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スカーレットと森越学園学園祭 -軽音楽部ライブ午前の部-

 すみません、一部欠落がありました。始めの部分だったのになぜ気づいてなかったのか、我ながら間抜けな話です。

 ということで今さらながら補完しました。[2024/07/24]

 11時になるとそこそこの人数が集まっていた。高校の学園祭のアマチュアライブということを考えると結構多い方だと思う。

 ただその殆どがこの学校の生徒達なのは、やはりその知名度故だろう。校外に知れ渡る程に有名バンドなんてそうそういるわけじゃないから当然といえば当然よね。

 とはいえ一部例外が存在するわけで、おそらくはそれがこの客足の原因なのだろう。


 いよいよライブの開始。

 一番手は一番槍という男性グループ。

 実力は学生のアマチュアということを考えると結構高い方だろう。


「そこは普通に高いって言いなさいよ。この子達、少なくとも私達の高校時代よりは上よ」


 アタシの呟きに明美がツッコミを入れてきた。

 いや、そんなこと言われなくとも解ってるって。ただそれを素直に認めるのに抵抗があるってだけだ。

 さすがはプロデビューの噂のあるマスタードボムを輩出した学校の軽音楽部だけのことはある。他のバンドもなかなかの実力だ。



 続く二番手はChocolate Sunday。以前対バンで一緒にやっとことのある四人組だ。

 実力の方はまあまあだけどその分代わりにルックスが高い。

 そんな少女達三人の中にベースを弾く少年がひとり。見た感じだと同じベースの子とデキてるのだと思われる。

 何度もアイコンタクトを交わすイチャイチャ振りには微笑ましさよりも妬ましさを感じてしまう。


「くっ…、こっちは女四人だけで何の潤いも無いってのに…」


「なにを高校生相手にムキなってんのよ。

 ……まあ気持ちは解らないでもないけど。私達四人、バンド一筋でオトコのオの字すらも無いものね…」


 今度のぼやきにはツッコミだけでなく、共感の言葉が返ってきた。


「ねえ、今さらだけど、ウチも男の子を入れない? ジュンくんみたいな可愛い子。

 女四人だけじゃ淋し過ぎだよ~」


 同じように思ったのだろう美緒が泣き着くように提案してきた。しかもさらりと無茶を言う。


「馬鹿言うなよ。それについては結成した時に決めたはずだろ、アタシらは女だけでやってくって。

 男で関係がギクシャクするのなんて話はよく聞くけど、アタシはそんなの真っ平だ」


「あはっ、確かにね~。

 それに相手が本当にジュンくんだったとしたらミッチーの色惚けが一層加速しそうだもんね~」


「やめてよっ、あれはあくまでも冗談半分の話なんだからっ。

 …でも、ハーレムメンバーのひとりに加わるくらいなら…」


 ちょっと、マジ?

 冗談半分じゃなかったの?…って、半分は本気って意味じゃないだろ?

 だいたい話が無謀過ぎ……否、ハーレムに加わるだけならばなんとかならないわけじゃない…? ならばアタシにもチャンスがある?


「ちょっと、美智佳っ、なにまた馬鹿を言ってんのよっ。

 …って、久美子も真に受けて考え込まないでよっ、リーダーでしょっ!」


 あ…、確かに。なにを血迷ってるんだアタシは。すっかり美智佳に毒されてしまった。



 三番手のレッドコメットは、一言でいうならいかにも趣味が高じてという感じのバンドだった。但しその方向性は音楽というよりも別のもの。当然実力は残念なものだった。


「あ~、こういうのを見るとなんていうか、いかにも普通のアマチュア高校生って感じでホッとするよね」


 美智佳ではないけど同感だ。最初の一番槍みたいなのばかりかと少し自信喪失しかけていただけに正直安心してしまう。


「まあでもまだ三組目なんだから他の子達がどうだかは解らないわよ。

 とは言っても私も少し安心したのは確かだし、私も他人のことは言えないわよね」


 明美もか。やっぱりみんなも思うことってアタシと同じだったんだ。



「あっ、次が出てきたよっ」


 美緒の言葉と重なるように会場が(どよ)めきに包まれた。

 午前のトリ、マーキュリークイーンの登場だ。


「嘘っ、あの子、もしかしてデスペラードのアキ⁈」


 美緒が驚愕の声を上げた。いつもの間延びした話し方でないところからその驚き振りがよく解る。

 まさかこんな子が出て来ようとは。

 なるほど、周りが(ざわ)めくわけだ。


「いや、似てるけど全くの別人みたい。

 へえ、あの子って今年のミスコン2位の子なんだ」


 周囲に耳を澄ませ窺っていた美智佳の話だが、それはそれで凄いのが出てきたと感心する。さすがは午前のトリだけある。


「てか、なによこの子⁈ 歌も抜群に巧いじゃないっ⁈

 演奏の方もレベルが高いし、この学校ってどうなってんのよっ⁈」


 同感だ。おそらくだけどアイドルが通っていることの影響でレベルが引き上げられたのだろう。やはり身近に具体的な目標があるとやる気も違って来るってことなのかな。自分達もそれでもに続けと、そしてあわよくば追い越せと、多分そういうことなのだろう。


「でも、さすがにそう良いところばかりってわけじゃないみたいだな。なんか体力的にキツそうだし。

 やっぱり誰しも課題は抱えているもんなんだな」


 1曲目が終わりMCに入ったけど、やはり肩で息をしてるように見える。

 ただ、それさえネタにしてウケを狙う演出は強かだ。

 でも、自身の可愛さで誤魔化す小聡明(あざと)さは同じ女性としては鼻について好きになれない。

 しかし、自身の武器を熟知して使い(こな)すこの強かさは、やはり見習うべきところなんだろう。


 2曲目が始まった。1曲目は明るさ重視の賑やかな曲だったが、今度は転じて激しい曲だ。当然さっき以上に体力的につらいだろうに、それでも生き生きとしたそのパフォーマンスは活力に満ち溢れていて、観ている者を魅了する。


「やっぱりこの学校ってレベル高いわ…」


 さっきはあのように言ってはみたけど、やはりレベルの高いことに違いない。

 はは…、アタシらもうかうかとしてられないわ…。


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