始動『Jプロダクション』
激辛チップスのニュースを見ました。以前激辛食品のネタをやった身としてはヤバいと冷や汗をかいています。まさか運営さんから苦情がきたりしないですよね…。
記事によると商品には注意喚起の記載がされているようで(しかも露骨に)、これはもう食べる側の自己責任ですよね。
状況からするに人数が集まっての悪乗りだったと推測。こういうのって引くに引かれぬ雰囲気ができるんですよね…。
というわけで、こういう企画を立てたことが間違いなわけで、読者方にはこういうことのなきようお願いします。
星プロと大東プロによる合弁会社『Jプロダクション』。その始動は3月に入ってほんの数日後からだった。おそらくはもっと早くからあれこれと準備が進んでおりオレの高校卒業を待つだけの状態だったものと思われる。
まあオレには会社運営だの何だのといった難しいことなんて解らないし、なのでそういうことはそういうことに長けた役員達に任せとけば良い、変に考えることもないだろう。無責任なようだけどこれは適材適所ということで。
こんなお飾りみたいな所長のオレでもやはりあり、聖さんに連れられて各所への挨拶だの何だのをして回る。なお、聖さんの所属は星プロでプロデューサーとこっちの役員として相談役を兼任している。
それが終わったところで漸くオレのプロデュースするタレント達の番だ。
で、そんな彼らの顔触れはというと…。
まずはよく見知った相手、星プロからの移籍組だ。
リトルキッスの花房美咲と早乙女純。
フェアリーテイルの赤坂レナと青山ミナ。
BRAINの佐竹良昭、伊達浩司、最上健次。
WISHの高部望、倉沢かなえ、高橋珠恵。
要するにオレがプロデュースを担当したアイドル達だ。マネージャーも織部さん、小森さん、晴海さん、真屋さんと彼らもそのまま移籍して続投だ。
他にオレのプロデュースではないけど御堂玲とそしてそのマネージャーも移籍してきている。そのせいでこいつの紹介時には黄色い声に耳を塞ぐことになった。
まあそれも仕方ないか。大東プロからも女性が移籍してきてるわけだし。
まあざっとこんなものか。
鳥羽達サンダーバードは星プロのままだ。
長谷川千鶴もまた同じ。
リトルの姉貴分ってことでこっちへって話もあったらしいけど、やはり主力アイドルを少しは残しておくことになったようだ。残念だったな千鶴さん。
それじゃあ続いて大東プロからの移籍組。
まずは人気ランキング3位の加藤香織。
同じく4位の伊藤瑠花。
エルダーシスターズの姉小路久子、 万代寧子、 長部永遠。
エレメントの火威千明、水鏡令子、風祭凛、土屋景子。
どうやらトリニティはいないようだ。
で、その代わりがエレメントか。聞いたことないけど新人か?
ともあれ彼女達とそのマネージャーがこれから一緒にやっていくことになる仲間達となるわけだ。
「これで純くんと一緒に仕事ができるのねっ! やっと念願が叶ったわっ! 嬉しいっ!」
メンバーの紹介が終わると伴に勢いよく飛び付き抱き着いてくる香織ちゃん。
少しは人前だってことを気にしてくれよ。
「ちょっと、人前でなにをやってるのよっ!」
「本当ですよっ。純先輩もなにを黙って受け容れてるんですかっ。
純さんも咲さんもなにか言ってやってくださいよ」
ほらやっぱり。早速レナが指摘しミナが呆れてるし。
「ほら、ぼやっとしてると奪られちゃうよ純ちゃん」
そうなると美咲ちゃんが早乙女純に負けるなと促すのもお約束。
「やめてよ。いつも言ってるけどそれは誤解なんだから」
で、佐竹が疲れたように反論するのもいつもどおり。
そして端では天堂が温かくそれを見守っているのもまた同じ。
まあ高校時代はこれが日常だったし最早オレ達にはお馴染みの光景だ。
「うわっ、あの噂ってマジだったんだ」
「え? でも三角関係っていうには微妙じゃない? 当事者のはずの早乙女純はなんか冷めてる感じだし…」
「だよな。姉ちゃんもそんなこと言ってたし」
「早乙女純があんな感じなら私にもまだ目があると思ってたけど、加藤香織の噂の相手が純さんだったとなるとこれは取り入るのが厳しいわね…」
「でも純さんだって男なんだし、女の子一人で満足するとは限らないわよ。だから二番目か三番目くらいなら…」
「でも他にもライバルが増えたわけだし、より一噌気を引き締めないとね」
ただ同じ元星プロの人間といえどBRAINとWISHの反応は微妙。
浩司と健次の驚きは薄いし、良昭の反応は予想どおり。
かなえ達も相変わらず変なことを考えている。オレはそういう贔屓なんてしないっての。それに珠恵の言うような二番、三番を作るつもりも無い。ハーレム願望なんて無いってんだ!
望がまともなことを言ってるように聞こえるが実際は珠恵の言う意味合いだろう。三人とも考えることは同じだしな。
元大東プロの人間の反応はというと…。
「良かったわね香織」
と、念願の叶った香織ちゃんを祝福する瑠花さん。まあ香織ちゃんの姉貴分だしな。
「それにしても長谷川千鶴はいないのね。随分と執着していたと聞くけど……ふふっ、好い気味だわ」
……ただ、この人もこういうところがなあ。
ライバルの千鶴さんを意識するのは解るけど…、結局は同類ってことか…。
多少引いたところはあるものの瑠花さんについては一応反応は予想どおり。それなりに知った相手であるわけだしな。
と、ここまでは予想どおりであるものの、他の子達は完全な困惑状態。
そりゃあ面識の無い相手だし、JUNのことをよく知らないのであれば当然だろう。極力その正体については隠してたしな。
増して香織ちゃんがこんな状態だし……って…。
「ちょっと、香織ちゃん、ストップ、ストップ。初めての人もいるんだからっ」
香織ちゃんの行動はエスカレートしていてハグから頬へのキスへと移行している。
これも学校じゃ日常……ってわけじゃなかったけど、それでも偶にしてきてたっけ。
おそらくはライバル視している早乙女純に見せ付けるつもりなんだろうけど…否、素直に感情の暴走か? なんにしてもさすがにこれはやり過ぎだ。ほら知らない人間がみんな引いてるし…。
「話には聞いてたけど、さすがにこれはちょっと引くわね…」
「でも気持ちは解らないでもないわ。なんてったって相手は長年想い続けた王子様だもの」
「まあね。でもやっぱり遠慮はしてほしいかも。相手のいない私には目の毒だわ」
あ、意外と受け容れられていた。
いや、引かれていることに違いはないんだけど、でも否定されているわけじゃないわけだし。
さすがはエルダーシスターズ。お姉様を冠する名前は伊達じゃない。
「「ええ~っ⁈ 嘘っ⁈ 可愛~い!」」
と、こちらはエレメントの四人組。
暫くぽかんとして固まっていたかと思ったら、突如声を揃えてのこの言葉。
いやまあ、そりゃあ予想しないでもなかったけど、今まで初対面で会った女性からこんな反応をされることも結構あったし。WISHの三人もJUNの正体を知るまでは…否、知ってからも余り変わらないか…。
まあともかくこの子達もオレを受け容れてくれているようでなによりだ。こんな形でっていうのは面白くないけど。
それでもフェアリーテイルの時みたいな面倒なことになるよりはまだマシだ。本当、あれは随分と手を焼いたからなぁ…。
手を焼くといえば、エレメントの実力ってのはどの程度なのだろう? 聞いたことのない子達だけにそこのところが心配だ。
まさかデビュー当時のWISHみたいってことは…。
「おいっ、俺達を忘れてんじゃねえよっ!」
ああそうそう、他にも男の四人組とそのマネージャーがいたんだった。
いや、忘れてたってわけじゃなくて、まずは移籍組の紹介という流れだったから。
というわけで、この事務所から新たにデビューするロックバンドが一組。うちからのデビュー第一号だ。
そう、遂にSCHWARZのプロデビューだ。
メンバーは高校時代と変わらない。
メインボーカルの河合聡一。
ギターの木田太郎。
ベースの瓶子史郎。
ドラムの虎谷直人。
そしてキーボード兼サブボーカルを担当するリーダーの男鹿純。
そうオレだ。初代早乙女純や亜姫として活躍してきたオレだけど、遂に本名でのデビューである。
……まあ姿は変装で性別を暈しているんだけど。
あと、SCHWARZのマネージャーの──。
「ええっ? 景山さん⁈」
SCHWARZのマネージャーは数日前に出逢ったばかりの元アイドル訓練生の景山さんだった。




