始動『デスペラード』
【私撰有害図書指定】
当作品は読者に対し、知識、思想、嗜好などに於いて、悪影響を及ぼす可能性があります。ご注意下さい。なお、当方と致しましては、一切の責任を負いませんので、読者様方の自己責任にてお読み下さい。
※今回、倫理上に於いて問題のある言葉を使用しております。ご注意下さい。でも、これってR15指定に掛かったりするの?
→作中に設定ミスを発見。それに伴い仁と烈也の年齢を19歳に修正しました。[2024/01/21]
4月1日。
世間一般の学生達は、春休み。
そして今日は、リトルキッスにとっても、仕事休みの日だった。
別に、今日がエイプリルフールだからといって、戯れ言を言っているわけではない。
そもそも、世間一般でも、日常生活にそれは影響を与えることなく、普段通りに過ごすのが普通だ。
つまり、嘘偽りでなく、本当に、リトルキッスとしての活動はオフなのだ。
そう、リトルキッスとしては、である。
オレは、朝から、星プロダクション事務所へと来ていた。
先述の通りなので、今のオレは早乙女純ではない。早乙女純では目立つからなぁ…。
と、そんな目立たないはずのオレだが、それでも声を掛けられたりした。
「あれ? チビ助じゃない。アンタ、まだいたんだ」
「あ、本当だ。最近見ないから、疾っくに辞めちゃったもんだと思ってたのにね〜」
こいつらは、以前の時の訓練生の内の二人だった。
「全く、口の悪い女どもだなぁ。そんなんだから、同年代で勃と出の新人なんかに、デビューを掻っ攫われるんだよ」
ああ、本当、美咲ちゃんの爪の垢でも煎じて飲ませて遣りたい。
「はぁ? 何の事よ?」
「リトルの事だよっ。本当、お前らとは大違いだよなぁ」
「あの子達は、例外でしょ。普通はあんな事、有り得ないんだから。訓練生を素っ飛ばして、行き成りデビューなんて」
まあ、確かにあれは異例だけど、それでも事務所の目に留まったのは、当人の持つ資質のはずだ。
こいつらの言い分は的外れだ。
「それに、それを言うなら、アンタだって、私達と同じじゃないのっ」
確かに、御堂玲の例があるし、オレも同類だよな。
でも、それよりも言うべきことがある。
「私達って、何言ってんだよ。
言っとくけど、オレは男だぞ」
「「はあぁ⁈」」
ちっ、やっぱり知らなかったのかよ…。
▼
「なんだよ、遅かったな。
オレと同じ頃に家を出たはずだろ?
いったい何処で道草食ってたんだ?」
そう言ったのは、兄貴の男鹿仁だった。
ここは、星プロダクション内にある、会議室の一室。
今年、プロデビューする事となった、兄貴達のバンド『デスペラード』の契約等に関する話し合いをするため、そのメンバー達と関係者が、聖さんの下へと集められていたのだった。
そして、オレはソングライターの『JUN』として、この場に呼び出されていた。
と言っても、JUNの正体に就いては、一応秘密となっており、機密事項扱いされている。
「まさか、こんな子供が…」
とは、兄貴達のマネージャーとなる人物の言である。
まあ、普通、驚くよな。
ともあれ、ここで、この場に集められた者達に就いて、簡単な紹介を。
まずは、この場にオレ達を召集した人物、天宮聖。
兄貴達のプロデューサーを務める。
オレ達、リトルキッスも世話になっている人だ。
今回のことは、例の一件が尾を引いてのことだろうか。
次に、バンドのメンバー。
井吹恭介。20歳。バンドのリーダーを務めている。担当は、ボーカル兼ギター。
嘗て、兄貴の通ってた高校で、不良をやってたらしいのだが、音楽に目覚めて更生。
序に、やんちゃだった兄貴も更生させ(?)メンバーに加えてくれた恩人でもある。
江原葉子。20歳。メンバー中、唯一の女性でありながら、ドラムを担当するほか、サブボーカルも熟す。
あと、作詞作曲を手掛けているけど、でも、それがこの悪趣味なバンドというのがなぁ…。
宇崎烈也。19歳。ベース担当。この変人揃い(?)のメンバーの中、唯一の常識人。
いろいろ苦労してそうだ。
そして、男鹿仁。19歳。うちの兄貴。
ギター担当なんだけど、恭さん、よくこんなのにギター仕込んだよなぁ…。
それだけでなく、最近はサブだが、ボーカルの真似事もしてるとか。遣りたい放題だな。
と、まあ、ここまで、兄貴達『デスペラード』のメンバーを紹介してきたわけだが、こんな人のマネージャーとなったのが、藍川昇さんである。
でも、この人もクセがありそうだ。
見た目は普通の若手社員だけど、何処かそれだけじゃない風格がある。
きっとこの人も、昔はその手の過去のあった人なんだろう。
なるほど、そういう人選か。なんだか納得だ。
で、最後にオレ、JUNである。
でも、なんでJUN?
一応、オレ、リトルキッス専属なんだけど…。
いや、そういや、兄貴達、リトルの曲を3曲程使ってたんだっけ。その話かな?
確かにその話だった。
あと、他にもオレが兄貴達に作った曲が何曲か。
…って、えっ? 兄貴達に作った曲?
覚えがない…………と思ってたんだけど。
「ああ、それなんだけど、純くんが昔作った歌詞を幾つか使わせもらったわ。
じゃないとデビューに、曲が足りなかったから」
????
疑問に思ったんで、葉さんに尋ねてみると、昔、兄貴と喧嘩した時に、癪だからと、悪口を歌詞案として作ってたらしい。
そういった変な物を、手直しして採用したんだとか。
どんな曲かと確認してみると、『Fuckin’Guy』『BASTARD!』など、どれも兄貴への悪口罵詈ばかり。
…………うん、心当たりがある…。
兄貴が額に青筋を浮かべながら、オレの方を見てニヤリと哂う。
うげっ。
……結果、今後、不定期的に、兄貴達にも曲提供を行なうことになりました。
あと、不本意ながら、リトルキッスの兄貴分と称するんだとか……。まぁ、こっちは非公認ではあるが…。
流石に公認だと、リトルキッスファンが騒ぎそうだしな。
▼
なんとも、今日は疲れる一日だった。
帰りは帰りで、厄介な女と出会ってしまったし。
まあ、幸い、面倒事になる前に、早々にその場を立ち去ったんだけど…。
はぁ、本当、今日は疲れた……。
※作中で出てくる『わらう』ですが、Googleで調べてみた結果、次のようなものがありました。
[笑う]『口を大きく開けて喜びの声をたてる。おかしがって声をたてる』の意味。[広辞苑] より。英語の『Smile』より『Laugh』に近い。音にするなら「アハハ」。
[嗤う]『人を軽視してあざけりわらう』の意味。音にすれば「ハッ」って感じ。英語でいうなら『Sneer』(冷笑する)が近い。
[哂う]こちらは『嗤う』よりややソフトに『失笑する』という意味。音にするなら「……(乾いた感じで)ハハ」。英語ではニヤニヤ笑うという意味で『Grin』という感じ。
[咲う]これは現在ではほとんど使われていないようですが、『花が咲きこぼれるように』「わらう」の意味だそうです。音にするなら「うふふ」。英語なら『Chuckle』(くすくす笑う)。
殆どが他人からのコピーの作者としては脱帽です。
※作中の『bastard』ですが、意味としては『庶子』つまり『認知外の子』ってことなんですが、ここでは転じて、血縁を否定する『いらない子供』という意味で使っております。そういう意味なんで、下手に兄弟喧嘩なんかでは、使わないようにしましょう。あと、親にこんなこと言われたら泣いちゃいますよね。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




