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スカーレットと森越学園学園祭 -軽音楽部ライブ午後の部-

 すみません、再び休みます。ずばりスランプです。

 ということで今後はかなりの間隔を空けた不定期投稿となりそうです。

 できればせめてその間に何か別作品でも投稿できればと思っておりますので、もし見掛けることがあればそちらでもよろしくしていただけば幸いです。

 午後の部が始まった。

 そしてここでも驚かされた。

 なんというかいろんな意味で良くも悪くも多彩なのだ。

 なぜか楽器ひとつ持たない男女四人組のコーラス隊が出てきたり、かと思えば三味線で出て来た子達の曲が民謡や演歌でなくバリバリのロックだったりと、ともかくこちらの意表を突いてき捲るのだ。

 もちろんイメージどおりの正統派ロックバンドもある。トリのマスタードボムなんかがその例だ。

 なお、これらの者達は、必ずしもレベルが高いといえるものばかりではない。単に趣味に(はし)ったか、もしくは他者との違う個性を求めてかは知らないけれど、昇華されていなければただのイロモノに過ぎない。これが良くも悪くもと言っている理由である。


「いや、普通はそういうもんでしょ。なんてったって所詮は高校の部活なんだから。だから玉石混淆なのが当たり前。ジュンくんみたいな子を期待するのが間違いなのっ。

 だいたいあんな子がゴロゴロしてたら、正直やってられないってのよ」


 アタシの不満に美智佳が呆れたように応えた。

 なるほど確かにそのとおりだ。一部の正統派な実力者を見てすっかりと勘違いしてたようだ。


「あっ…、あの~。

 あの、いきなりすみません…。

 今あなた方の言われたジュンって人って、もしかして男鹿先輩のことでしょうか…?」


 突然の背後から声を掛けられた。

 振り向いて見れば、180cmはありそうなのっぽな女の子。

 この子、どこかで見たような気が…。


「あーっ、思い出したーっ!

 この子達って、あの時のジュンくんのカノジョ達だーっ!」


 美緒が驚きに声を上げた。

 

「ああっ、確かにっ! あの時のハーレムメンバーの子だっ! こっちの子にも見覚えがある」


 そんな美緒に美智佳が続く。

 ああ、やっぱり。どおりで見覚えがあると思った。

 …って、いや、それよりも…。


「ちょっと、失礼なこと言わないでよっ! 誰がハーレムメンバーよっ!」


 ああ、やっぱり機嫌を損ねたか…。

 まあ当然よね。本人達は誰もが自分こそが本命と信じてるんだろうから、十把一絡げ (※1)に括られればそりゃあ腹も立つはず。玉石混淆はやめてくれと言いたくもなるか。


 アタシ達に反論してきたその子は、のっぽの子とその背後を示して続ける。


「それはこの子と後ろの子だけっ!

 私はそんなのと違うんだから、人聞きの悪いこと言わないでよっ!」


 ああ、なんだ、そういうことか。てか、自分以外については否定しないんだな。

 見ればその当事者は複雑そうに苦笑いしてるし、背後の子にして……も…? 


「「ええ~っ‼」」


 な、なに⁈ どういうこと⁈

 そこにいたのは…。


「嘘…? 花房咲に加藤香織…。それにフェアリーテイルに御堂(れい)まで…」


 辛うじて美智佳が零した声はやはり驚きの声だった。

 いや、一応は彼女達の母校と聞いてはいるから怪訝しな話ではないけれど…、でもだからって、まさかアタシ達がこうして声を掛けられるなんて…。


「はあ…。あの人、また女の人にちょっかいを出してたのね…」


 彼女達のひとりが溜め息を吐いた。

 確かフェアリーテイルのレナだったと思う。

 いや、そんなことよりも…、揃いも揃ったこの面子から考えられるのは……。


「ま…、まさか…、ジュンくんって…」


 思わず声が零れる。

 見ればそれはアタシだけでなく、他のみんなも同じみたいで…。


「ええ。でも正式に公表してるわけじゃないので、内緒ってことでお願いします」


 御堂(れい)が応じてくる。

 はは…、間違いない。つまり本当にそういうことだったらしい。

 アタシ達、凄い人から曲提供を受けてたんだ…。


「確かあなた達って、スカーレットとかいうバンドの人達ですよね」


 先ほどハーレムメンバーであることを否定してきた子がアタシ達に問い掛けてきた。


「あっ、私達のこと、知っててくれたんだ~」


 美緒が嬉しそうに応じるけど、しかし彼女のその顔はなんというか…。


「そりゃあ嫌でも覚えもしますよ、あんな同じ女性とは思いたくもないような変態バンド」


 ぐはっ!

 容赦無用に辛辣な言葉が鋭利な刃物の如くアタシ達の肺腑を穿ち抉る。


「「誰が変態バンドよっ!」」


 美智佳と美緒が声を揃えて反論する。

 けど、あの時のアタシ達のやってたことを考えればこの汚物でも見るような反応も当然なわけで…。

 これって、絶対さっきのに対する意趣返しよね。つまりこのふたりが余計なことを言ったせい…。


「そ…、そのことは忘れてもらえないかしら。

 正直あの時は私達もどうかしてたんだから」


 彼女達に懇願する明美も眉をピクピクと引き攣らせ笑顔が今にも崩れそうだ。


「ちょっと、奈緒子っ!

 この人達にも事情があるんだから、そういうことに触れちゃダメだって!」


 最初に声を掛けてきたのっぽの子が奈緒子と呼ばれた子を囁くような声で窘める。

 事情を察してくれるのは(たす)かるけれど、これはこれでまた複雑だ。


「へえ~。てことは、この人達って河合くん達と同じバンド関係の人なんだ」


 こんなアタシ達に助け船を出してくれたのは花房咲だった。

 さすがは天下のトップアイドル。空気を読んでのこの行動は正に救いの女神様だ。


「ええ、スカーレットって名前で『WYVERN(ワイバーン)』ってライブハウスを拠点に活動させてもらってるの。

 ちょっと前までスランプで彼女の言ってたような変なこともしちゃったけど、でも今は普通に真っ当なバンドだから安心して」


 せっかくの気遣い、透かさずアタシもそれに乗る。


「へえ~、それで純くんに取り入ったわけね。

 本当、純くんってば人が好いんだから」


 一方でもうひとりのアイドルは…。

 ひぃっ⁈

 なな、なに? この凍てつくような視線っ。

 そういえばこの子、あの時のハーレムメンバーだったっ!


「た、た、た、ただ、相談に乗ってもらってただけで…、べ、別にアタシ達に他意なんて無いから…」


 ま、まさか、こんな若い子にここまでの威圧を受けようとは…。




 その後のライブのことはよく覚えていない。

 ただ、それでも解ったことが二つ。


 ひとつはジュンくんの正体があのJUNであったこと。

 もうひとつは……。


 加藤香織……あの子、ガチであの子にマジだ。



 今日この日、恋する女の怖さを思い知らされた。

※1 ご存知とは思いますが『十把一絡げ』とは味噌糞一緒に一括りにするという意味合いです。

 そう言えば、なんか『十羽一唐揚げ』なんてのを耳にしたことがあるのですが、多分これってネタでボケてるだけですよね?


※この後書き等にある蘊蓄は、あくまでも作者の(にわか)な知識と私見によるものであり、必ずしも正しいものであるとは限りません。ご注意ください。

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