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戦いに優雅さを求めるのは間違いだろうか

 お待たせしました。更新再開します。土日更新で9話程度の予定です。

 今話はともかく次話からは出番の少ないあのキャラが出てきます。彼女が最近の陰気な雰囲気を吹き飛ばしてくれるとよいのですが…。

 第一審裁判が行われた。

 といってもその第一回期日は被告側の都合に関係なく指定されるため被告人側が不在であることも少なくないらしく(さすがに原告側不在では行なわれず、その場合代理人が出席する)、オレ達の訴訟相手四葉幸房もその例に漏れなかった。

 で、そういう場合どうなるかというと被告側から提出された答弁書を陳述とみなし──擬制陳述というそうだ──裁判を進めることになる。なんでもこの第一回期日というのは双方の陳述の他はその後の進行について話し合うくらいで具体的な話がされることはまずないのが普通だとのこと。


「なんだよそれは。意気込んでいたのが馬鹿みたいじゃないか」


 裁判所帰りの車の中で、オレは不満を零した。

 なんとも拍子抜けだ。

 しかもそこで決まった次の第二回期日は一月後。ただ苛立ちが募ってくる。


「まあ仕方がないですよ。裁判とはそうやって進めていくものですから」


 藤森さんはなぜそう落ち着いていられるのだろう。この人だって相当怒りを溜め込んでいるはずなのに。


「決まってるじゃないですか。これが香織のための戦いだからです。

 気品を保ち常に優雅に。正々堂々正攻法で真正面から敵を撃ち破る。

 誰もが認める名誉ある勝利。それでこそ香織の認めるJUNさんでしょう」


 は⁈ なにそれ⁈

 いや、確かに香織ちゃんならオレのことをそれくらい美化してそうだけど。

 でも藤森さん、それって絶対ハードルが高過ぎだって。


 けど、それができたらさぞかし痛快だろうな。

 溢れる余裕を以てして正攻法で圧勝する。

 勝って高笑いするオレに、敗けて惨めに這い(つくば)い項垂れる四葉幸房。

 うん、香織ちゃんの無念を晴らすというならやはりこれくらいじゃないとな。


「心配は要りませんよ。

 相手側は「行為自体は双方の合意だったし香織も成人しているので問題ない。仮令(たとえ)後になって浮気に罪悪感を感じて自殺を図ったとしても、それは本人の問題であって自分には関係ない」なんて言っていますが、医師からは香織から違法薬物が検出されたと診断書を貰ってますし、相良芳江からは四葉と共謀し打ち上げで香織の飲み物にそれを混入させたとの供述も取れています。証拠も証人も万全です。

 それに元々の香織の支持層に加え、当事務所のタレント達の活動とアピールで作り出した風潮、これらにより世論もこちら側の味方です。

 弁護団からの短期で決着が着くとのお墨付きもあります。絶対敗けることはありません」


 はは…、マジか…。

 周りがみんな優秀なのは解ってはいたけど、ここまでの仕事をやってくれるとは…。


「そっか。そこまで完璧なお膳立てをされて臆するわけにはいかないな。

 よし、それじゃ次の第二回期日で決めてしまいましょう。弁護団にもそう伝えておいてください」


 運転席の藤森さんに明るく答える。

 本当にそうなってくれれば良いな。

 そんな思いを胸に(いだ)きながら。


 オレ達の香織ちゃんの仇を取りたいという思いは強い。

 だが一番大事なのは、この裁判を一刻も早く終らせてこれ以上香織ちゃんが傷つかないようにすることだ。

 事件のことを忘れることはきっと誰にもできないし、なかったことにもできない。だけどそれを見ないことにして受け容れることはきっとできる。

 そのためにも今回の件に納得のいく決着を着ける必要がある。


 待っててくれよ香織ちゃん。

 すぐにこの苦しみから解放してやるからな。


※今回の話は作者の(にわか)な知識を基にしたものであり、実際の裁判とは食い違っている可能性があります。ご注意ください。

 ……まあ、裁判なんて普通関わることなんてないので……というよりも関わりたくなんてないですよね。

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