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純、今年もミスコンに驚かされる

 模擬店巡りもほどほどにオレ達は香織ちゃんの出演するアイドルステージへと向かうことに……と思ったのだが、まずはその前に両手の食い物をどうにかしないと。

 というわけで美咲ちゃんを窺えば…。


「さすがにそれは無理があるだろ。いくらなんでもその分量を一度にってのは無茶だって。絶対に腹を壊すぞ」


 いや、それ以前に食いきれるとは思えないけど、まさか本気で全部食べようって気じゃないだろうな?


「ええ~っ、だって~」


 恨めしそうに己の手許を眺める美咲ちゃん。そこにはイカ焼きとたい焼きにチョコバナナが。

 いや、既にたこ焼きと焼きそばとフランクフルトを食べているんだからそれ以上は本気で無謀だって。


 レナとミナもやはり同様だ。

 レナはたこ焼きと焼きそばとイカ焼きを食べており、手にはフランクフルトとりんご飴、あと大宮にたい焼きと今川焼を持たせている。

 ミナはたこ焼きとりんご飴と綿菓子を食べており、現在焼きそばと格闘中。やはり小宮にチョコバナナを持たせている。


「お前らも……って、まだ食うのかよ」


 見ればレナがフランクフルトに挑んでおり、ミナも小宮からチョコバナナを受け取っている。

 ああ、そういえばこいつらってなんだかんだで結構食うんだったよな。去年、一昨年の時のことを忘れてた。


「とにかく三人とも、無理して腹を壊さない程度にしておけよ」



 結局のところレナとミナは各々が買った物を完食。美咲ちゃんはたい焼きを残す結果となった。

 最近の女の子って結構食べるもんなんだな…。 (※1)


          ▼


 恒例のアイドルステージの会場である講堂は既に大勢の客で埋まっていた。

 本番まではまだ時間があるってのにな。

 ではなにをやっているのかといえば、これも恒例となっているミスコンである。

 司会は香織ちゃんと御堂(れい)こと天堂だ。なおこのふたりは去年、一昨年の優勝者である。おそらくは今年もエントリーされているのだろうから今年も同じ結果が予想される。


「ええっ⁈ てことは今年も咲さんはエントリーされていないんですかっ⁈」


 で、こう言えばこうミナが返してくるのはお約束。


「うん、なんていうかこういうのってやっぱり場違い感があるんだよね。

 そりゃあ確かに私だってこの学校の生徒だけど、でもやっぱりこういう仕事をしている以上どうしてもね」


 それに対する美咲ちゃんの返答はこのとおりだ。

 いわゆる大人げってやつだな。

 とはいえ主催がアイドル同好会だけにそこは仕方がない話だろう。司会役のはずの香織ちゃんと天堂がエントリーされているのもそのせいだ。

 今年だと美咲ちゃんだけでなくレナ達も加わってくることだし、もし三人が出場していれば面白いことになっていたかも知れない。

 まあ、それだと美咲ちゃんの言うように一般生徒の出る幕が無くなることに変わりはない。てか余計に酷くなるだけだな。


 結果発表を前に改めて壇上に並ぶ男女達。当然ながらみんな美男美女ばかりだ。


「へえ~、オレが知らないだけで結構美男美女っているもんなんだな。

 ほら、あいつなんて結構レベルが高そう……って、あぁ⁈

 おい、あれって伊織だよな? あいつってそんなに人気があったのか?」


 まさかの伊織のエントリー。

 いや、マジか…。


「まさかってこともないんじゃないかな。だってあの香織ちゃんの弟くんだよ。

 それも野球部でも二年連続で活躍中のレギュラーだし、結構女の子達にモテてるみたいだよ」


 なるほどこれだけを聞けば納得のいく話ではある。でもなあ…。


 いや、そこはやはりまさかだろう。

 香織ちゃんの弟ってのはともかくとして、野球部で活躍? オレの退部以降のことは解らないけどこいつってそこまでだったのか?

 元々がそんなにレベルの高い部でなかったからレギュラーになれたことについては不思議ではない。

 でも活躍ってことになるとやはりどうにもピンとこないんだよなあ。だいたい今年も去年も予選で負けてるみたいだし。

 うん、おそらくは人気スポーツ補正 (※3)…じゃなくて補整 (※3)が掛っているのだろう。


「そうは言うけど、でもその実態はただのシスコンだろ。このことを知ったら、おそらくその子達も幻滅するはずだぞ」


 去年の始業式の日に絡まれたことは覚えている。あれは間違いなくシスコンと言っていいだろう。

 あの日以来あいつとは少しばかり折り合いが悪い。まあ実際になにがあったってわけではないけど、それでも敵視されていることに違いはないだろう。


「それはちょっと言い過ぎだよ。だってお姉さんがあの香織ちゃんなんだよ、無理のない話なんじゃないかな」


 どうも説明がイマイチではあるが言いたいことは解らないでない。おそらくは親しい姉に他人が接することが気にいらないと嫉妬しているということなのだろう。


「そういうのを世間じゃシスコンっていうんだよ」


 いや本当、こいつはいき過ぎだと思う。どれだけ姉が好きなんだっていうレベルの依存振りだ。

 同じシスコンでも、佐竹弟の良昭みたいにある程度の距離感を持っていてくれるならまだ接し易いんだけどな…。


「へえ~。なんかもったいない話ですよね。

 見た目や聞いた実績じゃ結構良い線をいっているのに」

「本当、天は二物を与えずとはよくいったものよね」


 やはりシスコンってのは女の子受けが悪いようだ。ミナのやつはさらりと否定しているし、レナも同様に貶している。


「ちょっと、なにもそこまで言わなくたっていいじゃない。姉弟仲が好い (※2)ってことは良い (※2)ことに違いないんだから」


 確かに美咲ちゃんの言うとおりだ。

 ただ、この言い方からするとやはり美咲ちゃんも少しは思っているんだな。まあ、面子があるだろうから敢えて指摘はしないけど。


「あっ、いよいよ結果が発表されるみたいですよっ」


 レナの言葉に壇上を見れば香織ちゃんと天堂のふたりが結果発表を始めていた。

 てか、レナのやつこれ幸いと話を逸らしやがったな。


 結果はというと、まず優勝は当然のように男性部門は御堂(れい)こと天堂、女性部門は香織ちゃんでそれぞれ三冠達成だ。

 この結果は誰もの予想どおりなせいだろう、いきなり最初からの発表である。

 一応参加者ということで発表前には彼らの列に交ざるわけだけれどその存在は異物めく程に浮いていて、(あま)り滑稽さに今年もやはり(わら)ってしまった。


 続いて準優勝が発表される。

 男性は今年もサンダーバードの羽鳥翔こと鳥羽だ。女性の方は……。


「あれっ⁈ もしかしてあの子ってアキちゃん⁈」


 美咲ちゃんが驚きの声を上げた。

 だが違う。あれは絶対に亜姫ではない。

 ただ美咲ちゃんの言うようにどことなく見た目は似ている。いったい何者なのだろう。

 いや、一応こういうところに出てきているわけだから名前やなんかはある程度公開されているけど…。


 ただ似ているだけの人間だろうけど、それでもやはり気にはなる。

 今回の学園祭はいろいろと問題ばかりだ。 

※1 おそらくですが普通の女性の食事量はせいぜいミナ程度のはずです。美咲は少し食べ過ぎで、レナは少しばかり異常です。

 一応作者の設定では三人とも成長期であり日頃の運動量が多いため、それに伴い食事量も一般より少し多めということになっております。

 ただ今回の場合は現状のストレスにより過食症ぎみになっているという状態でもあります。


※2 随分と前にもやりましたが『よい』の使い分けについて考えてみました。

 ここで使われている『好い』『良い』以外にも『善い』がよく使われているのでそれついて調べてみました。

【好い】好ましい。主観的な興味・満足・喜びなどを表す場合に使用。

【良い】『優れている』『うまくいっている』『適している』といった意味合いで使われる。通常は客観的視点。

【善い】道義的に立派であることを表す場合に使用。

【よい】上記の三例以外は通常ひらがなを使用。

[Google 参考]

 というわけで『好い』は自分視点、『善い』は社会的視点、『良い』は第三者視点といった感じで使い分けがされているようです。


※3『補正』と『補整』、 似てはいますが少し意味合いが違う言葉です。

『補正』とは失なわれた部分を補って正すこと。対して『補整』とは足りない部分を補って整えること。

 つまり『正す』と『整える』の違いなわけで、作中のように本来の状態から理想的状態に整える場合は補整です。


※この後書き等にある蘊蓄は、あくまでも作者の(にわか)な知識と私見によるものであり、必ずしも正しいものであるとは限りません。ご注意ください。

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