修学旅行 ‐大阪と言えば……って、えっ、行き成りここ?-
今回、固有名詞が結構出てくるため、伏せ字表記『○』が、少なからず使われております。もしかすると、「そこまでしなくてもいいよ」なんて、優しく言ってくれるのかもしれませんが、念のため、『○』表記です。ご了承ください。
大阪。そこは西日本を代表する大都市。
人口は800万人を超え、都心部には高層ビルのオフィスや商業施設が立ち並び、鉄道網をはじめ交通機関が発達する。
一方で、古来より日本の政治、経済、文化の中心地として繁栄した歴史を受け継ぎ、それは現代に於いても変わることがない。
それは、我が国、日本に於ける第二首都としての在り方が模索されている(人によっては、模索ではなく、検討だと言うかもしれないが…)とも言われる程である。
住民達の帰属意識が高く、また、強かで逞しい、否、巧ましいイメージが強く、そこは少しばかりアレではあるが、それに反して、その明るさ(いろんな意味で)と、人懐っこさには好感が持てる。
大阪とは、そんな都市である。
有名な観光名所と言えば、大阪城、通天閣、道頓堀、難波の法善寺横丁、日本橋の黒門市場……。
ああ、そうだよっ。
後半はみんな食い物絡みだよ。悪いかよ。
文句のある奴。道頓堀のくいだおれ太郎に謝れっ。
大阪と言えば、当然食い歩きだろっ。
道頓堀と言えば、グ○コの看板や、カ○道楽の動く大きなカニ。
流石に、ここで蟹鍋ってわけには、予算上いかないけれど、それでも安く、もんじゃ焼きって手もあるし、たこ焼き、たこせんなんかで小腹を満たすことも出来る。
他にも、法善寺横丁のお好み焼き、串カツ、ちょっとリッチな割烹……。
食い倒れを支える巨大市場である、黒門市場のコロッケ、マグロ丼……。
あぁ、だというのに…………。
「よっしゃーっ、やっぱり大阪と言えば、『SSJ』
『ザブカルチャー・スタジオ・ジャパン』だぜっ」
「ねえねえ、まず、どこ行く?」
あぁ、なんで行き成り遊園地なんだよ…。
いや、ほぼ全生徒の希望でここになったんだけど。
別に不満があるわけじゃないけど、それでもなぁ……。
やはりオレとしては、食い倒れの街巡りの方が良かった…。
さて、ここ『SSJ』だが、正式名称を『ザブカルチャー・スタジオ・ジャパン』と言い、いろんなサブカルチャーの世界を余すところなく体験できるテーマパークである。
簡単に言うと、漫画やゲームとコラボした遊園地ってことだ。実際はそれだけじゃないんだけど。
但し、ここはそんじょそこらの遊園地とはわけが違う。その規模は大きく、年間来場者は1,000万人に到達する勢いといった、世界的なテーマパークのひとつなのだ。
国内で、ここと張り合えるのは、千葉の東洋ネズミーランドくらいじゃないかな。
と、まあ、ここは西日本一のテーマパークなわけである。
そんなわけで、真彦と美咲ちゃんは、すっかりハイテンションだ。
まあ、当然か。こいつら、こういうの大好きだったもんなぁ。
なお、集団行動が求められる修学旅行に於いて、オレ達がこんな会話が出来ているのは、このSSJに於いてのみだが、班単位での自由行動が認められているからだ。
というわけで、現在ここに集まっているのは、オレ達男子の班の、オレ、天堂、真彦、小藪、大西の5人。そして、女子の班の、美咲ちゃん、由希、日向に朝日奈、そして優美の5人である。
まあ、優美を除けば、いつもの親衛隊連中が一緒というわけだ。
てか、この女、美咲ちゃん達と同じ班だったのか…。
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「「きゃ〜、かわい〜い」」
オレ達が最初に向かったのは、国民的RPGの世界観を模したエリア。
そして今、オレ達の目の前に現れた奇妙なモンスターに美咲ちゃんを始めとした、女の子達が黄色い声を上げていた。
って、まさか?
そこには由希まで混ざっていた?
でも、オレには理解出来ない。
これのどこが可愛いのか。
目の前に居たのは、腐って潰れた大福としか言い表せないナニかだった。
色こそ緑色だが、その歪な造形、ぶよふよとした腐蝕感。
その正体は、スライムと呼ばれるクリーチャーだった。
「ちょっと、変な言い方しないでよっ。
こんなにかわいらしいモンスターに失礼じゃないっ」
まさかとは思ったが、やはり先程のは聞き違いではなかったらしい。
「そうよっ、スライムと言えば、かわいい系モンスターの定番中の定番じゃない。
それが解らないなんてどうかしているわっ」
朝日奈が由希に同意する。
美咲ちゃんや他の二人も頷いている。
「まあ、確かにその通りだね」
天堂までもが認めている。
いや、この男の場合、女の子達に同調しているだけかもしれな…………じゃなさそうだ。
オレの方が異常しいのか?
「かわいいねえ……。
まあ、確かに可愛いと言えば、可愛いかな。
なんてったって、凌辱系の定番だし、『くっ殺さん』にはつき物だよなあ」
「「……………………」」
「くっ、殺せ…。ぐはっ」
何が起きたかは、言うまでもないだろう。
ああ、女性陣の視線が冷たい。
オレの息子が怯えて縮籠まっている。
それもこれも、みんな真彦のせいだ。
性犯罪者予備軍死すべし。
同情の余地は無い。
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次に向かったのは、やはり国民的配管工が活躍するゲームの世界。
甲羅を背負ったお兄さん達が、大きな土管の上をうろうろしている。
「くたばれっ、『飛○在天』!」
「え? そこは下からジャンプじゃないの?」
由希の双腕から繰り出された闘気の龍が、お兄さん達目掛けて荒れ狂う。
あれ? 『降○十八掌』って、金○の小説オリジナルじゃなかったのっ⁈
あと、美咲ちゃん。ツッコミどころってそこなの?
いや、そんなことより……。
ああ、よりにもよって股間かよ…。
まだ、あれ、気にしてたんだ…。
みんな、真彦のせいだな。
……南無三。
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その後もいろいろと巡ったわけだが、なんと言うか、まあ、いろいろとあった。
だが、敢えてそれは語らないことにする。
強いて言うなら、女性陣のいろいろな面が見られたとだけ言っておく。それはもう、いろいろと…。
特に、由希の暴れっぷりと、美咲ちゃんのボケっぷり……って、こっちはいつものことか…。
まあ、そういうわけで、いろいろあったわけだ。
そんな中で、無事、真彦が生還出来たのが奇跡とだけ言っておこう。
あぁ、思い出しただけで疲れ果てた…。
お陰で、この後に巡った道頓堀の『大阪松○座』や、難波の『よ○もと漫才劇場』等、いろいろ楽しみにしてたのに、全くもって記憶に残ることがなかった……。
はぁ……。仕方がない。
大人になったら、いつか必ず堪能しに来てやる。
それまで楽しみに待っていろよ、大阪っ。
……って、本当にいつか来れるんだろうか……。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




