学園祭ライブとSNS
今回SNSの動画配信について触れてますが作者はそういうことをしないので正直よく知りません。 なので作中ででてくる再生数がどの程度のものかよく解っていません。お陰でかなり迷いました。
この数字、奇怪しいのでしょうか……?
軽音楽部のライブの様子はSNSで配信されていたらしい。
で、その発信元がどこかといえば、なんとうちの軽音楽部。
なるほど、確かにこれも部の活動の一環か。
因みにその収益は部に還元される。
些か納得はいかない気もするけど、でも部の活動に掛かる費用を考えればそれも仕方ない。備品を揃えたり維持したりとそれなりに金は掛かるだろう。
それに収益といったところで、普通はそんなに出るもんじゃないしな。だいたい1再生の単価は0.05~0.7円(同一人は複数回カウントされない)、広告単価も1再生0.1~1.0円。所詮は高校生の部活なんだし再生数も高が知れているってものだ。
というわけで、オレ達SCHWARZについて調べてみる。
「へ? 8万6千? マジで?」
「馬鹿っ! 8万6千じゃなくって86万だっ!」
驚く木田に瓶子がツッコミを入れた。
だが、それも無理もない。
だいたい前の学園祭のライブからまだ一週間も経ってないってのにこの数だ。
SCHWARZの方でも今まで配信していたけど、ここまでの数字は出たことはない。精々が1万と少しがいいところ。それがいきなりこの数字。そりゃあ驚きもするものだ。
「ひゅ~っ! さすがだね~」
突如背後で声がした。
振り向いたところで声が続く。
「因みに辛島くん達マスタードボムは1万4千。やっぱり君達は別格だよ」
顧問の音無だ。…って、いやいやいや…。
「知ってたんですかっ⁈」
オレが訊ねるよりも早く瓶子が問い質した。
「そりゃもちろん。なんてったって配信したのは僕だしね。
いや本当、さすがは名プロデューサーJUNのプロデュースするバンドだけあるね。
ところで例の彼女(?)だけど、あれって男鹿くんだって話だけど本当かい? 正直あそこまで化ける子なんて黒瀬くんくらいのものだと思ってたのに。
いや、本当さすがはプロの敏腕プロデューサー。その手腕には本当に畏れ入るよ」
やはりこの人か。まあ俺達が与り知らぬとなれば他に人間なんていないわけだし納得だ。いや納得といってもそれを認めるって意味合いじゃないけど。
でも、先程言った理由もあるわけだし頭熟しで否定するのもまた変な話か。
まあ良いか、丁度何かって考えてたところだし、手間が省けたってことにしておこう。
「それですけど、もしかしてその正体がオレだって公表してたりします?
まあ学校じゃ知られてるんで今さらですけど、それでもやはり積極的に拡めたくはないんですよね」
「えっ、なんでだい? バンドの認知度を上げようってんのならこういう話題は積極的に利用するべきだと思うんだけど」
確かにそれはそうだろう。音無の言うことは尤もだ。
「まあそれもそうなんですけど、でもそれじゃSCHWARZがJUNのオマケみたいな扱いになるんで拙いんですよ。
成り行きでオレがリーダーってことになりましたけど、それでもSCHWARZはオレのバンドじゃなく、メンバー全員のバンドですからね。だからメンバー全員が対等であるべきで、変にオレひとりが目立つのは良くないんです。
だいたいバンドの顔っていえばボーカルでしょ。縁の下の力持ちであるべきキーボードが目立ってどうするんですか」
一般的にバンドの花形といえばボーカルで、それに続くのはギターやベース。それを支えるドラムやキーボードってのは地味なイメージってのが普通だ。まあオレの偏見なのかも知れないけど。
ただ、今回はちょっとやり過ぎた。バンドのインパクトを求めたからといってもやはりオレの出演は失敗だった。
とはいえバンドの足りないものを補う何かは必要だったわけで、そのためのオレのキーボードとサブボーカルだ。
演奏としては成功だったと思う。
ただ予想以上のオレが注目を浴びたのが問題だ。お陰で目論見が崩れてしまった。
いや、これが学校内で収まるなら特に問題は無かった。それがまさかSNSで外部にまで拡がるだなんて。
「ああなるほどね。
あの時じゃまだ未確認だったから正体については謎ってことで上げたんだけど、どうやらそれは正解だったみたいだね」
確かにそれは幸いだけど、でもネットってそういう情報ってすぐに集まってくるんだよなあ…。
まあいいか、もうそれは考えてみても仕方がない。こうなればもう、後は成り行きに委せる他ないだろう。
でも案外なんとかなるかも知れない。香織ちゃんとの噂って例もあるしな。
現実逃避?
いいじゃないか。悪いことばかり考えて行き詰まるよりも遥かにマシだ。
何事もポジティブシンキング。マイナスよりもプラスの面に焦点を当てれば物事も巧く進むはず。
ということで、今回のことは話題性で注目されていることを素直に喜ぶこととしよう。
※この作中にある蘊蓄は、あくまでも作者の俄な知識と私見によるものであり、必ずしも正しいものであるとは限りません。特に今回は自信がありません。ご注意ください。




