぁ…。
「でも、曲はヒットしてるし、CMにも出てるじゃないか。美咲ちゃんの『あったか〜い』は流行語にもなってるみたいだし」
「ふぇっ⁈」
うおっ⁈ 突然背後から現れたのは天堂だった。
ったく、驚かすなよ心臓に悪い。美咲ちゃんもびっくりしてるじゃないか。
「でも、良かったぁ。
今年は受験のこともあったし、どうなるか心配だったから」
「うん、ふたりとも、がんばった甲斐があったよね」
ははっ、天堂の言うとおりだ。
美咲ちゃんはこの一年、本当によくがんばったもんなぁ…。
でも、6位と7位か。
良い結果になって、本当に良かった。
「おぉ⁉ 千鶴さんが4位だ。あの人も、受験生…じゃなかったか。
それでも、やっぱり大したもんだよな。
本当、凄いや」
……て、あれ? 3位に『伊藤瑠花』?
今年もライバルは健在ってわけか。
こりゃ、千鶴さんも大変だ。
いや、これからはオレ達も、この仲間入りってわけだ。こいつは強敵だ。
ともかく、今年も良い結果に終わりそうだ。
きっと、来年も良い年になってくれることだろう。
否、そのためにもがんばらなきゃな。
あ、そうそう、忘れてた。
一応、男性部門の結果も見てみよう。
とは言っても知ってる奴だけで十分だよな。
まず、隆さんが26位。…って順位が落ちてら。
でもまあ、そんなに変わったわけでもないか。
で、功さんが20位。
…うん、こっちもこんなもんか。
…御堂玲7位。
今年もかよ…。
本当、こいつってば、どんだけなんだかな。
多分、オレの知り合いの中で、こいつが一番凄い奴なのかもしれない……。




