修学旅行 ‐早乙女純、サービスエリアに出没する-
サブタイトルにはサービスエリアとしておりますが、パーキングエリアとの違いってなんでしょうか?
間隔に違いがあるだけで、殆ど同じサービスが行なわれているみたいです。実際のところ、どうなんでしょうね?
バスに揺られ4時間半。
現在、二度目の休憩中。
2時間置きの休憩という事もあるが、何より、12時30分という昼時でもあるので、当然の如く昼食時間である。
一応、1時間と長めに時間を設ってあるので、食後は各々の自由時間に充てられる。
とはいえ、
「おい、あれ、花房咲じゃないか?」
「隣に在るのは、御堂玲だよな?」
「きゃ〜、御堂く〜ん」
まぁ、こうなるよな。
「はぁ〜、相変わらずの人気ねえ」
「マジ凄えのな」
「ははっ…」
一応、ファンサービスは忘れないってか?
天堂と美咲ちゃんは、苦笑いしながらも、ファン達に手を振って応えている。
幸い、去年の夏祭りの時みたいな事にならないのは、やはり学校行事ということもあり、教師達が周りに附いておかげだろうか。
「やっぱり、これじゃ自由行動は難しそうねえ」
「ああ、これは諦めるしかないかな」
由希の意見に天堂が同意する。
美咲ちゃんも残念そうだ。
全く、これじゃ、個人行動なんて儘ならない。
「便所付きのバスで良かったな…って、ちょ、ちょっと待てっ」
例によって、由希のアイアンクローがオレへと迫る。
睨むな由希、その手を引っ込めろっ。
「五月蝿いっ。このデリカシー皆無がっ」
オレはその場から逃げ出した。
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美咲ちゃん達と離れ離れとなったオレだが、実は都合が良かったりした。
オレはそのまま、人目に着かない場所を探し、そこで手早くスカートに履き替えた。
そして、着け髪を装着すると、そのまま一気に女性用便所へと飛び込んだ。
この頃になると、こういった行動に対する抵抗感も随分と薄れてきていた。
とはいえ、男のままってのは流石にいろいろと無理があるため、簡易であるが変装をし、そして便所で仕上げをすることにしたのだ。
だって、早乙女純が男性用便所からってわけにはいかないだろ。
リスクを冒してまで、早乙女純になった理由?
それは、この土地ならではの、ご当地スイーツを食べるため。
そのために、昼飯だって控えめにしたんだし。
……いや、だって、男のままでスイーツって、やっぱり抵抗あるだろ……。
その点、早乙女純なら、それは自然、当然、必然である。
早乙女純はスイーツ好きってことになっているわけだから、敢えてそれをしない理由がない。
そして何より、せっかくここまで来ておいて、このまま素通りするなんて、もったいないってもんである。
そういうわけで、ご当地スイーツが待っている。
さあ、早速、突撃だ。
「あ、あれ? 早乙女純?」
「悪いけど、急いでな。
修学旅行で来てるんで、あんまり時間が無いんだ」
戸惑う店員さんに構うことなく、注文をするオレ。
そんな調子で、あちらこちらの店を巡る。
周囲の目なんて気にしない。
だって時間は限られているんだ。
それまでに、どれだけの店を巡れるかが勝負だ。
とはいえ、いよいよ時間がヤバい。
後は持ち帰りだな。
時間ギリギリまで粘り、出来る限りの品物を買う。
再度の着換えが、いささかアレだったけど、そんなことは余り気にならなかった。
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そして、無事、集合時間にギリギリセーフ。
ふぅ〜……。
「あれ? 純、どうしたんだ、それ?」
「え?」
オレの手には、両手いっぱいに抱えた持ち帰り用のスイーツ。
「…い、いや、これは……。
そ、そう、みんなで食べようと思ってな。
まあ、お土産ってわけだ。
だって、美咲ちゃんなんて、殆ど外を巡れなかっただろ。
つまり、その代わりな」
オレの持ち帰ったスイーツは、みんなで食べることになりました。
※作中のルビには、一般的でない、作者オリジナルの当て字が混ざっております。ご注意下さい。




