馴れない相手への曲作り
体力不足の問題はエレメントだけではなかったようでエルダーシスターズもまた同様だった。これじゃお姉様というよりも老女だ。いや、さすがにその扱いは可哀そうだしお嬢様というべきか。それならシェルタードシスターズ(箱入り娘)だな。
どこで違いが出たんだろう。香織ちゃんや瑠花さんと同じ元大東プロなのになあ…。
取り敢えずこの子達は暫くは体力作りが必須だな。
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自宅に戻ってきたところで夕食までの間机に向かう。
大東プロからの移籍組とも接したことで彼女達の個性も解ってきたことだし、そろそろ曲作りに執り掛かろうってわけだ。せっかく今移籍で注目されているんだしそれに乗らない手はないからな。
まずは香織ちゃんから。
……って要るのか?
自身で作詞はしてるわけだし、変にオレが関わることで却って可怪しなことになりはしないかが心配だ。
とはいえなにもしないってわけにはいかないだろうし、ならば作詞は香織ちゃんに任せて曲の方はそれに合わせてだな。
じゃあこれは後回しだ。
はは、共同作業ってことで香織ちゃんが喜びそうだ。
それじゃ改めて瑠花さんだ。
瑠花さんのイメージからすると、やはり聞いて元気の出る曲だな。
発表は夏の前頃として……。
よし、できた。
曲タイトルは『カモミールの花言葉』。
タイトルどおり『逆境に耐え生まれる力』という花言葉を参考に作った曲なんだけど…。
…でも、カモミールの開花時期って4月~7月なんだよなぁ…。
まあ、発表までに時間は無いけど、せっかく作ったんだしこのまま仕上げて使うことにするか。
それじゃ今度こそは夏本番の曲だ。
うちの中じゃ一番の年長者なんだし、ここはひとつ大人の魅力で攻めてみるかな。もちろん卑猥な方向でなく。
できた曲は『月下美人』。
年に一度だけ咲く花ってことで『儚い夢』って花言葉があり、それに因んだイメージの曲にするはずだったんだけど…。
なぜこうなった。一夏の危険な夜遊びだなんて。
ああ、そういえば『危険な快楽』なんて花言葉もあったっけ。そんな余計なこと考えたせいで方向性が捩曲がったんだった。最初は純愛路線の曲にするはずだったのに…。
まあいいか。これもある意味大人イメージだもんな…。
とまあちょっと想定外な結果になったけど取り敢えず瑠花さんの曲はこれでよし。
それじゃ次はエルダーシスターズだ。
エルダーシスターズのイメージは…。
……一応は歳上のお姉さんなんだよな。実物はちょっと頼りないってのに…。
「取り敢えず包容力ってことで、ええっとこの花言葉の植物はと…」
というわけで早速検索を掛けてみる。
「ネメシアか。小さく色鮮やかな花が次々と咲いてる姿が可愛らしいな。
へえ~、偽りのない心、過去の思い出って花言葉もあるのか」
と、ここまでなら好かったのだが…。
……それにしてもNemesiaか。
ギリシャ神話のNemesisと関係があるのだろうか。 あれって掟を司る神罰と復讐の女神っていう物騒なやつだろ?
花言葉が過去の思い出? 偽りのない心?
それってなんかいかにも怨み辛みを根に持ってって感じがして怖くないか?
開花も3月~6月で4月12日の誕生花。これも発表には今からじゃタイミングが微妙だ。
「うん、花言葉はナシにして別で考えよう」
と、ここで夕食の時間。
一旦頭を休めるには丁度好い。
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夕食を終え、序でに風呂でさっぱりとしてきたところで作業再開。
ええっと確かエルダーシスターズだったっけ。
花言葉を参考にするのはちょっとアレな感じだったしどうしたものかな。
包容力を別の観点からみるというなら、寛容さと芯の強さってことになるのか。
う~ん、時に優く穏やかで、時に強くか…。
ならばやっぱりここは風か?
それとも慈愛溢れる大地か。
というわけで、できたのは『風の如く、大地の如く』。結局は両方でいくことに。
「ヤバ、ちょっとやり過ぎた。なんかオタクっぽくなっちまった。
まあいっか。もう一層のこと、火と水も加えてしまおう」
ということで、結果この曲はエレメントの曲に。だって火、水、風、地で四つ揃っちまったもんな。
…序でだ、もう一曲作るか。
今の路線でもう一曲。
『Get the Wing -翼をこの手に-』
これもやはりアニメ向けのイメージだけど、まあ、青臭いだけだしな。
さて、順番は変わってしまったけど、今度こそエルダーシスターズの曲だ。
でもどうするかな。同じような曲ばかり作ってもなあ。
と言いつつも作ってしまった。
『約束の丘で』と『飛べ! 紙ヒコーキ』
ああっ、やっぱり痛い。青臭い。
…まあ自分で歌うんじゃなし良しとするか。
※1 作中にあるネメシア(Nemesia)という植物の名前の由来ですが、ギリシャ語の金魚草(nemesion)だそうです。と言っても日本の金魚草とはまた別物らしいですが。因みに和名は『海蘭擬』だそうです。
実は女神ネメシス(Nemesis)が愛した花だということから、それが由来かと疑いもしましたがそこはよく判りませんでした。
なお、作中ではネメシスは神罰と復讐の女神とありますが正しくは義憤と神罰だそうです。nemesisっていうのは因果応報って意味合いなんだとか。
※この後書き等にある蘊蓄は、あくまでも作者の俄な知識と私見によるものであり、必ずしも正しいものであるとは限りません。ご注意ください。




