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大人って汚え‼

 連れて行かれた先で待っていたのは、プロデューサーさんだった。

 そして、オレを連れて来たのはマネージャーさん。って、えぇ⁈

 どうやらオレは、訓練生ではなく、デビューを待つだけのアイドルだったようだ。

 そういや、契約の時、則デビューみたいなことを言ってたような気がするけど。

 えぇ⁈ マジで⁈

 それじゃ、さっきの訓練生達ってなんなんだよ。

 はっきりいって、これじゃ彼達の立場がない。

 本気でこれでいいのかよ?

 でもこれは冗談でも何でもなく、相方の女の子と共に、4月にはデビューの予定だとか。

 って、ん? 相方の女の子?

 普通アイドルって、同性だけでユニットとか組むもんじゃなかったっけ?

 疑問に思ったので素直にそう聞いてみたのだが、

「ああ、そうだよ。何かおかしなところがあったかい?」

 二人揃って不思議そうな顔で逆に返してくる始末。

「あの、オレ、男なんですけど……」

「「え⁈」」

「そりゃ、『純』なんて女みたいな名前ですけど、それでもオレは男です。履歴書にだってちゃんとそう書いてあるはずですよ!」

 慌てて履歴書を確認するプロデューサーさん。

 そりゃあ、履歴書の男女の項目は小さいけれど、写真を見れば男か女かくらい判るだろうに。

「本当だ……。だが、そうなると拙いぞ」

「ええ、もうそういう前提で話が進んでいますからね」

「こうなったら仕方がない。急いで彼の代わりを探すしかないな。もしくは彼女一人でプロジェクトを進めるように変更するか」

 頭を抱え込むプロデューサーさん。

 この先、地獄のような修羅場が待っているのだろう。

 ご愁傷さまである。

 いささかの罪悪感はあるが、しかし、オレには関係ない話だし、どうにか出来る話でもない。

 うん、考えないことにしよう。


          ▼


 翌日の日曜日、オレはプロデューサーさんに呼び出されていた。

 思うに今後のことについての話だろう。

 それは間違いではなかったのだが……、

「いったいどういうことだよ!」

 オレは思わず怒鳴り散らしていた。

 相手が大人だとか、上司的存在だとか、そんなことすら頭から消え失せてしまったためだ。

「いや、本当に申し訳無い。プロジェクトの変更を求めてみたんだが、どうしても君達じゃないと駄目だと、所長直々に言われてね。君の代わりになりそうな子はいないみたいだし、なにより、プロジェクトの変更による損失のことを言われると、どうしても変更するって言いきれなかったんだ。本当にすまない」

 そう言って、頭を下げるプロデューサーさん。

「でも、オレは男だぞ」

 そう、それはどうしようもない現実だ。いったいどうするつもりなのか。

「それについては、君には女性として活動してもらうことになる」

 と、マネージャーが言う。

「ふざけんな!」

 冗談じゃない、オレが怒鳴るのは当然だろう。

 他の奴だって絶対、オレと同じ反応をするはず。

 兄貴がオレだとしたら、絶対に半殺し、今頃血の海地獄のはずだ。

 本当は、こんなよそごとを考えられる状態じゃないくらい怒り心頭なオレだが、こんなことを考えてでも気を散らさないと頭を冷やせそうにないのだ。

「本当にすまない」

 再び、深々と頭を下げるプロデューサーさん。

(ひじり)さん!頭を上げて下さい」

「いいんだ、織部くん」

「しかし」

 これは、プロデューサーの聖さんと、マネージャーの織部さんの台詞で、オレはといえば、怒りのあまり無言で何も言えないでいた。

 そんなオレに構わず、織部さんがオレに対して言い放った台詞はこれだった。

「悪いが業務命令だ。嫌でもやってもらうぞ」

「冗談じゃねぇ! 女のふりなんて出来るか!」

「なんだ、じゃあ女の娘ってもあるんだが、そっちのほうが良かったか? とにかく業務命令だ。契約にも反してないからにはやってもらうぞ。解ったな」

 確かに、女としてとか、女のふりをしてとか、そうゆうことをさせないってことは書いてはなかったけど、普通そんなこと考えないだろ!

 とはいえ、契約に違反しない業務命令と言われては従うしかないだろう。

 ちくしょう!

 大人って汚え!!

注) 当作品はあくまでフィクションです。現実にはこのようなことはありません……多分、ないはずです。

作者によるただの偏見ですらありません。作品上の演出ですのでご理解下さい。

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