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本当はアイドルって大変なんだぞ ……多分 (前編)

 すみません。作者の都合上、今回は前振りだけになってしまいました。結果、中身は素空間(すっからかん)です。まあ、中身が無いのはいつものことって、嘲笑(わら)われるかもしれませんが…。そう言うわけで続きは次回となります。

 6月に入った。

 曇然(どんより)とした、明暗定か成らぬ空模様が日々続き、それに引き釣られ、こちらの気分まで憂鬱になりそうになる。

 そう言えば、去年の今頃は、毎日のように千鶴さんが作曲依頼に来ていたよなぁ。

 まあ、最近は、控えてくれているみたいだけど。

 その辺は、オレ達が受験生ってことを理解してくれてるってことかな。

 それに彼女も同じ受験生……じゃなかったか…。

 よく考えたら、千鶴さん所属(とこ)の学校はエスカレーター式だった…。

 うちの学校は普通の公立だし、オレ達の場合、千鶴さんみたいにはいかないんだよなぁ…。


          ▼


 ホームルームの時間のことだった。

 今日の議題は進路の話。

 先日、進路調査が行なわれたのだが、その結果、将来芸能界入りしたいなんて生徒が少なからずいたため、美咲ちゃんと天堂から、その業界に纏わる話を是非聴きたいという話となった。

 でも、このふたりじゃ参考にならないよなぁ…。



 まずは天堂、『御堂(れい)』の場合。


「僕の場合だと、まずは去年のタレントオーディションだね。

 そこで、いろいろな審査を受けて、その後にデビューという形かな」


 やっぱり……。


 こいつは、こんなに簡単そうに言ってるけど、まず、出場するための書類選考を忘れている。

 それに、それを果しても予備審査が待っている。

 これを突破して、(ようや)く、出場となるのだ。

 そこで初めて、自分のアピールが出来るのだが、そこでも厳しい審査が待っている。

 ここで審査員達の目に留まる(もの)がなければ、容赦なく(ふる)い落とされるのだ。

 そしてそれは、例え優れた資質の持ち主であったとしても例外ではない。

 あくまでも、審査員の目に留まることが第一で、それがなければ、評価も糸瓜皮(へったくれ)も無いのだから。

 あ、念のため、ただ目立てば良いってもんじゃねぇぞ。そんな奴は当然、問題外だからな。

 で、そこでなんとか、審査員達のお眼鏡に適ったとしても、まだ安心は出来ない。

 (むし)ろここからが本番なのだ。

 何故なら、そこで選ばれるのは、男女の主席と次席をあわせて()()4名なのだから。

 そして前述した条件を満たせない者は選ばれない。

 つまり、該当者無しなんてこともあるのだ。


 たが、天堂はこれに該当しない特殊な例外だった。

 何故なら、去年のそれは、天堂が選ばれることだけを前提とした茶番劇(出来レース)だったからである。

 他は、男女ともに該当者無しだったしなぁ……。

 本当、どんだけなんだよ、こいつ…。


 ただ、そんな天堂でも、儘ならないことは有る。

 歌手活動に於いては、どういったわけか、これといったヒットがみられなかったのである。

 しかも、天堂自身に問題があるわけではなかった。

 実際、歌唱力は悪くない。

 曲に恵まれなかったというわけでもないと思う。

 何故なら、こいつに曲を提供したのは、ひとりやふたりではないのだから。

 なのに、結果は今言った通り。全く芽が出なかったのだ。

 そのため、今の活動は、モデルやCM、後は俳優業が少しとなっている。


 でも、それ以外に就いては順調なのだ。

 芸能界は甘くないってことを言いたいのなら、こいつはまず、不適切過ぎて参考にはならないだろう。



 続いて、今度は美咲ちゃん。

『リトルキッス』の『花房咲』の場合。


「ええっと、私の場合は……。

 あんまり、参考にはならないかも。

 だって、純ちゃんって凄いパートナーに恵まれてて、純く…『JUN』さんみたいな凄いライターも()いててくれるし、もちろん、プロデューサーの聖さんとか、マネージャーの織部さんとか、事務所のみんなが良くしてくれてるし、ファンの人達だって私みたいなのを応援してくれてるし。

 多分……ううん、絶対、私ひとりじゃ、今みたいにアイドルなんてやってこれてないと思う。

 だから、こんな幸運に恵まれた私じゃ、やっぱり参考にはならないんじゃないかな」


「ははっ、美咲ちゃんらしい。

 でも、そんなところが美咲ちゃんの良いところなんだよなぁ。

 多分、他のファン達だって同じように思っているはずだ。でなきゃ、今のこの人気が説明出来ないしな」

「ああ、その通りだ」

「流石は、俺達の花房咲だ」


 真彦の称賛に、クラスのみんな賛同する。

 当然、オレも同意見だ。

 誰より最も間近で見てきたんだ。そのことは、オレが一番知っている。

 だから絶対、間違いない。

 誇って良いぞ、美咲ちゃん。


 実際、美咲ちゃんの努力はよく知っているし、知られている。

 学校では、ただアイドルという存在としてだけでなく、日々努力する姿がよく見かけられているのだ。

 最近では苦手としている勉強方面だって成長が見られている……はず。一応、中間試験では結果を残しているわけだし。

 うん。ちゃんと努力に就いては理解してもらえてると思う。


 ただ、クラスの奴らの聴きたいことってのは、芸能界でのことなんだよなぁ……。


「う〜ん、芸能界での苦労話って言っても……。

 やっぱり、みんな周りの人達に頼ってばかりで、私としては特に思い当たらないんだよね。

 ごめんね。頼りにならなくて」


 否、無いってことは無いんだよなぁ…。

 でも、良いんだろうか、内部事情なんか話しても……。

 とはいえ、このままってわけにもいかないし…。


「あっ、じゃあ、これは人伝(ひとづて)の話だけど良いか?」


 結局、オレはそれに就いて話すことに決めたのだった。

※前書き、及び作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。

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