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斯くして友情(?)は生まれり

 こいつら、真面目にやる気があるのか?


 確かに振ったのはオレだけど、そこから脱線をしていき、今じゃどこに着地するのか……というか、こいつら着地させる気があるの?


「だから俺は皮被りじゃねえっつってんだろっ!」


 必死に訴えてくる日高だけど、オレはそんな話なんてしてないっての。


「お前ら、他人の話聞いてないだろ?

 だいたいお前の汚ないソレがどうだろうと誰も興味なんてないっての。

 だから真面目に話を聞けってんだ」


「るせえっ! 今はこっちの方が重要問題なんだよっ!」


 相変わらず他人の意見を聞かない日高。

 ならばもうこいつ抜きで話を進めるしかないだろう。


「おい赤城、話が進まないから取り敢えずそこのお子ちゃまを黙らせろ」


 敢えて日高を無視することでこいつらに()き下ろされた辛島達マスタードボムには溜飲を下げてもらうこととして、この場から退場してもらうことにする。

 こいつらがいるとただでさえ進まない話が余計脱線しそうだし。



「さて、それじゃ本題だけど、この前オレ達にしてくれた侮辱の取り消しと、そのことに対する謝罪をしてもらおうか」


「はあ? いったいなんのこと……って…。

 ええっ⁈ お前らまさかあの時の⁈」


 オレの言葉に少し考え込み、そして(ようや)く合点がいったと驚きの声を上げる馬鹿二号輪島。これでサブリーダーだってんだからなんとも呆れた話だ。


「あれだけ他人に絡んで()き下ろしてくれといてこれかよ。マジでムカつくやつらだな」


「ま、河合の場合、彼女の前でだったから余計だよな」


 河合が毒突くのも無理はない。木田の言う理由もあるわけだし。

 今回いつものように否定をしないのは話を円滑に進めるためか、それとも本心である故か。まあどっちにしても面子ってもんがあるしな。


「でも、それを言うならやっぱり男鹿さんが一番だよね。公私に亘って許し難い侮辱を受けたわけだし」


 虎谷が木田の言葉に続き今回一番の問題を告げる。


「ああ、これは本来訴訟レベルの問題だしな」


 瓶子が言うようにこれはそういう問題なのだ。

 これがオレひとりだけの話ならば、こいつら全員をぶん殴ってやればそれで終わる問題なのだが、しかしこいつらはオレ達の立場を貶めたのだ。これは絶対放置できない。


「はあっ⁈

 さすがにそれは大袈裟過ぎるだろ。どこの世界に些細なやり取りでこんな大人げない話があるってんだ。お前らふざけんのはいい加減にしろよっ」


 と、さすがにこっちが本気と気づいたのか、やっとリーダーの赤城の登場。

 全く、さっさと出てこいってんだ。


「ふざけてねえよ。これはそういう話なんだよ。

 だいたいお前ら、美咲ちゃん…いや、花房咲と加藤香織を前にして言った台詞を忘れたのか?

 しかも香織ちゃんに至ってはちゃんと忠告をしていたはずだ。

 それを無視して敢えて喧嘩を売ってきたんだからこういう話になったんだよ。

 さっきのマスタードボムのことにしても言えることだが、プロに喧嘩を売るってのはそういうことだ」


 本当、こいつら解ってなかったんだろうな。普通は理解できてよさそうなものだけど、変にライブハウスのオーナーに認められたことで見事に増長し、自分達の身の程を忘れたったってわけだ。

 本当、こいつら大馬鹿だ。


「ハッ! 花房咲や加藤香織のコネでデビューした新人のくせにっ。そんな似非プロが偉そうに大きな口をたたくんじゃねえよっ!」


 あっ、こいつ、ここまで言っても解ってねえ。以前の赤城と全く同じこと言いやがった。

 本当に日高って馬鹿だ。


 輪島のやつも今の日高の台詞に頻りに首を縦に振ってる。

 サブリーダーならばもう少し物事を考えろよ。本当、馬鹿二号というに相応しい。


 雷電の反応は微妙。

 これはすぐには結論を出せないといったところか。これで参謀役とは情けない。


 そしてリーダーの赤城。

 無駄に顔を顰めてないで、解ってるならばちゃんと仲間を諭し纏めろよ。威張ってるだけが能じゃないだろ。


「なあ赤城、それが結論でいいのか?

 それなら今度はもう一度、それもはっきりと理解できる形で決着を着けてやるけど?

 当然こっちの全力でな」


「あっ、それ好いな。

 この際だからリトルキッスやフェアリーテイル、WISHにBRAIN……は受験生だから無理だけど…、その代わり新たに仲間に加わった香織ちゃんや瑠花(るか)さん、エルダーシスターズにエレメントを呼んだ豪華ステージ。

 香織ちゃんなんて絶対嬉々として駆け付けるだろうな。他の子達だって決して否とは言わないだろうし」


 オレの台詞に河合が続く。

 なるほど全力というのなら、そういうやり方だってアリか。


「ちょっと待てよっ。なんでそういうことになるんだよっ⁈

 だいたい俺達の勝負ってんならコネで応援を呼ぶなんて卑怯だろっ!

 自分達の力だけで勝負しろってんだっ!」


 なるほど日高の言い分にも一理はある。

 だが──。


「お前ら、誰と喧嘩しているつもりなんだ?

 言っとくけど、お前らが喧嘩を売った相手ってのは今言った全員を手掛けているうちのプロのプロデューサーの所長だぞ。

 だったらこういう規模の勝負になるのは当然だろ?」


「ま、外部入学のやつらじゃ知らないのも無理はないだろうな。あのJUNの正体が今ここにいる俺達のリーダーだなんて」


「ですよね。いかにうちの学校の中じゃ有名な話だといえど、積極的に世間に拡めてるわけじゃないですし」


 瓶子、木田、虎谷が日高に、いや、RIDEのメンバー達全員に、現在置かれている状況について説明する。


「というわけだ。オレとしては個人の喧嘩か、バンドレベルの対立ってことで済ませたいところなんだけど、さすがに事務所ひとつを背負う立場となれば信用を守る必要があるわけで、こういう大人げない行為といえど、それも止むを得なくなってくるわけだ。

 そういうわけだ。悪いけど自業自得ってことで、まあ恨まないでくれよ」


 さすがの赤城達も理解したのか、オレ達の要求全てを一も二もなく受け容れた。

 こっちとしてもこんな問題を大袈裟に騒ぐつもりはなかったので全てを話し合いで収めることに。当然訴訟だなんだってことにはならなってない。


 なお和解の条件はオレ達SCHWARZ及びその仲間達の大学生活を送るための協力。主に学業面における支援だ。

 といっても出席日数を誤魔化そうだとかその手のズルに協力をさせるつもりはない。精々がノートの協力だとか、レポートに必要な資料集めの協力だとか、その他必要な情報収集。そういう真っ当な方面での助力を求めるといったところだ。あと、多分オレには不要だけど勉強を教えてもらったりとか。


 なにはともあれ大学生活における問題が楽に片付くようになったのは間違いなく、正に怪我の功名といったところ。

 なにかと便利な舎て…いや、協力的な友人ができたわけである。


 やはり友人が増えるというのは良いものだ。

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