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大人げないと解っちゃいるけど

 思ったよりも安価だった支払いをすませ寿司屋を後にしたオレ達。

 もちろん支払いはオレ持ちだ。高が全国展開の庶民向けチェーン店の支払い如きに怯むようなオレじゃない。実際二人分合わせて2000円程度だったし少しばかり拍子抜けだ。もう少しすると思ってたんだけど、これじゃ相手の支払いを持ったところで自慢にもならない。まあ、そんなつもりなんて欠片程もありはしないけど。


 さて、それでは次の行き先だけど、やはり食欲を満たした後は体を動かしたくなるものだってことで──。



 着いた先はとあるアミューズメントパーク。広辞苑じゃ遊園地って説明されているみたいだけど、一般的には娯楽や遊戯設備を提供する施設全般を指す。例えばカラオケとかボーリングとかもそれに含まれるわけだけど──。


 もったいぶって引っ張ってみたけど、結局の目的地はなんのことはないゲームセンターだ。

 それのどこがどう体を動かすってことになるのかってツッコミを受けそうだけど、忘れてないだろうか、そこにはちゃんとそういうゲームもあるってことを。


 ゲームセンターで体を使うゲームといえば太鼓を叩くリズムゲームが有名だけど、オレが選んだのは某お笑い芸人が得意としているというあのゲーム、エアホッケーだ。


 いや、だってせっかく二人なわけだし、だったら片方が見てるだけのゲームよりも一緒に遊べる対戦ゲームだろ?


 というわけで早速硬貨を投入。

 よし、それじゃいざ勝負だっ!



 通常先攻はじゃんけんかコイントスで決めるものだがここはレディーファーストということで譲る。決して高階が鈍そうだからという理由ではない。


 予想どおり。やはり高階のサーブは緩い。

 だが、敢えて激しく打ち返す。

「きゃっ⁈」なんて悲鳴を上げているけど、今はそんなことは気にしない。

 男のくせに女性を相手に大人げない?

 そうはいっても勝負事ってやつはお互いに本気でやらなきゃ面白くないだろう?


 今のカウンターであっさりと1点。

 さあ、それじゃ今度は高階の本気を見せてもらおうか。


 オレの期待に応えるべく「えいっ!」なんて意気込んでサーブを打つ高階。

 ただ、力み過ぎたせいか勢いよく側壁に当たったパック(球。平べったい)は宙を舞いテーブルの外へと落下。

 うん、まあよくあることだ。


 高階がクラッシュしたことでオレがサーブ権を得ることに。

 さて、それじゃもう一発決めてやるか。


「えっ⁈」


 嘘っ? マジか?

 なんていう偶然だ。まさかオレのサーブが高階のマレット(打つための道具)に当たってカウンターになるだなんて…。


 思わぬ得点に狂喜する高階。


 マグレと解っていてもやはり悔しい。

 特に目の前でこう(はしゃ)がれると余計に。

 大人げないとは解ってはいるんだけど、やはり(さが)ってことだろうか。


「今度はマグレなんて通用しないからな」


 さっきのは壁の反射を利用したから予想外のことが起きただけだ。だから今度は高階のマレットを避けてダイレクトにゴールを狙ってやる。


 オラッ!

 気合いと共にパックを打ち出す。


「ひゃっ⁈」


 予想どおりの悲鳴を上げる高階。

 だが返ってきたのは声だけでなく予想外の衝撃も。まさかあの高階がこうも的確に打ち返してくるだなんて。


「くそっ、またか。

 だがマグレは三度と続かないぞっ!」


 二度ものカウンターによる失点に思わず頭に血が逆上(のぼ)る。

 か弱い女の子相手に向きになるなんて、なにをみっともないことをしてるんだと厭きれられるかも知れないけど、自分でも解ってはいるんだけど…。


 ガコン!


 くっ、まただ。どうなってる?

 これで連続三回目のカウンター。

 最初のはともかく後の二回はマグレじゃない?

 もしかしてこいつ、こういうのが得意だったりするのか?


 いやでもだからってオレがこうも対応できないだなんて。これでも由希の道場で鍛えられて運動神経には結構自信があるってのになんで?


 相変わらず「きゃっ⁈」とか「ひゃっ⁈」とか悲鳴を上げながら打ち返している高階だけど、実際に翻弄されているのは攻め続けているオレの方。

 嘘だ! こんなの信じられない!



「あ…あの…、先輩…?」


「…………」


 勝負が終わり高階がオレに声を掛けてくる。

 対するオレはなにも返せずいる。

 負けて不貞腐れているわけじゃないけど、それでもなんていうかやっぱり悔しいんだよな…。


 結局オレが得点できたのは最初の一回の1点のみで後はもう散々な結果。

 一回じゃ納得いかないと三回挑んで三回ともだ。

 もう、認めるしかないな。エアホッケーじゃ高階に敵わないって。

 本当、人は見掛けに依らない。


 まあ、お陰でいい気分転換にはなったし、高階の意外な一面も知ることができたってことで好かったということにしよう。


 ……ま、負け惜しみなんかじゃないんだからねっ!

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