修学旅行 ‐京都到着、そして風呂でのお約束-
古の都、京都。
世界有数の歴史都市で、神社や仏閣などの歴史遺産が多く、美しき景観が守られている。
また、日本らしさを感じられる街並みが多く、1950年以前に建てられた木造建築のうち、伝統的な構造を持つ家は『京町屋』と呼ばれている。
そんな、街全体で、古都ならではの落ち着いた雰囲気をたたえているのが京都だ。
正しく、雅なる都である。
そして、それらはオレ達のバスの後ろへと遠ざかっていき……。
夕刻16時、オレ達は目的地たるホテルへと到着した。
「せっかく、京都まで来たんだから、出来ればホテルじゃなく旅館に泊まりたかった」
オレが望妬くのも解って欲しい。
宿泊先ホテルは、賑やかな街中に在ったのだから。
これじゃ、風情も糸瓜皮もないってもんだ。
「んなの、どうでも良いだろ。
それより、颯々と風呂済ませちまおうぜ」
現在、17時過ぎ。
ローテーションにより、入浴時間が決められているので、それまでに済ませないと入りそびれることになる。
長時間、長々とバスに揺られてきた疲れも有るし、ゆっくり湯に浸かるのも良いか。
オレは、この憂鬱な気分を紛らわせるべく、真彦らと伴に風呂場へと向かうのだった。
「はぁ〜、生き返る〜」
「流石に大袈裟じゃないか?」
「何言ってんだ。長時間、バスに揺られてたんだ。
何も奇怪しくなんてねえだろ」
う〜む、どうにも真彦には、この手の感覚は理解が及ばないらしい。
「ああ。それにここは一応、温泉らしいからね。
そういった効能も有るかもしれないね」
その点、天堂は流石だな。よく解ってる。
ってか、ここ、温泉だったんだ。
そう解ると、なんか、思わず鼻歌が出そうになるな…。
「ばばんば、ばんばんば…………て、何やってんだ、あいつら?」
見れば、大西と小藪が、仕切の壁際で何やらやっているようだ。
「ちょっと、まずいよ。止めときなよ」
「なんだよ。お前だって興味有るんだろ。
後で代わってやるから、そこに手を支け」
あれって、まさか…。
覗く気か?
…ってか、小藪。お前も、言う事聆くのかよっ。
「君達、何をするつもりだい」
おっ、流石は天堂。
当然のように二人を制止する。
やっぱり、真正の紳士だ。
「やっぱり、黙って見てるわけにはいかないよな」
そして、真彦も参戦だ。
「邪魔すんなよっ、お前らだって興味有るくせに。
せっかくの機会。ここで遣らなきゃ男じゃねぇだろ」
「美咲ちゃんがいるんだ。
そんなの許すわけないだろっ」
「無理すんなよ。本当はお前だって見たいくせに」
まあ、お約束の遣り取りだけど、こいつら向こうに誰が居るか解ってんのか?
「全く、同じ男として見てられねえな。
それより、お前ら、後でどうなっても知らねえからな。
バレたら、まず親衛隊除名処分は確実だぞ」
その前に、本気で実行するようなら、実力行使で止めるけど。
「じょ、冗談じゃない。
僕は無理矢理付き合わされてるだけだ。
そんなの絶対嫌だっ」
「なっ、お前、裏切る気か⁈」
うん、動揺してるし後一押しだ。
「……おい、お前ら。多分、向こうまで声、聞こえてるぞ」
オレ達に声を掛けたのは日浦だった。
「馬鹿な奴らだ」
そして、一言残して、何事も無かったかのように風呂場を出ていく。
「……………………」
ご愁傷さま……とは言えないな。自業自得だ。
真っ青になった二人を残し、オレ達も風呂場を後にすることにした。
なお、やはり、日浦の言う通り、こっちの声は向こう側まで届いていたらしく、大西と小藪は由希のお仕置きを受けることに……。
しばらくの間、内股になって、股間を押さえていたけど、何があったかは考えたくない。
ただ、その程度で済んだことを、こいつらは喜ぶべきだろう。
未遂じゃなかったら、捥がれてたぞ、きっと……。
※作中の『糸瓜皮』は作者オリジナルの当て字です。ご注意下さい。『へったくれ』とは『つまらないもの、取るに足らないもの』といった意味です。うまく育たず曲がってしまった糸瓜を『へちまくれ』といい、その後『ヘッタクレ』に変化して、『商品にならない、役に立たないもの』との意味で使われるようになったのだとか。他に『へたくそ』の語源という話も。また、そのせいか『糸瓜』自体が『つまらないもの』との意味で使われるとのことで、『糸瓜の皮とも思わない』とのことわざがあり、『糸瓜の皮』=『つまらないもの、価値のないもの』といった意味で使われるようになったというそうです。[Google 参考] そういったわけで、この度の当て字として採用しました。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




