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意外な名(迷?)曲 ‐老黒魔術師じゃありません-

 期末試験が終わった。

 今回の美咲ちゃんの試験結果はというと、追試がひとつあったけど、残りは全てクリア。

 しかも、ひとつは平均点並にまで達しており、前回の中間試験に続き、努力の成果が出ていると言っていいだろう。

 とはいっても、成績としては、まだまだなんだけど……。


 と、いうわけで、後は終業式を待つだけだ。

 美咲ちゃんも、とりあえず、目下の重荷から開放されてか、試験前と違い、今はとっても元気溌剌、意気軒昂、気力満点といった感じで、もう、なんと言っていいのか。

 余程、試験勉強が嫌だったんだなぁ…。


 ただ、それで受験勉強から逃げられるってわけでもはなかろうに、そこを忘れてなけりゃいいんだけど…。


 それでも今は、それでもいいか。

 夏休みには、大量の仕事が入っているんだから。

 なんてったって、推薦の条件を満たすためには、こっちの方でも、実績が求められるわけだからなぁ…。

 つまり、推薦ってのは、長期間に亘る試験のことに違いない。本当、推薦を受けるのって、大変だよなぁ……。



 そんな感じで、日々を過ごすうちに、気づけばあっという間に終業式。……いや、それさえも今、終わったばかりで、これからすぐに仕事が入っている。

 夕方の生のラジオ放送に、ゲスト出演することになっているのだ。

 オレ達はまだ、デビューして一年の新人、遅刻なんてしようものなら、今後の仕事に差し障ることになるだろう。もしかすると一切仕事が入ってこずに、この業界から干されるなんてことになるかもしれない。

 小生意気キャラで通っている早乙女純にしたって、それが許されているのは、通すべき筋を通しているからであり、その信用を失えば、ただの我儘キャラに成り下がってしまう。

 そうなれば、リトルキッスも信用を失い、同時にこれまで築き上げてきたものも、全て台無しになるだろう。なんとしても、それは避けなければならない。

 そんなわけで、オレ達は下校直後、すぐに出勤となったのだった。


          ▼


 夕方6時、生放送が始まった。

 一年前のテレビ出演以来の生放送だ。

 いくら画面に映らないラジオ番組だといえど、やはり生番組は緊張する。

 だが、美咲ちゃんのほうには、然程でもなさそうだ。これはこの番組司会者の手腕のお陰と言っていいだろう。流石はこの業界の大先輩だ。

 いや、それだけじゃないか。

 よく思い出してみれば、初めてのテレビの生出演の時だって、美咲ちゃんって、結構落ち着いていたよな…。うん、考えてみれば、美咲ちゃんって、結構胆が据わっているのかもしれないな…。

 これは、オレも負けちゃいられない。


 生放送は続いていく。

 そして、話題もリハーサル(打ち合わせ)通りに進む。


「リトルキッスのおふたりと言えば、いろいろなCM曲で話題となっていますけど、今の夏という季節の割に、海といったイメージの曲って、少ないんですね」


 司会者がそんな台詞を振ってくる。

 確かにオレ達の言う通り、というか、少ないというより、今のところ皆無である。


「ええ、まあ。今年は海よりも、山のイメージでいこうということになってるんで。

 私達、まだ中学生だし、海のイメージはまだ早いんじゃないかって話なんですよね」

「ああ、それにそれでもいいっていう、スケベな変態どもに、そういう目で見られるのも嫌だ…しね」


 ヤバっ。やっぱり、男口調ってそう簡単には抜けないな。生放送だし、気をつけないと…。


「ははっ…、純ちゃんってば手厳しいな。

 でも、男ってのはそういう生き物なんだし、そこはなんとか受け入れて欲しいかな。はは……

 とまぁ、そんなわけで、そんな男の悲哀を歌った一曲をここらで」


 こんなやりとりだけど、一応はきちんと打ち合わせで決められた台本通りなわけで、その証拠として、自然な流れで、曲へと繋がっていく。


 (さっび)しい(おっとこ)がぁ〜♪

 (ひっと)目を(しっの)んでぇ〜♪

 やぁっと手ぇにしたぁ〜あっ♪

 (あっこが)〜れの本〜んん〜♪


 著作権の問題が怖いので、ここから先は省略するが、この曲は『海○隊』の『ブラック・マジック・○ールド・マン』という曲である。

 曲の内容はというと、こんな内容だ。


 モテない小心者の男が、苦労の末に手に購入したアレな本を開いてみたら、どこのページも『黒いインク』の修正だらけ。思わず泣いちゃいました。


 とまあ、こんなわけで、『ブラック・マジック・○ールド・マン』の『ブラック・マジック』とは、『老黒魔術師』による『黒魔術(ブラック・マジック)』という意味ではなくて、『アレな本の修正人』、曲の表現を用いるならば『墨塗り男』による『黒い墨(ブラック・マジック)』での修正を意味するものだったってわけだ。

 要するに『ブラック・マジック・○ールド・マン』とは、正義の守護者ならぬ(?)、性器の守護者だってことだな。

 ……、う…、我ながら、ちょっと下品が過ぎたか……。

 つ、つまり、この曲はコミックソングなのである。


 ……悪いが、これ以上触れないでくれ。

 自分で振っといてなんだが、なんだか、恥ずかしくなってきた…。


 そんなオレにお構いなしに、曲は続く。


 ブラ〜ック・マジ〜ック・○ールド・マ〜ン♪

 墨塗り男〜♪


「ひゃはははははははっ。

 な、なにこれ。

 ちょっ、ちょっとやめて。おな、お腹が捩れる〜」


 それに対して、美咲ちゃんには大ウケ。

 気持ちは判るが、こんな下品なネタにここまで反応するのは、女の子としてどうなんだ?

 音源の切り替えがされてなきゃ、生放送で流れていたところだぞ…。



「ええ、リスナーの皆さん、お楽しみいただけたでしょうか?

 こちらでは、咲ちゃんが、先程(さっき)から抱腹絶倒状態なのですが…。咲ちゃん、大丈夫?」


 あ〜ぁ、言っちまった。

 でもしょうがないか。

 ラジオ放送なんだし、こっちの様子を伝えてなんぼってところもあるからなぁ。



 そんな感じで、今回のラジオ生出演は終了したのだった。


 ……ってか、よく考えたら、これって初めてのラジオの生だったんだよなぁ。

 本当にこんなので良かったのなぁ…。

 どっかの漫画みたいに『これでいいのだ』って、なってくれりゃいいんだけど…。

 今回のネタは『海○隊』の『ブラック・マジック・○ールド・マン』という曲でした。

 海○隊といえば、『○る言葉』なんかが有名で、すっかりそういうイメージですけど、昔は『J○DAN J○DAN』みたいなコミックソングなんかも、結構あったんです。リーダーの武○氏なんて『田舎から出て来た剽軽なお登りさん』ってイメージだったんですよね。それが今じゃ、すっかり、名作『金○先生』のイメージが定着。それしか知らない人も多いんじゃないでしょうか。時代の流れを感じます。まあ、芸能界きっての坂本竜馬オ…じゃない、竜馬を敬愛する人物ってことが、自他共に認められているってところは、未だに変わってないですけど。やはり、物事で成功を収める人間は違うってことなんでしょうかね。


※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

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